第15話 鷹にさらわれたガンバ【1】

ガンバ達の前に立ちはだかる、カラス岳…別れ別れになったものの、ガンバ達は山頂を目指して登山を続けていた。
「ハア、ハア…」
肩で息をしながら、彼らが見上げたその先にはカラス岳山頂が。
「あれだ、あのてっぺんに登ればノロイ島が見えるんだ」
と、ガンバ。
「てぇことは、海も見えるってこったなあ…」
イカサマの言葉にボーボが
「そう言えば、もうずいぶん長いこと海を見てないねえ」
忠太も、上を見上げて
「ハアハア…あのカラス岳を越えれば、カラス岳さえ越えれば…」
「そういうこと!さあ、でっぱつ!でっぱつ!」
仲間を促すガンバ。そして、その上空には鷹がゆっくり旋回していた…

一方…

「そーれっ…!」
シジンは、ガクシャの作った即席の凧に縛られて空へと舞った。
「おーい!どうだいシジン、ガンバ達が見えるか?」
下で凧を操るツタを操作しながら、ヨイショが尋ねるが
「うーん…ぜーんぜん見当たらんが、実にいい気持ちだ…おお、山よ山よ、何でおまえは山なのか…」
と、ひとり空の散歩を満喫している。
「うーん…先に行ったか、まだここまで来ていないか?ともかくガンバ達、無事なれば良いのであるがなあ…」
と、その時ガクシャの視界に飛び込んだのは…
「あーっ!ヨイショ、慌てろ!鷹だ、鷹が狙ってるーっ!」
カラス岳上空を旋回していた鷹が、シジンの乗る凧に狙いを付けたのだ。
「いけねぇ…!」
慌ててツタを引っ張り、凧を下ろそうとしたが急な操作に凧は上空でクルクル旋回。
「わ…ああああっ…?」
事情が分からないシジンは、グルグル回ってびっくりするが、その時疾風の如く鷹が凧に襲いかかった!
「……!」
たちまち、凧はその鋭く大きな嘴と爪でズタズタにされてしまったが、シジンは間一髪で凧から落ちて助かった。その様子を、ただ呆然と見ているしか
なかったシジン達だが
「おい、シジン…」
「あ、どうも…」
ヨイショが自分のシッポを垂らして、岩場でかたまっていたシジンを助けた。
「とにかく、とくかくだ、ガンバ達がカラス岳の山頂を目指しているのは、決まってるんである。つまり、我々も急ごう!」
ガクシャの言葉に、ヨイショがうなずく。
「そうだな…それしかないな」
「と、思います…」
彼らも、カラス岳山頂を目指して走り出した。

その頃、ガンバ達はかなりの断崖絶壁を登っていた。手がかりも、足がかりもない場所だけに、イカサマが投げたダイスのひもにぶら下がり、
ガンバが岩場に前歯を突き立ててそれを手がかりに登ったり、狭い岩の間を両手足を突っ張って少しづつ登るボーボのシッポにぶら下がったり、
時には、危うくシッポにつかまっている仲間と共に転落しそうになりながら、彼らの必死の登山は続いていた。
そして何とか崖を登り切ると、平たい岩場に出た彼らは、バテバテで照りつける太陽を見ながら横になったが
「あー、しんどい崖だったぜ。ニャハハ…よっ、と。さあ、みんな行こうぜ!今の調子でジャンジャン登ろうや!」
キツい崖を登り切った達成感に満たされていたガンバは、仲間達に声をかけるが…
「行きたきゃ、先に行ってくれ。後から追いかけるぜ…ヘッ、あっしは、少々バテやした…」
イカサマが、ギブアップを宣言して寝てしまう。そして
「オイラもだよ〜おやすみ…ガンバ」
ボーボも、横になってしまった。忠太は、仰向けになったまま寝息を立てている。
「チェッ。しょうがないなあ…ホントに独りで行っちゃうぞ、もう…ちゃんと後から追っかけて来いよ…なーんちゃって。俺も、眠るとすっか」
ガンバは独り言のように呟くと、仲間と共に横になった。

…その様子を、さっきの鷹がじっとみていたのに気付かずに。

鷹は、ツイと飛び上がると音も立てずに彼らのもとに接近した。そして、崖の上で数回羽ばたきを繰り返すと、再び空高く舞い上がった。
足に、何かを掴んだまま…

お話の続きへ