No.30 コロナとの戦い16 コロナと養生(甘いもの)

 梅雨になりました。東京アラートで都庁ビルが赤くなっていたのが緑となり、全国の感染者数も二けたで収まっています。夜の街での感染が多いとのことでさかんに注意するよう報道されていますが、酒場で三密は避けられず、ソーシャルデスタンスをとることも難しいようですので、つまり行くなということでしょうか。暑くなってきてマスクを外す人も多くなりました。スポーツジムで運動するのにマスクをしていては大変です。まして屋外で走るのにマスクでは熱射病になってしまいます。人がいないところではマスクをする必要もないのでしょうが、都市というのはどこに行っても人が多い。学校が始まって子供はみかけなくなりましたが、通勤電車では学生も増えて以前に戻っています。そうなると電車内はまさに三密状態です。暑いので冷房を効かせたいのですが、エアコンは空気が循環しているだけなのでつまり密閉状態、申し訳程度にすこしだけ窓が開いていることもありますが、これから雨となるとそれも出来なくなりそうで夏に向けて不安が増してきます。

 コロナとの戦いでの勝敗のカギを握ると言われているワクチンや特効薬の開発も時間がかかりそうです。そんな中で経済が深刻な状況となりつつあります。合併症がない若い人はそれほど重篤化しないのでこの際高齢者と合併症のある人だけ外出を自粛する方法が現実的かもしれません。当然感染者と接触する機会が増えることになりますし、マスクを外す人も多くなっているので、各個人の防護がさらに重要となります。ウイルスを避けるマスク、手洗い、三密よけは耳にタコができるほど聞かされていますが、ウイルスが侵入したからといって必ず発病するわけではありません。生き物には免疫という外から侵入したものを排除するしくみがあり、そのおかげで健康でいられます。免疫には二種類あり、ひとつは一度感染を受けた後で次は負けないぞ!とできる免疫、つまり獲得免疫です。今注目されているワクチンはこの獲得免疫を使って身体を守るものです。もうひとつが初めてであっても敵と戦って身体を守る自然免疫です。個人的見解ですがコロナに感染しても発症しない人が多いのは自然免疫が有効に働いているためだと思っています。獲得免疫は一度かかるかワクチンを打つかしかありませんが、自然免疫は生命活動の基本と関連しているので体調を整えることで高めることができます。

 その方法が養生です。養生は昔からの個人の健康を維持増進させるための技術です。今こそ養生の出番ですが今回はまず食べ物から。現代の養生ではまず余分なものを減らすことをおすすめします。現代人は昔に比べて食べ過ぎです。私の父母の時代は少なく食べてたくさん働いていました。ともに健康に80過ぎまで生きています。今は昔より食べ物の量も種類も豊富です。しかし余分なものまで身体に取り入れるので様々な問題が起きています。
 肥満、血糖値の上昇から糖尿病などの生活習慣病と呼ばれるものは主に現代の食べ過ぎが問題です。これらはコロナの重症化にも関係しています。コロナが始まる前から外来に来られた患者さんにはよく「甘いものを控えるように」と助言していますが、よほど健康に注意している人以外甘いものを取り過ぎています。果物、乳製品も取り過ぎている人が多い。その助言だけで薬も飲まずに病気が治った人をたくさん見ていますが、病気と言うより甘いものを取り過ぎたための不具合だったのでしょう。昔の人は米をたくさん食べていましたがお菓子や果物はほとんど食べられませんでした。正月などたまに食べるから美味しいのです。健康のためにはそれで十分です。昔は甘いものを控えようなど言う必要はなかったのですが、今は甘いものがあふれているのでまず甘いものを控えるのが現代養生の第一歩です。まず甘いものをやめてみる、そして身体が心がどう変わるか観察してみる、その養生が健康のための第一歩であり、コロナとの戦いのカギだと思います。

 漢方の仲間内ではこのコロナウイルスの病気は「湿」により悪化すると考えています。梅雨の時期湿気が多くなりコロナが重症化しやすいのではないかと心配しています。甘いものの取り過ぎもこの「湿」を悪化させます。完全な予防、治療法がまだない以上、自らの生活を改善する養生によってこの危機を乗り越えましょう。



2020年06月17日