衛星放送が見たい
マカティにあるダスマリニャスビレッジのポメロストリート。画面の木は,マメ科の植物でした。
自宅の庭
そこに見えるエアコンの表示はw(ワット)ではなく馬力でした。

 
 
フィリピンで過ごした三年間の任期のうち、初めの6ヶ月はプール付きで芝生の庭がついた、大理石の大邸宅に住んでいました。文部省が安全を考えて、そのような良い住宅環境をそろえてくれたのです。マニラ湾とラグナ湖の間にある、壁に囲まれたビレッジであり、アラバンビレッジといいます。近くには歌で有名なモンテンルパ刑務所があり、アヤラ財閥が地主であると聞きました。そこはメトロマニラの中心部からは少し離れており、そのためスモッグの影響が少なく、とても星がきれいでした。南十字星も窓から見ることができます。
 その後の2年半はマニラ中心部にあるビレッジに引越しました。そちらの家もいわゆる大邸宅であり、場所はマニラ中心部であってもテニスコートよりも広い芝生の庭がありました。ケーブルテレビは後の家には有りましたが、前の家にはありませんでした。ケーブルテレビは60チャンネルほど見ることができます。NHKのBS1・BS2、WOWOW、24時間のCNN、BBC、フランス語放送、ロシア語放送、中国語放送、インドネシアの放送、香港の放送、インドの放送などです。日本のドラマやドラエモンが中国語に吹き替えられていたり、「セーラムーン」がタガログ語(フィリピノ語)に吹き替えられていたりして、とてもおかしくて笑ってしまいます。英語吹き替えの「鉄腕アトム」もありました。もっとも、英語の俗語でアトムは「おなら」という意味なので、アストロボーイと名前が変えられていました。
 湖の方の家で半年もテレビを見ていなかったので、むしょうにテレビが見たくなり、日本から持ってきた60センチのパラボラアンテナを設置してみましたが全然入りませんので、しばらくあきらめていました。あるとき、フィリピン人女性と結婚した知り合いの男性の家に招待される機会がありました。その人の大邸宅の庭に案内されたとき、私の目はパラボラアンテナに釘付けになってしまいました。60センチのちゃちなものではなく、直径が3mもあるものです。スリランカに住むSFの巨匠アーサー・C・クラークの家みたいです。私は心の中でつぶやきました。(このパラボラアンテナさえあれば、NHKを見ることができる。WOWOWをみることができる。)その知り合いに聞くと、直径が3メートル以上ないと絶対に受信できないということでした。それからは3メートルのパラボラをさがして三千里(?)の生活になりました。
 遂に、日本人の便利屋さんが買い手を捜しているという情報を手に入れ、早速買い、プールサイドにコンクリートの土台をびっくりするような安い人件費でつくってもらい、衛星の位置を計算し、プールのわきにテレビを置いて、自分で最後の微調整を始めました。赤道に近いマニラだと、赤道上の静止衛星の方向はほぼ真上です。雨がたまらないように真ん中に穴が開いています。調整したのですがなかなか受信ができず徹夜の作業になりました。明け方になってあきらめかけているときに、突然、BS2が入りました。まだまだノイズが多いのでネジで微調整をしましたが、満足のいく画像からは程遠い状態です。偶然に、ちょっと指でパラボラのふちをさわったときに写りがよくなりました。そこで小さな石ころをひもで結びパラボラのふちに結びつけてみました。そうしたら何と日本国内で見るのと変わらない写りになったではないですか。ああ、これで日本のニュースを見ることができる。うれしくて、プールのまわりをぴょんぴょん跳ね回ってしまいました。早起きのメイドさんには、私が気がふれてしまったと写ったに違いありません。

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