老年医学編「転んで怪我した話」

 梅雨なのに毎日暑い日が続き身体もバテ気味でした。体力が落ちてはいけないので、週1回のジム通いに出かけました。やや身体が重いなと感じつつ、梅雨だから湿気を吸っているのだろうなど考えて、いつも通り途中にお参りする神社に近くに来た時です。少し下り坂だったのですが、砂利に足を取られたのかズルッと滑って車道側に転んでしまいました。すぐに起き上がって周りを見回すと幸い車は来ていません。他に人も歩いていませんでした。 おばあちゃんが昔「転んだけど、自分の心配よりまず誰か見ていないか、周りを見回したよ。」と笑いながら言っていたのを思い出します。車を運転される方は歩行者の横は徐行した方がいいですね。突然転ぶかもしれませんので。
 安全を確認して自分の心配をするとまずフラッとします。打ってはいませんが急に頭が回転したので、軽い脳震盪を起こしたのでしょう。高齢者やお酒呑みの人は回転しただけで血管が切れることがありますので注意が必要です。様子を見て吐き気や意識がおかしかったりしたら脳外科に行った方が良いでしょう。
 次に咄嗟に手をついたので手を見ると手のひらから出血しています。皮膚が破れて細かい砂利もついていました。水道水で洗わなければなりませんが、そんなに急ぐことはありません。どんどん出るようなら圧迫止血が必要ですが。実際問題として服に血がつくと取れにくいのでとりあえずハンカチで覆いました。他に膝にも痛みがありますが歩けるので大丈夫でしょう。
 結論としてジムは諦めて帰って怪我を治療することにしました。診断名 右手挫創 左膝打撲症。

 神社のお参りをどうするか考えましたが、軽い怪我で済んで転んだ時に車に轢かれなかったのは神様のご加護があったに違いありません。御礼も兼ねていつも通りお参りしました。次はできるだけ早く砂利のついた傷を水で洗わなければなりません。江戸時代であれば「たまり水は使うべからず、流れる水は用いてよし」で近くの川ででも洗うでしょうが、現代ではあちこちに公衆トイレがあります。水道の水は清潔です。痛みを我慢して流れる水で傷を洗って砂利を落としました。長く放置すると細菌感染の危険がありますが、すぐ洗ったので大丈夫でしょう。破傷風はどうかな、自衛隊で破傷風の注射して10年以上経っているから追加の免疫が必要かもなどと考えながらトボトボと家に帰りました。

 読んだ人から「くどい!」と言われましたが、外来では転んで怪我をして受診される方がたくさんおられます。もう少し高齢になると手を着くのが間に合わずに顔を負傷される方が多いようです。しかし、この日まで自分がつんのめって転ぶとは考えもしませんでした。私の経験談がまだ転んだことがない方のお役に立てばと思い紹介します。

 みなさん、なぜ後藤先生は転んだのでしょう。答えは次回に。





2023年07月04日