No.15 痛みはゆるみから

 令和2年になってオリンピックと思ったら、中国発のコロナウイルス騒ぎです。いずれ人類を滅ぼす病原体が現れるかもしれませんが、今回ではないでしょう。やれマスクがない、トイレットペーパーがないと大騒ぎですが、学会を含めてイベントが中止となり、身体を鍛えるジムもお休みと時間ができましたので、久しぶりに書いています。

 今回は先だって経験した患者さんから学んだ話です。患者さんは3年前に別な病院で腰の手術を受けたけれど腰の痛みがまだ取れないとのこと。「ずっとコルセットをつけていないと痛いんですよ」と言われるので「コルセットはあまり長くつけていると筋力が弱って痛みが取れませんよ」と言いました。教科書にも脊柱の筋の萎縮を防止するためにコルセットの装着は漫然としてはいけない、つまり外さなければならないと書いてあります。外すと痛いというのを説得して外してもらうと、それまで伸びていた背中がだらんと緩みました。ちょうど蟹の殻を割って身を出したときみたいにふにゃりとしたのです。「さっきまで痛くなかったけど今は痛いんじゃありませんか?」「そうです。今痛いです。またつけていいですか?」コルセットがあれば痛みは無くなるでしょうが、これではいつまでたっても痛みはなくなりません。「コルセットをつける代わりに背中を支える筋肉を鍛えて自分の筋肉をコルセットの代用にしましょう。そうすれば必ず痛みはとれますよ。」と腰痛体操を指導しました。ふにゃふにゃでは重い上半身は支えられない。それが痛みの原因ということは痛みはゆるみからくるということです。

 それから考えてみると、朝起きるときに腰が痛いという高齢者はたくさんいます。しばらくすると痛みはなくなる。なぜかといえば寝ている間に腰の周りの筋肉が緩んでいるからといことになります。起きてしばらくすると腰の周りの筋肉が引き締まって上半身を支えるので痛みが無くなる。ですから起き上がる前に腰の周りの筋肉のゆるみを引き締めれば痛みなく起き上がることができます。以前紹介したおばあちゃんが言っていた「下腹に力を入れて起きれば痛くないんです。」というやり方は正しい。上向きで寝ていてまず足首を軽く回してから膝を曲げた状態でおしりを少し上げる運動をするのもよいでしょう。是非試してみてください。

 膝の痛い人もたくさんいますが、高齢者で共通しているのは太ももの筋肉が細くなっていることです。膝は骨と骨の間に関節があってそこで曲がるのですが、特に階段を上り下りするとき等に,その関節を骨の間をつなぐ筋肉が引き締めて安定させないと痛くなります。関節にまっすぐに重力がかかると痛くないのですが、骨と骨の間が操り人形のようにバラバラだと関節がゆがんで余計な負担がかかって痛くなるのです。これもゆるみが痛みの原因となるの一つの例ですね。ぶつけて腫れて痛いのは別ですが、動くと痛いという人の多くはゆるみが原因の可能性があります。筋肉を鍛えてゆるみを引き締めればその痛みは無くなります。これは本当です。


2020年04月14日