奥から、唸り声を上げて野犬が近づいてきた。ボーボや忠太達は慌ててその場を逃げたが、ガンバ達には恰好のケンカ相手だ。すかさず威嚇して
くる野犬に、イカサマのサイが飛び野犬に命中。怯んだところを、ガンバとヨイショが尻尾や耳にひと齧り。この攻撃に野犬は悲鳴を上げて退散。
「ハハハハ…大したことなかったぜ」
「へへ、お互い腕の見せ場もなかったな」
ちょっと拍子抜けの二人だった。と、そこへ
「おおいみんな見てみろ、ここはあいつの住処だったらしいぜ」
イカサマの声に集まってみると、古びた座布団を中心に野犬が暮らしていた形跡が。
「よおし、ここを俺らの住処にしようぜ。こいつはいいや」
「ここなら、人間の目にも止まらねぇな」
と、ヨイショもその気になっている。その言葉に、忠太が
「あの…今日はこれからカラス岳に向うんじゃ…?」
「バカ言うなよ、折角の祭りなんだぜ。たっぷりと楽しもうぜ」
「で、でも…」
「それにさ、美味しいものがいっぱいあると思うよ」
と、ボーボも乗り気。
「お神輿の中で寝過ごすようでは、まだ長旅の疲れが残っているのですよ」
「そうですとも。十分に体調を整えておかないと、あの険しいカラス岳を越せませんぞ」
シジンとガクシャに、諭された上に
「それによ、この先祭りなんぞにお目にかかることもねぇだろうしなあ」
珍しく、ヨイショもちょっと感傷的なことを言う。
「そりゃそうですけど…」
忠太は返す言葉がない。
「よおし全員一致で決まり!今夜は、祭りに出発!」
仲間達がお祭りにはしゃぐ中、忠太は独り浮かない顔をしていた。
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