No.14 針治療と養生のすすめ

 令和元年もあっという間に過ぎ去って新年を迎えました。無常の風が吹いているとだいぶ前に言っていたおじいちゃんも昨年亡くなりましたが、「後藤君、60代はあっという間にすぎるよ。」という言葉は本当であると思います。光陰矢の如しで悔いのない仕事をせねばなりません。

 さて昨年令和改元とともに始めた針治療ですが、やって効果があった人には感謝されています。これは当たり前ですね。残念ながら麻酔とは全く効き方が違うので、やった時は良かったがその後すぐ痛みが再発した人もいます。薬を使わない分切れるのも早いのでしょう。

 そこで今回は針治療が有効な典型的症例を紹介します。心当たりがあれば一度ご相談ください。個人情報保護の観点から脚色してありますが、4か月前に右肩をひねってから肩の痛みがとれないという50代の女性の患者さんが来られました。「そのうち治るかと思ったのですが、痛みがとれないんですよ。」とのこと。肩は上がるしレントゲンでも異常はありません。何か病気を疑うならMRIとかCTとか検査を追加するところですが、診察上はその必要はなさそうです。そこで以前傷めたときの痛みの記憶が残っているのであろうと痛みのある部位に置き鍼をしました。そのうえで忘れずに「甘いものは好きですか?昔は砂糖が痛みに効く薬だったのです。逆に普段から甘いものを取り過ぎていると痛みがなかなか治りません。痛みがとれるまで甘いものを控えてみましょう。あとおなかが冷えるので緑茶、果物、乳製品も控えましょう。それから足湯で温めると痛みは楽になりますよ。冷えると痛みは強くなりますから。」といった養生を指導しました。その後患者さんは来院されなかったのですが、しばらくして今度は腰が痛いと来院されました。診察して「ところで以前肩が痛かったじゃないですか。あれは治りましたか?」と聞くと「ああ、あの後すぐ治りました。」とのこと。このように病気や外傷はほぼ治っているのに痛みだけ残っている患者さんには針治療はとても効果があります。

 針もいいんですが大事なのは養生です。漢方に限らず慢性の痛みに悩んでいる患者さんには養生、特に甘いものをとらないようにと運動をするようにお話しています。昔の漢方の名医も言っていますが養生しなければ薬は効きません。忙しくストレスの多い現代社会でいかに養生を実践できるか、健康な生活に変えることができるかがこれからの課題です。病気だけ治してくれという患者さんの気持ちはわかりますが、病気の原因となった生活習慣を改めないと治せないのです。タバコが原因で病気になった人を治療してもタバコを吸い続けるとまた病気になるのと同じ事です。特に今の時代は甘いものがあふれてますので要注意です。そのほか偏食、夜更かし、運動不足、忙しくてシャワーだけなど不健康の原因ばかりです。薬なしで養生だけで病気の治った患者さんもたくさんいるんです。養生しなくなると再発しますがこれは本人の選択です。健康に勝るものはないと思うんですが。近年医療費がかさんで国の財政が危機的だという話もありますが、みんなが養生すれば自分のためにも家族のためにも国のためにもよいと思います。

2020年01月07日