老年医学編「老人と冷え」

 寒さが厳しくなりました。毎年のことですが、今年も冷えに備えましょう。

 高齢になると夏の暑さに鈍感になり冷房を使わないので熱中症に注意が必要です。同様に歳をとると寒さにも鈍感になるようです。「最近腰が痛くて体がだるくて力が入りません。ぎっくり腰みたいです。」そんな訴えの患者さんが来られました。はっきりした原因がないのでぎっくり腰とは少し違うようです。季節がら「冷えを感じませんか?」と聞くと「言われてみれば冷えているかな。でも冷えていているから腰が痛いことはないですよね。」腰の痛みが出る原因は様々ですが、冷えていると痛みが悪化します。通常ぎっくり腰ならロキソニンなどの消炎鎮痛剤を使いますが、熱を下げる効果があるので冷えが原因だと効かないし悪化することもあります。他に明らかな原因もないようなのでとりあえず冷えを治療すると「痛みが軽くなりました。だるさも良くなったようです。」とのこと。結果から見るとやはり冷えが腰痛の主な原因でした。冷えは風邪だけでなく様々な症状を起こすことが高齢者では多いようです。感覚が弱くなって冷えているのがわからないことが関係しているもしれません。「え!寒くないの?」という時は注意が必要ですね。冷えの症状はお薬でなく温泉にある足湯を自宅のお風呂で行うことで軽くすることができますのでお勧めします。少し熱めの湯に15分くらいで膝下を入れます。寒さの厳しくなるこの時期、お試しください。

 寒いこの時期だからこそ心は暖かくありたいものです。私は交通機関としてバスを使うことがあるのですが、最近心が寒くなることがありました。暗闇迫る夕方の出発時間ギリギリに脚の悪い高齢の女性がやっとの思いでバスに乗ってきました。その女性が停留所で降りようとしたら若い男性が外から「このバスは駅に行きますか?」と大きな声で、聞いてきました。「行きますよ。」と運転手さんが答えると乗り込んできてまた大きな声で「何分くらいかかりますか?」と聞いてきました。「20分くらいですね。遠回りしますから。」というとムッとして無言で降りてきました。最近の若いものは礼儀を知らないな、ものを聞いたらお礼くらいするものだと思っていると、降りかけていた脚の悪い女性が「乗り換えのバス停はどっちになりますか?」と運転手さんに聞きました。「バス遅れているんだから、降りてそこの店で聞いてください。」一瞬耳を疑いましたが、そのまま脚の悪い女性を置いて出発してしまいました。これから女性はヨロヨロと離れたお店に聞きに行くのでしょうか。遅れることで他のお客さんに文句を言われるかもしれませんが、「あっちです。」の一言でいいのに。弱者への気配りはあって欲しいものです。



2023年11月27日