No.58 お薬いりますか?

 気温差が大きい日が続いています。体調を整えるのが大変でしょうが、衣服を調整し、適度に運動して、何より日常生活で養生を心がけてこの時期を過ごしましょう。

 先日後輩の心臓外科専門医と話していました。「後藤さん、血圧は大丈夫ですか?」「寒いと血圧上がって薬飲むこともあるけど基本飲まなくても大丈夫だよ。」「薬飲んでおいた方がいいですよ。血圧と脳梗塞の頻度は比例しますから。」「そうかもしれないけど、薬飲まなくていいなら飲まない方がいいんじゃない。」「脳梗塞になったら大変ですよ。しもの世話もやってもらわなくちゃいけない。脳梗塞だけは絶対なりたくないから薬は飲んだ方がいいですね。」見解の相違でしょうが、どう生きるかもどう死ぬかも本人の選択です。他に病気がないか、家族はどうだったか危険度を評価して、薬が必要なら飲みますが、そうでないなら普段の生活でやるべきことをやって、わずかのリスクは覚悟して生きていくことにしています。

 以前は患者さんが求めれば薬は出すものだと思っていましたが、最近はそうではないと思うようになりました。薬が絶対必要であればお勧めしますが、そうでなければ他の方法を試してはと提案しています。痛みがあるからと痛み止めをもらって、もっと強い薬でないと効かないとどんどん違う薬を飲んで最終的には病院で出る薬では効かないからと非合法な薬に手を出した人を知っています。薬だけに依存してしまうのは危険です。薬以外で病気を治す養生や鍼治療などもっと広がると良いと思っているのですが。

 例えば足が攣るのに芍薬甘草湯は効果ありますが、長く服用すると血圧が上がるなどの副作用が出てきます。汗をかく時期になりましたので水分を補給することも必要ですが、自分で足をマッサージすることもお勧めします。朝起きていきなり足首を回そうとすると攣りそうになるので、足や下腿の筋肉をマッサージして足の指の間に手の指を入れて足の関節を動かしてやると足首がスムーズに動いて攣らなくなります。小学校の頃に教わった準備運動を毎日の生活に取り入れることで薬が必要なくなると考えます。他ならぬ自分の身体のことです。手間を惜しまず、大事にしてあげましょう。


2024年05月13日