第15話 鷹にさらわれたガンバ【2】

しばらくして、ボーボが目を覚ますと…
「ん…?あれ、ねぇみんな起きてよ。ガンバがいないよ!」
イカサマと忠太は、その声に起された。
「チェッ…まいったな、本当に先に行っちまったぜ…」
苦笑するイカサマに忠太が
「アッ、分かった!きっとどこかで待ち伏せしてて、ワッなんつって脅かすつもりなんだよ」
「ヘッ、まあそんなところだろうぜ。さあて、追跡だ!」
「オッケー!」
事情を知らない彼らは、ガンバが先に行ったものと思って駈け出した。

「ふ…あああ…」
ガンバがふと目を覚ましてみると、どうも様子がおかしい。
「アッ…!」
何と、自分は宙に浮いて空中を移動している。何事かと、上を見上げて事情を理解した。自分は鷹の爪にガッチリ掴まれて、どこかへ連れ去られ
ようとしているのだ。
「あ…」
思わずガンバは蒼くなったが、このまま連れ去られるわけには行かない。
「放せ、このヤロー!放せ、ちくしょーっ!放せーっ!」
ガンバは必死に抵抗するが、鷹は爪でガンバの身体をしっかり固定すると、いきなりほぼ垂直に急降下した。
「わああああっ…!」
ガンバも、さすがにこれにはグロッキー。力なく鷹の爪に掴まれたまま運ばれていった。
その頃、ヨイショ達も雷鳴を聞いていた。
「チッ、荒れてきやがったぜ…」
「大丈夫ですかな、ガンバ達は?」
不安げなシジンの言葉に、ガクシャも
「さあ…こんな時、イカサマのサイコロならどんな目が出るか…」

そして鷹にさらわれたガンバは、高い木の上にある鷹の巣に連れてこられた。
「……!」
巣に投げ出されたガンバは、自分を睨みつける鷹と対峙した。
“何とか逃げなくっちゃ…こんなところでモタモタしたたんじゃ、いつまでたってもノロイへ行けねぇ…”
ガンバは、身を翻してそこからの脱出を試みるが…
「それーっ!…お、わわわわっ…」
そこは、はるか高い木の上。うかつに飛び降りることは出来ない。
「くそう…こうなったら…にゃろーっ!」
ガンバは、果敢に鷹に立ち向かうが…
「うあああっ!」
たちまち、鷹の鋭い爪がガンバの左腕に襲いかかった!
「ちきしょう…やりやがったな…こんのくらいで、やられるガンバ様じゃねぇぞ…」
左腕に大きな傷を負い、血が流れた。思わず怯むガンバに、鷹はなおも嘴や爪を突きつけて攻撃してくる。ガンバは、巣の中を逃げ回るのが
精一杯だった。
「……」
そして、彼らの背後で雲行きが次第に怪しくなっていった…

一方、ガンバが先に行ったものと後を追っていたイカサマ達は…
「ガンバは、一体どこまで行っちゃったんだろう?」
忠太が、不安げに言う。てっきり、遠くにいところにいると思ったガンバの姿が、いつまでも見えないのだ。そして、いやな雲が立ちこめて雷鳴が
響き始めていた。
「それより、どこか岩陰を探せ!雷にやられるぞ!」
イカサマが、必死の表情で指示する。すると、近くに落雷があってボーボが悲鳴をあげる。
「ワーッ!こ、怖いよ…怖いよ!」
「ほら、立ち止まるなボーボ!」
足がすくむボーボを、イカサマと忠太が必死に歩かせる。
「助けて、ガンバーッ!」
鷹の巣の周囲ではにわかに風が強くなり、背後の空に黒い雲が迫ってきた。近くの木に落雷があって、危険を感じた鷹はしばらくガンバを睨んで
いたが、やがて飛び去っていった。
「お…?」
事情が分からないガンバは、てっきり自分に気圧されて鷹が逃げたものと勘違い。
「ああ、あいつ逃げやがったぜ。ハハハ、ざまーみろーっ!」
と、威張って見せたが事態はそれどころではなかった。
「……!」
目の前に稲妻が走り、近くの木に落雷した。たちまち、木は真っ二つに裂け火に包まれた。そして、次々と周囲の木に落雷が発生し、ついには
ガンバのいた木にも落雷が…!
「うわっ!うわああああっ…!」
たまらずガンバは、落下してしまう。そこでは、小さな山火事が発生していた。次々と、砕けた木が炎をまとって落下してくる。怪我で思うように
動けないガンバが逃げ場に困っていると、周囲を燃え落ちる木で被われてしまった。
「チキショウ…こんなところでバーベキューなんかにゃ、なんねぇぞ…」
すると、雷雨が降り出し火が燻って、煙が立ち込め始めた。
「う…ゲホッ、ゲホッ…」
ガンバは煙にむせ、涙が出てきた。その場しのぎに地面に穴を掘るが、左腕を怪我していることもあって、思うように掘れない。
「ちきしょう…こんな時、穴掘り名人のボーボがいたらなあ…」
それでも、身体を隠すくらいの穴を掘ってじっとやり過ごすガンバ。その上では、燃えた木が倒れたりしている。あのままでは、命が危なかっただろう。
やがて、雷雨は激しさを増しその雨は、落雷による小さな山火事を消し去った。しばらくして、雨の中をガンバも穴から這い出した。
「おーい、みんな…手も足も身体中痛ぇんだよ、目も霞んでんだよ…おーい、カラス岳はどっちだよー!みんな教えてくれ、カラス岳のてっぺんは
 どう行くんだよーっ!」

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