第5話:なにが飛び出す?軍艦島【1】

大海原を「漂流」するりんご箱…その上に立ってガンバは「何か」を待っている様子だ。
「出るぞ…出るぞ…出るぞ…」
やがて、目的のものが現われた。
「出たーっ!」
思わず大声を上げたガンバ。彼は海から昇る朝日を、海の夜明けを見たくて明けやらぬうちから待ち構えていたのだ。
はしゃぐガンバは、仲間を起こしてそれを見せようとするが、ヨイショたちには「見慣れた光景」だ。
「止してくれよ、朝っぱらから…」
「我輩達は、海の夜明けなど見飽きているの…」
と、相手にされない。
それならばとボーボに声をかけるが、「うるせえ」と一蹴されてしまい…さすがのガンバも、ちょっと拍子抜けした感じで
朝焼け空を見ていたが、やがて再び眠ってしまった。

やがて、気が付くと周りに仲間達が…
「何だ、みんなも朝日が見たかったのか」
ガンバの呑気な言葉を、イカサマが一言の下に斬り捨てる。
「何を寝ぼけてんだい、もう昼だぜ。それよりあれをご覧よ、あれを」
ガンバは、イカサマが指差す方を振り向いた…
「ありゃあ!?」
思わず、ガンバが大声を上げたのも無理はない。目の前に、巨大な鉄の塊が海のど真ん中に存在していたのだ。
「でっかい、鉄の島だあ…」
唖然として、それを見上げるガンバ…
「うーむ、これは軍艦とか言う昔の船ですな…」
ガクシャが、それを見上げながら言った。
「グンカン?」
「さよう、つまりその…軍艦ですな」
ガクシャは「軍艦」は知っていても、それが何であるかまでは、知らないようだ。

ガンバ達は、リンゴ箱を担いで上陸した。
「へへへ、こういうところを探検するのが海の男の醍醐味ってものよ。なあ、みんな…」
独り気取っていたヨイショが振り返ると…
「あれれ、みんなは?」
「フフ、みんな始めていますよ『冒険』を」
忠太が指差す方向を見ると、仲間は既に軍艦の中に向かっている。
「あーっ、汚ねえ!俺を置いていく気かーっ!」
慌てて、仲間を追い始めたヨイショはふと立ち止まり
「おおい、忠太にボーボ。リンゴ箱の番は頼むぜーっ
彼らは、海から上がりりんご箱を下ろすと中の探検に出かけた。ボーボと忠太は見張り役だ。
ボーボは、忠太にりんご箱の上を任せるから、おいらは中を見張ると言い出すが…
「ダメ!その手には乗らないよ、食いしん坊!ボーボも僕も、この上!」
忠太に見透かされ、ボーボはガッカリ。一方、ガンバ達は軍艦の内部へ。それをただ見ているだけのボーボは、思わず大あくび…
ところが!突然、甲高い鳴き声と共にそこに棲むウミネコの大群が、ボーボ達のいるりんご箱目掛けて襲いかかってきた!
突然の事態に、しばし呆然としていたガンバ達だが…
「みんな、探検は中止だ。ボーボ達を助けろ…と、別に俺が言わなくても分かってるね…」
ヨイショの号令を待たずして、リンゴ箱へと突進していた。
「さあ来い!ガンバ様が相手だ!」
威勢良くりんご箱に飛び乗ったガンバだが…
「ち…気取るない!俺だっているぜ」
と、イカサマに割り込まれ…
「俺もいるぜ!」
「私も」
「我輩も」
次々に、仲間が集まってきた。彼らは、ウミネコの大群に立ち向おうとするが…
「……!」
その鋭い嘴と、強力な爪、その上スピードと数で襲いかかられては敵わない。ガンバ達は慌ててリンゴ箱の中に避難した。
しかし、次々と襲ってくるウミネコの前に、リンゴ箱は崩壊寸前…
「くそっ、これでもくらえっ!」
ガンバが苦し紛れに投げたリンゴが当たって、ウミネコにダメージを与えた。
「や、やったっ!」
「お、いいぞ。これだ!リンゴを投げろっ!」
彼らは、一斉にリンゴを投げる。ボーボは独りもったいないと、乗り気でないが…やがて、この攻撃にウミネコがひるんだ隙に
彼らは軍艦の中に逃げ込んだ。
「いやあ、助かったぜ」
「これもガンバが、リンゴを投げてくれたおかげよ。なかなか見所あるぜ、ガンバ」
その場を何とかしのいだ彼らは、ホッと一息つくが、ガクシャは意味ありげに咳払い。
「いいかね、今は助かったが…見たまえ、我々は完全に食料と船とを失ったんだよ。つまり…つまりだ。これからどうする?」
確かにそうだ…沈みかかった空気を、ガンバが振り払うように言った。
「心配ないよ。これだけでかい軍艦だ、俺たちの食料と船くらい何とかなるさ…」
その言葉に、ヨイショが呼応するがガクシャは独り、考え事をはじめたように歩き出した。
「ガクシャ…どうしたの?」
不思議そうに背中を見送ったガンバの言葉に、ヨイショが答える。
「知らねぇ…でも、あいつが訳もなく歩き出したのは、何か考え事をしている証拠よ。ともかく、先立つものは食いモンだ
みんなで手分けして探そうぜ!」

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