§第1章 「ガンバの冒険」について§

「ガンバの冒険」とは
『ガンバの冒険』は、1975年(昭和50年)4月から9月まで日本テレビ系列で放送された、テレビアニメである。
このアニメが多くのテレビアニメ作品と異なる点は、原作が「児童文学作品」であることだろう。

『冒険者たち ガンバと15匹の仲間』〜斎藤惇夫・著 岩波書店・刊

である。この作品は、アニメ化される4年前に「アリス館牧新社」より出版されている。
(原作者の斎藤氏は、後にこの会社の社長を務められている。なお、現在は「岩波書店」と合併しているため、斎藤氏の作品は「岩波書店・刊」となっている)


原作とアニメ
ファンには周知の事実だが、斎藤氏の作品には「ガンバ3部作」と呼ばれる一連の作品群がある。
前述の「冒険者たち」に加え『グリックの冒険』と『ガンバとカワウソの冒険』である。
作品の発表順に『グリックの冒険』(1970年)『冒険者たち』(1972年)『ガンバとカワウソの冒険』(1982年)である。
そして、いずれの作品にも、ドブネズミのガンバと言うキャラクターが登場している。

『グリックの冒険』は、タイトルの通り主人公は「シマリスのグリック」である。
かつて斎藤氏が飼っていたシマリスが、ある日逃げ出した事から、見知らぬ世界に飛び出したシマリスは、どんな「冒険」をするのだろうと
思いを馳せて書いた作品だそうである(原作本のあとがきより引用)
その中で、脇役としてドブネズミのガンバを登場させている。
これは、夜の町で氏の足元を走りぬけた一匹のドブネズミが、大通りに出たはいいが車のライトと通行量の激しさに右往左往する様が
妙におかしく、それがきっかけでネズミをモチーフにしたキャラクターを登場させたら、読者にはこのガンバの方がうけてしまい独り歩きを
始めてしまったのだ(原作本のあとがきより引用)

結局、このガンバを主人公にした作品を発表せざるを得なくなっていた時、たまたま取材に訪れた八丈島でイタチを見た斎藤氏は、
それが畑を荒らす野ネズミの駆除を目的として、飼育されていたイタチを島に放したところたちまちネズミが激減した、との話を聞いたのです。
そして、そこで見た「白い毛のイタチ」の美しさに感動し、もしかしてイタチから生き延びているネズミがいたとしたならば…
そんな考えが結び付いて書き上げた作品が『冒険者たち』だった(原作本のあとがきより引用)
『ガンバとカワウソの冒険』は、ほぼ全滅したと考えられているニホンカワウソの話が出たことかきっかけで、斎藤氏が『冒険者たち』の続編として
筆を取ったもので三部作の中では最も長編の作品である。
自然保護の大切さを訴えるこの作品は、ともすれば説教じみた内容に偏りがちだが、敵役として「自分たちより弱いものを殺すことを楽しんで」
カワウソを執拗に狙う野犬が登場し、カワウソの姉弟を守りつつ彼らが安心して棲める場所を探す旅を展開し、読んでいる者を飽きさせない。

これら「ガンバ三部作」は、いずれもアニメ作品になっている。『冒険者たち』はTVアニメとしてまた、1984年に映画版も製作されている。
『ガンバとカワウソの冒険』は、1991年に映画化された。学校などの行事でこれらの映画を観に行った(行かされた)人もいらっしゃると思う。
『グリックの冒険』も1981年に映画化されたのだが、前述の2作品と制作会社が異なるために版権の関係で、登場キャラクター特にガンバは
キャラクターの雰囲気も演じられた声優さんも、他作品と異なっている。また、前述2作品はビデオ・LD・DVDなどのソフトが入手可能なのに対し
これだけは、LDが発売されているに過ぎない。
なお、ここではテレビアニメ版作品『ガンバの冒険』を中心に論じていきたい。

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