漢方編その1 過ぎてはいけない

 先だって「先生、仕事が忙しくて疲れるので補中益気湯を下さい。」という患者さんが来られました。診察しましたが、補中益気湯を使うような兆候はありません。補中益気湯は、中国の名医であった李東垣(リトウエン)が作ったとされる漢方薬で、元気をつける薬ですが、全身に倦怠感が強い病人に使うもので、仕事をやりすぎる人が飲む、スタミナドリンクではありません。「あなたには必要ありませんね。」と断りましたが、「一度試したいんです。お願いします。」と懇願されて、他医で長期に処方されてもいけないので「では数日飲んでみてください。具合悪くなったらやめなさいね。」と処方しました。同じような人が何人か来ましたが、また下さいという人は1人もいませんでした。実は私も試したことがありますが、健康な時は効果はありませんでした。

 漢方薬には足りないものを補う薬と、余計なものを除く薬があります。
補中益気湯は「気」の不足を補う薬ですから、不足していない人が飲むと気が強くなり過ぎて体調を壊します。過ぎたるは及ばざるとは違う問題を起こすわけです。今の世の中サプリメントが大流行りです。しかし何でも補えば良いわけではなく、特に昔から患者の治療に使われた漢方薬は効くだけに飲み過ぎてはいけません。よく効く薬は、強い効果があるからです。病気の時だけ使うのが正しい。ちなみに江戸時代にも同様の問題があったからでしょうか、津田玄仙という漢方医が補中益気湯を使っても良い症状として①手足の倦怠感②言語軽微③眼精無力④口中生白沫⑤失食味⑥好熱物⑦臍の上の動悸⑧脈散大無力を上げています。このうち2、3の兆候があれば使ってよいと伝えれています。補中益気湯はコロナ感染後遺症の倦怠感にも有効な薬です。もちろん症状が合えばですが。
 最後に老婆心ながらスタミナドリンクの飲み過ぎにも気をつけましょう。食べ過ぎ、飲み過ぎ、働き過ぎ、遊び過ぎ、他何でも過ぎたものは健康によくありません。

 ウクライナでロシア軍が一部退却してその後に虐殺された死体があったとのことです。国際的な法医学の調査が行われれば事実は現れるでしょうが、多くの証言もあり犯罪行為があったことは事実のようです。武器を持った軍人が何も持たない市民を殺すことは犯罪です。ロシアが危ないのは「我々は違法なことはしていない。」と正当化していることです。法律は国が決めることでいつも正しいわけではありません。イラク戦争に従軍した米軍の士官が「法的に正しいことと倫理的に正しいことで迷ったら倫理的に正しいことを選べ。」と言っていたことを思い出します。軍人は人を殺す職業であってはいけません。人を死に至らせる武器を与えられるのですから高い倫理観が求められます。虐殺した遺体を放置したのはウクライナへの見せしめかもしれませんが、完全に逆効果でロシアの敗北が決定的になったと思います。今回のことを教訓に戦争は最後にして欲しいものです。

 コロナ感染者がまた増え始めました。まことにしぶとい。中国はゼロコロナで頑張っていますが、人口2000万の都市をロックダウンし続けるのは無理があります。賢い中国人のことですから上手い解決策を見つけるでしょうが、ウイズコロナになったとして中国製のワクチンの効果が十分か注目しています。


2022年04月05日