「…島だ…」
間違いない、後ろは大海原。自分は助かったのだ。
「うわーい!助かった!助かったぞーっ!」
波打ち際をはしゃぎまわるガンバは、寄せてきた波を被って気づいた。
「そうだ、ボーボは…みんなは?」
仲間の姿が見えないことに気づいてガンバは、慌てて海岸線を駆け出す。
「おーい、ボーボ!みんなーっ!」
すると、波打ち際の流木の上に…
「あれは…ボーボだ!」
早速駆け寄って、ボーボを揺り起こすがボーボは何やら寝言を言っている。
「あーっもう!何、寝ぼけてんだよボーボ。起きろったら!お、き、ろ!」
ガンバは、ボーボの身体の上でジャンプして少々手荒い目覚ましだ。やっと気づいたボーボは
「ガンバ…おいら、お腹すいたよ…」
「ああ、島に着いたんだ。何だって食えるぜ!」
この言葉に、ボーボは飛び起きてその拍子にガンバを振り落としてしまう。
「おーい、ガンバー!」
その時、遠くから呼ぶ声が…
「あ!あの声は、ヨイショ達だ!」
駆け寄ってくる仲間たちと無事に再開、その喜びから彼らは、腹の底から大笑い。
「みんな無事で良かったねー」
ボーボの言葉に、すかさずイカサマが
「ボーボが無事なら、みんな無事ってことさ」
「ちげぇねぇ!ガーッハハハ」
これには、仲間たちもさらに爆笑。からかわれたボーボも、怒るに怒れず照れ笑い。
「あー、笑ったらますますお腹がすいてきちゃったよー」
「みんな、食料捜しに出かけよう!」
「ようし、この島の探検と行くか!」
「シッポをたてて、出っ発!」
彼らは、海岸線から森へと向かっていった。森は大きく、中は薄暗い。しばらく様子を見ていた彼らだが、森の奥から食べ物の
匂いがすると言うボーボの言葉に、森に入ることに。
「でも…何も出ないでしょうね?」
不安そうな忠太の言葉にヨイショが答える。
「ここはノロイ島じゃねえんだ、心配するなって」
一方、ガクシャは冷静に周囲を見渡して
「どうやら、人間が住んでいる形跡もないようですな」
「人間がいなけりゃ、猫だっていねえんだろうぜ」
イカサマが、少々楽観的な意見を言う。
「なあに、猫がいたってこの俺が投げ飛ばしてくれらぁ」
ともかく、彼らは森に入った。シジンだけは、一抹の不安を覚えていたが…
「あれ…?」
ボーボが突然立ち止まり、鼻を動かし始めた。
「どうしたんだ?ボーボ」
「うんにゃ、何かおかしな匂いがしたんだけど…」
しかし、周囲には何も見えないし何もない。
「気のせいだよ」
だが、再び森を進む彼らの頭上で木の枝を飛び越える複数の影が…
「おや?」
今度は、ガクシャが立ち止まる。
「どうしたい?ガクシャ…」
「いや…今、何かチラッと動いたような気が…」
しかし、やはり何も見えない。
「…気のせいですね」
と、ガクシャは走り出した。しばらくすると、何か澄んだ乾いた音が森に響き始めた。
「…何の音だ?」
「何か、こう…風で木と木がぶつかり合ったような音ですね」
「何かを、我々に知らせようとしているみたいだ」
ちょっと不安そうなシジンの言葉に対し、イカサマは
「気にするなって、風だよ」
さらにボーボの鼻が食べ物の在処が近いことを感じ取ったので、彼らはその音を無視して更に進んだ。
すると、森の奥に大きな湖があった。
「あれ?また海に出ちゃったよ」
ガンバの言葉を、ガクシャが訂正する。
「違います、あれは湖というものです」
「何だ、どっちにしても『うみ』がつくじゃないか」
これには、ガクシャも呆れ顔。そして、そこは様々な木の実が茂る、食べ物の宝庫だった。彼らは、手当たり次第に木の実を食べまくった。
花は咲き久しぶりに「塩辛くない水」にガンバは感激。腹一杯食べて横になると、海の上を漂流していた時に比べて、まさに天国。
そのうち、ボーボがしばらくここに棲みつこうと言い出す。ガンバは乗り気になるが
「だめですよ、一刻も早くノロイ島に行かないと…」
それを聞いて忠太が眉をしかめる。しかし
「なあに二、三日遅れたって、大して変わらねえさ。それより、ここで疲れた身体を休めようぜ」
と言うヨイショの言葉に、押し切られてしまう。早速、家造りを始めようと張り切るガクシャにイカサマは
「すぐ、ひっくり返ぇる潜水艦みたいな家かい?」
と、揶揄。ガクシャはムキになってしまい二、三日休むだけのはずが、一生棲めるような家にすると大張り切り。
…そんな彼らを、冷たい視線で見つめる黒い影が!
高所でつたを引っ張っていたイカサマが落ちた拍子に、サイが転がり「四・四の丁」が出たのが、何かの前触れだった。
「ち…何だか知らねえが、嫌な目が出やがったぜ」
突然、彼らの前に真っ黒で大きな生き物が姿を現わした。そいつは、ガンバ達に猛然と襲いかかった。
「うわあああっ…!」
その爪は大きく、太い枝を簡単に真っ二つにし、木の根元に大きな傷を残す。身体は大きくそれでいてものすごいスピードで駆け回り
彼らに隙を見せない。
「逃げろ!森の外に逃げるんだ!」
ガンバが叫ぶ。彼らは、慌てて森の外に逃げ出したが、その黒い影は彼らを追い払うとそれ以上追いかけることはしなかった。
森を出て海岸線に辿り着いたガンバ達は、あの「化物」が何か分からずただ震えていた。
「みんな…無事か?」
「ボーボさえ無事なら…あれ?」
イカサマの軽口が、とんでもない事態を認識させた。ボーボがいない!
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