No.55 コロナとの戦い40  悲しい戦争

 ウクライナでの戦闘が始まって3日が経過しました。最初独立した国から支援を求められて平和維持のために軍隊を出すのだから東部だけかと思ったら、一気に首都に侵攻して国ごと取ろうとしていることには呆れました。ロシア語には安全保障という言葉は危険がないと表現すると聞いたことがあります。危険つまり敵を完全に無くさなければ安全ではないとのことであればウクライナ軍の完全な武装解除が目的となるでしょうが、それでは非戦闘員である住民を巻き込む戦争の敷居が低すぎます。NATO諸国がウクライナ支援のために武器供与するとのことですが、それだけでNATOとロシアの全面戦争になりかねません。

 当初圧倒的戦力差から首都キエフの陥落は時間の問題と言われていましたが、ウクライナ軍は容易に崩れませんでした。その理由は欧米から供与された対戦車ミサイルが戦果をあげているためと言われています。私が自衛隊に入隊した頃は、地上戦闘の勝敗を決めるのは戦車であると考えられていました。当時のロシアはソ連として西側諸国の対峙しており、ベトナム戦争でアメリカが敗北したこともあり、いずれ日本にも侵攻してくるのではと恐れられていました。圧倒的に強力なソ連の戦車師団を貧弱な日本の自衛隊でどう守るか、演習場で戦車との戦い方の教育があったのですが、まず横から近づいて戦車の車輪に材木を挟んで動けないようにして、止まったところで砲塔から手榴弾を投げ込むというもので、思わず「本当ですか?」と目を丸くしたものです。今の若い人が聞けば大笑いするかもしれませんが、当時は真面目にそのような訓練をして、もし戦車が来れば命がけで戦ったでしょう。今も私は笑えません。そんな戦い方が変わったのは1973年の第4次中東戦争です。それまでイスラエルの戦車に負け続けであったエジプト軍がソ連から提供された対戦車ミサイルで次々にイスラエルの戦車を破壊して大損害を与えました。その後、堅い装甲に守られていても戦車は安全とは言えなくなり、走る棺桶と悪口をいう人もいました。対戦車ミサイルでどれくらいロシア軍に被害が出ているかわかりませんが、ウクライナ軍の発表のように3000人以上死んでいれば勝つのは容易ではないでしょう。損害が大きくなれば戦いをやめるのが正しいのですが、ロシア軍には勝つように命令が出ているはずです。対戦車ミサイルが狙えないように徹底的に街を破壊して前進するか、戦術核兵器を使用するかもしれません。どっちにしても多くの市民が巻き添えとなります。悲しいことですが、見守ることしかできません。

 日本ではコロナ患者が頭打ちになってきていますが、より感染性の高い変異ウイルスの報告もあります。ワクチンを3回打っても感染しますし、症状も出るようです。内服薬も増えていますが、この戦いを終わらせる最終兵器とまではなっていません。持久戦です。ウイルスは変異を続けるが人類も新たな治療法をあみだす。もしウイルスが致死性の高い変異を起こせば人類は一気に劣勢となりますが、それでも戦い方はあります。最後まで諦めてはいけません。

 コロナと人類の戦いが続いているのに戦争が始まったのは悪いニュースです。ただでさえ苦しい経済にも悪影響があるでしょう。政治も不安定になるかもしれません。それらを全て受け止めてしっかりと前に進んでいきましょう。


2022年03月03日