漢方編その2 仁とは

 漢方診察時、患者さんの下腹の中央に力が抜けている状態を小腹不仁といいます。腎の力が落ちている、つまり腎が虚している所見として八味地黄丸などを処方します。今回は医は仁術などの表現でも使われる「仁(じん)」の話です。私が漢方の勉強で習ったのは「仁は痛みがわかること」でしたが一般には仁は人の気持ちがわかることとされています。

 西にウクライナの戦争、東にコロナの疫病と大変な時代です。ウクライナではまさに仁義なき戦いが繰り広げられています。激しい攻撃を受けていたマリウポリの製鉄所要塞がウクライナの戦闘任務完了ということで多くの兵士が投降しました。昔のように敵を引きつけるために最後の一兵まで戦えという悲惨な事態にならなくて良かった。ブチャなどの戦争犯罪で野蛮国の烙印を押されたロシアですが、マリウポリでは投降兵士を丁重に扱って文明国であることを証明して欲しいものです。

 ウクライナの市民の中にはまだ戦えるのになぜ投降するのだという人もいたようですが、ゼレンスキー大統領は「英雄たちが生きることはウクライナにとってなにより大事だ」と降伏を認めました。雨あられのように白リン弾の降り落ちる製鉄所で頑張れば時間稼ぎにはなるでしょうが、全滅は時間の問題です。国のために命を投げ打つのが兵士ですが、その死には本人や家族の痛みがあります。戦争の勝利も大事ですが、何をやっても勝てば良いということにはなりませんし、そもそも勝てません。それを考えるとまことに仁にかなった判断だと思います。一方のプーチン大統領はロシア軍の兵士が欧米の最新兵器の餌食となってバタバタと倒れていくのに軍事作戦をやめる気配はなく、まして相手の国の市民が何人死のうが悲しもうがお構いなしで不仁の人だなあと思います。人の痛みを考えているようでは指導者にはなれない国なのかもしれません。そんな人が選挙で大統領に選ばれて今いるわけです。思えばヒトラーも民主的な選挙の手続きで選ばれた人です。他山の石とせねばなりません。

 先回中国のゼロコロナは無理だと書きましたが、まだ頑張っています。中国シンパといわれたWHOの事務局長も忠告していましたが改める気配がありません。不思議に思っていましたが中国ではコロナが蔓延すると死者が百万を超えると予測されているとのことでした。人口十億の国ですから毎年一千万以上死んでいるのでしょう。しかし、疫病は国の責任が大きいのでゼロコロナはやめられないのかもしれません。それでも数千万の人々を自宅に閉じ込め続けるのは無理がありますし、果たしてそのやり方でゼロまで下がるのかという疑問もあります。そんなことを考えていたら、北朝鮮でコロナ患者が急増しているとのこと。瞬く間もなく発熱患者が100万を超えました。医療が遅れているようですので、死者がどれほど出るか心配です。核実験やミサイル発射は止めてその金で医療を充実した方がよほど人民のために良いと思うのですが・・・。

2022年05月19日