「…聞こえないんじゃ、ないですか?」
なかなか現われないザクリ…忠太が不安そうな声で聞く。
「いやあ、そんなはずはねぇ。もうそろそろ…」
その時、シジンの耳がある音をとらえた。
「リス達の合図だ!ザクリが…こちらにやってくる!」
彼らの間に、さっと緊張が走る。
「ようしみんな、息の続く限り走れーっ!」
ヨイショの号令で、彼らは全速力で駆け出した。
一方、その音は尾行班たちにも聞こえてきた。
「奴め、とうとう現われたな!さあ、急ごう!」
クリーク達も、森の中へ向かった。
一方、森の中を必死に走るおとり班たちを、ものすごい勢いで追うザクリ。森を知り尽くしすさまじいスピードで走る黒い影…!
ザクリはあっという間に、おとり班たちに近づいていく。捕まったら最後、命懸けの鬼ごっこが続く。
一方、尾行班も必死にザクリの後を付けて走りつづける…すると、ザクリはふと何かを感じ取って足を止めた。そして、何を思ったのか
おとり班の追撃を止めて、脇道へと入っていった。そうとは知らない尾行班は、そのまま必死に追跡する。
「ヨイショ達、うまく逃げ切れるかな?」
「分からん。後は、運だけだ」
一方、おとり班たちはある変化を感じていた。
「お、おい…ザクリの足音が消えたぜ?」
「どうやら、ザクリをまいたようですね」
「よし、後は尾行班の仕事だ…」
ところが、尾行班がおとり班を追い越す形で、二組が森の中でばったり出会ってしまった。
「お…おい、どうしたんだ!?」
ヨイショのびっくりした声を聞いて、ガンバ達も足を止めた。
「ええっ…?お、おめえ達こそ…」
「どうしてくれるんですか?我々はザクリを、上手くまいたんですぞ!」
ガクシャに食って掛かられて、ガンバも思わず大声をあげる。
「俺たちだって、必死につけてきたんだぜ!」
「やめな!モメてる場合じゃないぞ。次の手を考えるんだ」
ガンバとガクシャを、ヨイショが止める。ところがそこへ彼らの背後から待ち構えていた黒い影が、突如襲い掛かってきた!
「うわわわわぁっ!」
不意を突かれ、慌てて近くの草むらに逃げ込むもののザクリの前では、なす術なし。ザクリの攻撃を受けて次々と地面や岩に
叩きつけられてしまう。しかし、ザクリはなおも手を緩めない…
と、その時木の上からザクリに向かって無数のクルミが飛んできた。リス達が彼らを救うべく必死の攻撃を始めたのだ。
「今のうちに逃げるんだっ!」
ザクリがひるんだ隙に、ガンバ達は散り散りに逃亡する。彼らを見失った上に、なおもリス達に攻撃されて、さすがのザクリも
ここは退散、何とかガンバ達は隠れ家まで戻った…
「ハァ、ハァ…怖かったですな…」
「ちきしょう、また裏をかかれたぜ…」
「それによ、またまたボーボがよ…ハァ」
そう、またボーボは逃げる途中ではぐれてしまったのだ。
「全く、ボーボの奴…世話を焼かせるな」
「大丈夫、逃げる途中までは一緒だったんだ。ザクリに捕まったってことはない」
苛立つガンバを、励ますようにクリークは言う。
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