「ははは、恋に破れし一匹のネズミ。死に場所を求めて彷徨う、さすらいの酔いどれ医者…それがこの僕なんですよ、忠太君」
そこへ、危機が迫っていた。昼間、この場所からガンバ達が追い払った野犬が仲間を連れて復讐に来たのだ。5〜6頭の野犬が、唸り声を上げて
シジン達のいる場所に迫っていた。
その頃、そんな事態を知る由もないガンバ達は、かき氷用の氷を滑って楽しんでいたが
「さて、ぼちぼち引きあげっか…そうだ、忠太に土産でも持ってってやるか」
突然の襲撃に、慌てて逃げるシジンと忠太。しかし、積んであった丸太を崩しても大して足止めにはならない。シジンは酔っていることもあって
逃げ足が鈍い。転倒したところを忠太が慌てて起こそうとするが
「僕はもうダメだ。忠太君、君だけ逃げなさい」
「そ、そんなあ…」
「なあに、恋にやぶれた酔いどれ医者、どこで死のうと…さあ、早く!」
しかし、獰猛そうな野犬達を前に
「そら逃げろっ!」
と、一目散。辛うじて賽銭箱の中に逃げ込んだ。
「でも、逃げられませんよ…」
「大丈夫、ガンバ達が何とかしてくれます」
しかし、野犬にの一匹が、賽銭箱を齧り壊し始めた。
「ノロイと戦うまでは、死ねませんからな…」
と、シジンは言うもののふたりにはなす術なし。
一方、ガンバとボーボは忠太への土産を適当に物色して、ねぐらへと向かっていた。と、社を遠巻きにして見ているヨイショ達の姿が…
「ど、どうしたの?」
慌ててガンバ達が駆け寄ると、ヨイショは
「おおいガンパ、大変だい!」
慌てて駆け寄ると、野犬の群れが…
「さっきの、野良犬じゃねゃか…」
「ああ、仲間を連れて仕返しに来やがったんだ」
すると、ボーボの鼻が異変を捉えた。
「匂うよ、匂うよ…忠太と、それからお酒…」
「シジンか!?」
「うん、あの箱の中で匂うよ」
野犬達がとりかこんでいる賽銭箱に、ふたりが閉じ込められているのは分かったものの…
「よおし、行くぞ!」
突進しようとするガンバを、ヨイショが止める。
「待て!無茶だ、とても勝ち目はねぇ!」
「じゃあ、忠太達が目の前でやられるのを見てろってのかよ!」
ケンカを始めそうな二人に、イカサマの声が飛ぶ
「早く何とかしねぇとヤバイぜ!」
こうなると、頼みの綱は…
「何か良い手はないのかい、ガクシャ!?」
「いやあ、あるにはあるんですがね。多少、危険を伴いますなあ…」
ひとつ前の話へ
お話の続きへ 