第3話:忠太を救え!大作戦【1】
航海を続ける船の甲板、独りサイコロを振って海を眺めているイカサマの背中で、ガンバ達が慌ただしい動きを見ていている。
ボーボも現われたが、ポンヤリしているところをヨイショに背中を突き飛ばされてしまう。
「いってぇ、皆さん方は、何をそんなに、慌てていらっしゃるんで?」
呑気なイカサマの質問に、ボーボが何事か思い出したように返事する。
「うん、忠太がちょっと熱を出しちゃったんだよ…」
「ほぉ、そいつはてぇへんなこって。」
「そう、大変なんだ…!ああ、大変大変…」
イカサマは、慌ててその場を去るボーボの背中を見送りながら、
「ま、あっしにゃ関係のねぇこって…」
その頃、傷が悪化し化膿しかかった忠太は熱を出し苦しんでいた。
「何とか、ならねぇのか?」
苛立つヨイショに、シジンが呟くように言う。
「人間が使う、化膿止めさえあれば…」
これを聞いたガンバとヨイショは、同時に船の医務室へと急行した。が…!
「あ、ああ…」
「ひでぇ…」
医務室には、満足な薬がなかった。
「チッ、何てボロ船だい…満足に薬ひとつ積んでいないなんて…」
文句を言っている側を、人間が通る。慌てて身を隠した彼らは、人間が去ると船底へ向かったが
「忠太のやつ、もしかすると…」
と、悲観的な言葉がヨイショの口から…それをガンバがたしなめる。
「おっ、見えたぜ!へへへ…」
一方、イカサマは遠くに何かを発見し思わず嬉しそうに指笛を吹いた。
忠太は、熱と共に悪夢にうなされていた。忠太の目の前で姉や仲間達が、次々とノロイの爪にかかり、命を落としていく…
「ね…姉ちゃん…」
重い空気が支配する中、彼らの耳にイカサマの吹く呑気な口笛が響いてきた。
「…この野郎!静かにしろい!」
激怒するヨイショをよそに、イカサマはマイペース。
「いやぁ、すいやせん。島影が見えたもんですから、つい…」
「島影…ノロイ島か?」
性急なガンバの問いに、イカサマは首を振る。
「いえいえ、全然。あっしの故郷でやんす。」
ガンバ達の側で、鼻歌まじりに身支度を整えたイカサマは彼らに切り出した。
「えー、てめえイカサマ、この港町が故郷でやんす。つきましては、短いお付き合いでございましたが、この度辛きながらも
お別れでござんす。皆様も、ノロイ島とかへの道中ご幸運を、陰ながらお祈り致しておりやす。」
カッコ付けてその場を去る姿に、ヨイショはおかんむり。
「ケッ、いっぱしぶりやがって…気にいらねぇ野郎だ。」
とその時、大音響と共に甲板の扉が開くと貨物を下ろすためのクレーンがすぐ近くに降りてきた。彼らは、慌てて場所を移し
人間達の作業が終わるのを待っていた。と、そこへひょっこりとイカサマが現われた。
「あ、言い忘れておりやした。あっしの故郷にも、ちゃんと薬屋ぐれぇはありますんで。」
そして、貨物の端にシッポを結び付けるとそのまま貨物と共に、釣り上げられていった。
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