漢方医学編 「漢方はそれなりに効く」

 先だって患者さんから「先生の書いていること間違っていますよ。」と指摘されました。それは失礼しましたと詳細を伺うと「漢方薬効くのかな、どうかなと思って飲んだらよく効きました。効くと信じて飲むから効くわけではありませんよ。」とのこと。確かに説明不足でした。漢方薬は先人の知恵で効くようにできています。ピタリと症状が合えば必ず効くのですが、ピタリと合わない人もいます。野球でバットの芯にあたればクリーンヒットになるでしょうが、なかなか芯に当てるのは難しい。しかし、ヒットになると信じてバットを振ると打球に勢いがついて守備のグローブを弾いて出塁できることもあります。一方当たるかどうか半信半疑でバットを振ってもヒットになる確率は低い。そんな感じです。一番いいのはどんぴしゃりの漢方薬を出すことですが、正直なところ、そうなるのは患者さんの半分くらいでしょうか。勉強が足りないと言われればその通りですが、高名な先生も色々試してこの薬で良くなったということを書かれています。大谷選手とは比べようもありませんが少しでも打率を上げるように努力を続けていきたいと思います。

 漢方は西洋医学で感染症を抗生物質で治すようにはいきません。だがしかし、漢方には西洋医学では治せない病気を治す力があるのは間違いありません。最初に出す薬で効かないから「やはり漢方は効かない」とすぐ諦めるのではなく、二の矢、三の矢を射ていけば治る病気なら治る可能性はあります。

 忙しい現代、高い保険料も納めているし、時間をかけて病院に来て長いこと待っているのだからすぐ治してくれという患者さんもいました。今できる医療の最善を尽くす努力をしていますので長い目でお願いしたいと思います。仕事やしがらみに身体が悲鳴をあげていることが病気の原因になっている可能性もあり、養生をしていただければと願う次第です。

 昔はすごい医師がいたようで、「すみやかに治るものを望むと、三年で再発して不治となる。じっくり治療すれば15−6年は寿命が延びる。いずれかを選ぶように。」と告げると患者は「だらだら長引くのは耐えられません。速やかな治療を望みます。」と言って治療をうけ、全癒したが三年後には予言した通りになった、と本に書いてありました。病気になった時、どのように治すかを決めるのは患者さん本人です。そのための正しい助言ができるよう研鑽を重ねたいと思います。

 ウクライナに続いてパレスチナでも戦争が始まりました。世界中で戦争が起こりやすくなっていると感じるのは私だけでしょうか。対立は世界中にあり、日本周辺にもあります。それらが全て戦争で解決しなければならないとすれば、第三次世界大戦はそれこそ世界中を巻き込んだ戦いとなるでしょう。戦争は愚かなことです。避ける道は寛容と共存しかありませんが、それはお互いが求めなければ実現できません。自分の言い分だけ考えて相手のことを思わないのでは平和な世界は訪れませんが、今の人間では無理な話でしょうか。




2023年10月10日