老年医学編「足元が大事」

 しばらく書かないでいたら最近複数の人から「見てますよ。後藤先生の部屋、ぼちぼち書いてください。」と言われました。人は見ていないと悪いことをするとは思いませんが、見ていないとサボるということはあるのだろうと思います。そのように声をかけてもらえるのが、やりがいかなとも思います。

 それにしても暑い日が続いています。地球温暖化を過ぎて地球沸騰と言われるようになりました。長期予報でも10月くらいまで暑いとのことで、外で運動も難しい。長い歴史で見れば地球全体が氷でおおわれた時もあれば南極北極の氷が溶けてしまったこともあったようで、それでも命をつないで今に至っているわけですから、生物はなんとか生き延びることはできるでしょう。人類はどうか、絶滅するとは考えたくないものですが、少なくとも以前と同じという訳にはいかないでしょう。外来でお話を聞くと外が暑くて歩けないという方がたくさんおられます。それなら家の中で筋力を維持する運動を継続したいですね。四股も良いでしょう。ラジオ体操も良いでしょう。ヨガのランジも良いでしょう。片脚で立つだけでも効果はあります。座ってテレビを見ているだけでは確実に脚の筋力は弱くなって転びやすくなります。

 先回「転んで怪我をした話」で転んだ理由について。いろいろご意見をいただきました。まずよそ見していたのではと言われましたが、今回はそうではない。四股踏むのをサボっていて筋力が落ちたからというのもジムに行く途中だったことから少し違います。今回は土俵際踏ん張る余裕もなく転んでしまいました。答えは実に意外なものでした。その日ようやく自宅に帰り着いて妻に転んだ話をすると、すぐに玄関に行って靴を持ち上げ、「底がツルツルですよ!」と言われました。3年以上前に買ったお気に入りのスニーカーで見た目は新品と変わりませんでしたが底はツルツルになっていました。そう言われれば心当たりがありました。少し前に花見の名所の山に登ろうとして坂道で滑ってなかなか登れず途中で断念し、「こりゃ登山用の靴でないとダメだわ」と思ったのですが、そんな私の横を小学生がスイスイ山を登っていました。老いたりとはいえ元自衛隊員で山登りで小学生に抜かれるのは何かがおかしいと考えなければいけませんでした。その時に靴底の問題に気がついていれば今回転ぶことはなかったでしょう。そのほか街を歩いていた高齢者の方が平地で突然ズルッと滑って前に倒れました。よろけたわけではなくズルッと滑ったのでなぜ?と不思議に思ったのですが、今考えると靴底がツルツルだったのだと思います。職業がら脚の筋力を鍛えましょうという話はよくしますが、今回解ったように足元の靴も大事です。車を運転するのにブレーキが効かない状態で走るのは危険なのと同じ理屈です。転ばぬ先の靴の底、一度確認してはいかがでしょうか。すってんころりんと転ばないために。

 足元といえば、今年は関東大震災から丁度百年になります。私が若い頃は79年毎に関東に大地震が起きると言われていました。百年というきりの良いタイミングで地震が起こるということもないでしょうが、起きないとも言えません。いつかは必ず来るでしょう。その時に困らないようにできる備えはしておきたいものです。





2023年08月28日