No.6 足がつる

 外来で80歳を超えられた、高齢の紳士から「先生のホームページの話は面白い」というお褒めの言葉をいただきました。これからもご期待に応えたいと思います。

 No1で紹介した私と松田院長先生の恩師である、徳島大学名誉教授の安井先生が上京され主に防衛医大の同窓生相手に講演されました。犬の脚を伸ばす実験で、若かった松田先生に創外固定機をつけた犬を散歩させてもらったなど懐かしいお話をされました。創外固定でなく骨の中に埋め込むやりかたもあるとのことですが、まだ外につける機械にとって変わるまではないようでした。当時イギリスの研究所から実験の結果が防衛医大のように安定して出せないという話があったとのことですが、No1で紹介した安井先生の厳しい指導を後輩医師たちにも紹介しました。当時は大変でしたが今思えば幸せな時代でした。


 さて、今回は外来でも多く聞かれる「足がつる」という問題についてです。情報が氾濫する時代、ネットで調べればその原因、対処法などいろいろ書いてあります。まず、原因の第一に疲労、サッカーのワールドカップ予選日本は苦戦していますが、後半になってくると敵味方とも足がつったようで大変です。スポーツクラブで言われるのは水分やミネラルが不足すると足がつるので十分に補給するように言われます。

高脂血症や筋疾患など、内科の病気でも足がつることがあります。

整形外科では腰部脊柱管狭窄症や循環障害などでつりやすくなります。

 齢を重ねると足が簡単につるというのは私自身最近実感するところです。以前は平気で胡坐(あぐら)で座っていましたが最近はすぐ足がつるようになって困ったものです。筋肉も齢とともに硬くなるのであきらめるしかありません。つりそうになったら周りの人にわからないようにマッサージするくらいでしょうか。

 足がつった時に治す特効薬として芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)という 有名な漢方薬があります。以前自衛隊に勤めている時、同世代の友人から運動すると足がつって困るという話を聞きました。それには芍薬甘草湯がいいよと言ったところ、しばらくしてあの薬はいいねぇどんなにつっても三袋も飲めばすぐ治るよと感謝されました。その時にそれ以上は一度に飲まないように続けて飲みすぎないようにと注意しました。芍薬甘草湯はよい漢方薬ですが副作用を起こしやすい薬でもあります。足がつらなくてよいと毎日3回ずーっと飲んでいる人もいますが、長期に飲むと血圧が上昇してくるという論文もあります。低カリウム血症などいくつかの病気の人は飲んではいけません。どんな薬もそうでしょうが毒とならないように上手に使って行けばよいのです。

 結論として足がつるのはどうするか、夜つるのであれば寝る前、運動などではその前に芍薬甘草湯を一包飲んで予防するのはよいでしょう。つったらその時に芍薬甘草湯をすぐ飲むのも有効です。最近足がつって齢はとりたくないものだと嘆かれる患者さんもいますが、その齢まで長生きできたご褒美だと思って上手につきあって行くしかありません。親からもらったこの身体取り替えることもできないので。
2019年09月14日