No.8 マイブーム 8.8メッツ

 今回は私のマイブームについて紹介します。マイブームというのはその人の流行ということです。親戚のおじいちゃんが十年くらい前に突然「無常の風が頭の上を吹いている」と言い出しました。事あるごとに何度も繰り返すのでご高齢でもあるしいよいよかなと思ったら家族の人が「あれはおじいちゃんのマイブームですよ」とのこと。流行は一時のことでそのうち言わなくなり無常の風はどこ吹く風で今も元気です。

 8.8メッツのメッツというのはMETs(Metabolic equivalents)身体活動の強さを表す単位のことです。安静にしていると1メッツ、早歩きが4メッツ、ランニングが10メッツなどで、健康づくりのための運動の指針として使われます。

 話は数カ月前になります。松田院長先生は空手部でしたが私は学生時代バスケット部で6年間体育館を走り回っていました。そのバスケット部のOB会があり、後輩でスポーツ医学専門のK先生に「最近電車に遅れそうになって駅の階段を走って上がると息が切れるんだ。齢はとりたくないよ。」と言ったところ、「後藤先生、それは心筋梗塞の兆候ですよ。」と言われてびっくり。「心筋梗塞、おれが!?」「普段運動していない人が突然運動すると心筋梗塞の危険が100倍になります。階段を上がるのは8.8メッツなので、その程度で息が切れるのは危険です。週1回運動しているひとは◇倍、2回なら△倍の危険率で・・・」丁寧に教えてくれましたが、要点は普段運動していなくて急に運動するのはとても危険、運動することはある程度危険だが運動しないよりはよいということのようです。映画などでひったくりにかばんを取られた老人が「ま、待て」と追いかけようとして胸を抑えて倒れるシーンがありましたが、まさしくあれです。心筋梗塞にならない程度に運動するバランスが難しいけど、普段の生活の中で運動の機会をみつけて心筋梗塞を予防しようと決心しました。階段を上がるのが8.8メッツと結構な強度なので、階段があれば階段を使おうとマイブーム8.8メッツが始まりました。ちなみに階段を駆け上がるのは本当は15メッツで相当きつい運動です。急いで電車に飛び乗るのは実は命がけです。

 患者さんに聞くと運動は散歩またはウォーキングしていると話される人が多いですが、これは3メッツ程度です。太ももの筋肉を鍛えるという意味では物足りませんが、心臓にとっては安全です。まったく運動しないのはいけません。
2019年09月14日