No.27 コロナとの戦い13 緊急事態宣言解除

 本日5月25日いよいよ緊急事態宣言が解除されることとなりました。先週国会で発言された経済の専門家から「我々は外出自粛の努力によりコロナとの戦いに勝利した」との発言があり、新聞では日露戦争に勝利した後の連合艦隊解散の辞の紹介もありすっかり戦勝ムードですが、世界での感染患者は増加しており戦いはまだ終わったわけではありません。

 日経新聞で連合艦隊解散の辞が「武人の責務に戦時、平時の差はない。平時には鍛錬に努め、戦う前にすでに勝利の領域に到達している者は勝利を授かるが、平時に慢心して鍛錬を怠る者はたちまち敗者となる」と紹介されました。本文ではそのあとに勝って兜の緒をしめよと続きます。そこで私も所属した自衛隊中央病院の事例が賞賛されています。生物化学兵器による負傷者の治療訓練を毎年のようにやっている自衛隊病院と普段は日常診療をやっている民間病院を比較はできません。しかし、収まりつつあるとはいえしばらくは場所を選ばずどの医療機関でもコロナとの戦いが継続されます。今後解除後の緩みから第二波に、外国との交流再開から第三波に襲われる可能性は高いと考えられます。

 自衛隊の経験からいえば、平時に大事なものが三つあります。

 まず重要なのは装備です。マスクや防護衣など武器がなければ医療従事者が感染する危険は大きく、逃げ出したいと思うのは当然です。米軍と交流する機会も多かったのですが、感心させられるのはその物量の豊富さで、兵站と言われる後方の補給基地はまるで大工場で倉庫に資材が山積みされていました。戦争をしていない時から準備されているのです!今回防護衣が足りなくて何度も再利用したとの話がありましたが、そのような状況で戦わなければならないのでは、先の大東亜戦争の失敗の繰り返しです。世界第3位の経済大国なのであれば安心できる十分な装備を最前線の医療現場に送って戦いを支援できるでしょう。ケチったら負けます。

 次に重要なのは訓練です。武器を与えられても正しく使えなければ倒されます。混乱する現場でも間違えることがないように自信を持てるまで訓練しなければ実戦では勝てません。この訓練は医療従事者すべてに必要です。クルーズ船で完全装備の医療従事者の後ろにマスクをした事務官がスーツで歩いていましたが、戦場ではきわめて異常な光景です。戦場では報道関係者も戦闘服を着ています。危険があるのであれば全ての人が抜かりなく備えなければなりません。

 そして重要なのが士気です。平時ならそこまで追いつめられることはないでしょうが、戦時では不安と過度な仕事量と過酷な環境の中で戦わねばなりません。折れそうになる気持ちを維持するのは仲間の励ましであり、周りからの激励です。経験者は忘れることはないでしょうが、往々にして世間は熱しやすく冷めやすいもので、すぐに他のものに関心を奪われます。長期戦とわかっているからうんざりしてしまうのでしょうが、コロナとの戦いでは傍観者ではいられません。社会全体で次の戦いに向けて各個人防護の鍛錬と医療機関の鍛錬に努めなければなりません。安心したいのであればやるべきことはやらねばならぬのです。



2020年05月25日