漢方編その4 脚を鍛えよう 

 先回夏の養生について書いたところ、待ってましたというばかりに暑い夏が来ました。今年は特別暑くなりそうです。しかも電力が不足気味で冷房を抑えてとのこと。古人の知恵も活かしながら厳しい夏を乗りきりましょう。暑いからと冷たいものを飲みすぎるとお腹を冷やして体調を崩します。氷枕で手足を冷やすのは良いですが、お腹は冷やさないようにしましょう。夏には清暑益気湯という暑気あたりの漢方薬がありますが、これは胃腸を改善して体力を回復するものです。やはり夏を乗り切るにはおなかが大事です。

 6月末の猛暑の時、外はまるでドライヤーの中にいるようでした。体温より熱いので外出は危険です。しかし、家に閉じこもると脚が弱くなります。特に高齢の方は筋肉が少なくなると熱射病になりやすくなるので注意が必要です。以前から歩く速度が遅くなると死亡率も上がり、転倒もしやすくなるので脚を鍛えることが大切と言われてきました。外来でもどう鍛えたら良いですかと聞かれることがあります。たまたま今回の日本整形外科学会で慶應大学の橋本健史先生による高齢者はどう脚を鍛えたら良いか講演がありましたので私の意見を含めて紹介します。

 橋本先生によればまず関節軟骨を強くするには歩くのが一番とのことです。腰や膝が痛いから歩けないという人もいます。ならば病院に通院して痛みを軽くして歩きましょう。痛みの出ない範囲で歩くのは治療になると思います。高齢になると歩く速度が遅くなりますが、歩く速さは転倒や死亡と関係するのでその点を注意深く拝聴しました。早く歩くためには脚の筋力だけでなく心肺機能も高めなければなりません。そのために必要な運動は1日9分の早歩きが良いとのことです。1週間で1時間になります。無理してはいけませんが、できる人は一つの目標にして継続してはいかがでしょうか。

 歩くのが遅くなる原因は主に足を強く蹴れない、つまりふくらはぎの筋力が弱ることが第一とのことです。ですから脚を鍛えるにはまずつま先立ちをやりましょう。つま先で立ってかかとを上げるだけです。簡単ですね。同時に脚で立つ時の安定性を高めるために足の指を鍛えましょう。足の指を鍛えるには床にタオルを置いてその上から足の指で掴んで引っ張り寄せる運動が有効です。現代人は靴を履くので足の指が動かない人が多いと思います。まず足の指をよくマッサージしてあげて動くようにすることから始めるのが良いと思います。

 次に重要なのが股関節です。歩幅が小さいと早く歩けません。股関節を前後に開くのが大事ですが高齢になると股関節が曲がってきて伸びなくなります。股関節がまっすぐ伸びるようにストレッチが必要ですが先生が勧めているのは左右の脚を前後に開いてまっすぐ腰を落とす「ランジ」という運動です。しかしこれは難しいと思いますのでリハビリで一度教えてもらうのが良いと思います。自分でやるには机か椅子につかまって脚を前後に広げ、腰を少し落として後ろ脚の股関節の前側を伸ばすのが良いと思います。最初は少し伸びるだけで良いでしょう。背中を真っすぐにして上下できればさらに効果が上がりますが、そのような気持ちでやるだけで十分です。専門の先生に教えてもらうのが良いでしょう。何回やればいいのかよく聞かれますが、人によって違います。ご自分で最近脚が弱ってきたな、歩くのが遅くなったなと思ったら以前のように歩けるまで頑張ってやりましょう。一回にまとめてたくさんの回数をやるのはケガのもとですので、2、3回でも良いので時間のある時に繰り返してやりましょう。山のようなご飯も少しずつ分けて食べれば食べられるのと同じです。欲を出してはいけません。いつの間にかやっているという習慣にするのがコツです。

 コロナで家に閉じこもって脚が弱った人も多いと思います。コロナの次は猛暑と試練は続きますが、暑い夏を脚を鍛えて乗り越えて涼しくなる秋を待ちましょう。

 コロナ患者数は増えていますが、重症化防止のための内服薬もできていますので、もうそろそろ日常の生活に戻して良いのではと思います。特に猛暑の中でマスクで歩くのは危険です。人がいなければ外しましょう。

 ウクライナは西側からの支援が十分でなく苦戦しています。そもそもソ連崩壊時に国防力を落としたのが原因ですが、平和のすぐそばには戦乱があるというのが誠に残念ながら歴史の教訓です。第二次大戦で使われた武器で戦っていたとのことですが、強力な最新兵器を相手に時代遅れの武器で戦わなければならなず死んでいくウクライナ軍の兵士はさぞ無念であろうと思います。外交で戦争を防げばよいと言う人もいますが、今回ロシアは「領土的野心は無い」と言いながら占領した地域のロシア化を進めています。信義も正義も無い、彼らなりにあるかもしれませんが、市民に向けミサイルを打ち込む事実からは解りあえるものではありません。外交は大事かもしれませんが、外交だけでは戦争を防げない、これは事実でしょう。だます方が悪いのではなく、だまされる方が悪いというのが国際社会の現実です。


2022年07月07日