カルチャーショック

-マニラに来て初めて床屋に行った日-

床屋に行くとなると、ちょっと事前の準備をしていなくてはなりません。土曜日のドライバーさんの退勤時間に、日曜の時間外勤務をたのむことを忘れずにしておかなくてはならないのです。そうしないと床屋の近くの駐車場で車があくまで1時間近く時間を無駄にすることになります。ドライバーさんがいると駐車場に入れて、床屋の前で待っていてくれます。ドライバーさんにとっては日曜日に働くことは現金収入になるので、むしろ歓迎されます。ドライバーさんは時間外勤務を快く引き受けてくれ、やっと床屋に行く準備ができました。10時ごろデパートが開くので、そのころ出発します。外にでると目を開けていられないぐらいのまばゆい光です。なるべく日ざしをさけるためにひさしが長い住居に住んでいるので家の中は昼でも電灯をつけています。そこから外に出ると、ただでさえまぶしい外界がもっとまぶしく感じられるのです。アスファルトは熱でとけるので道路のほとんどはコンクリートでできています。このためクッションが悪く自動車の中へもろに振動が伝わります。トイレにいくと3センチぐらいのゴキブリがいます。ヤモリもいます。ドアのすきまから入ってきたのでしょう。10億年前からいるこの生物に敬意を評してスリッパではたたきません。家の庭にある赤じゅずやしの林を横目で見ながら車に乗り込みます。耳にかかるぐらいになった髪を切りにいくのです。かばんの中にはフィリピノ語のテキストと英会話の本が入っています。
床屋の受付で言うと、リクライニングのいすに座れといわれます。3・4人に取り囲まれどんな髪型にするのか聞かれます。「クッジュウ カット アンド パート マイ ヘアー」(カットして73に分けてください)というと「オポ」(はい)といいます。どうやら通じたようです。「ひげそりから全部お願いします。」とたのみました。店員さんはお互いに話すときはフィリピノ語で、私に話すときは英語で話してくれます。「全部やってくれ。」というと意味ありげにニコッと笑いました。
 そこからやることはだいたい日本と同じなのですが、カミソリでひげをそるところが違います。あの大きなカミソリではなく、スーパーで売っているようなただのカミソリを出してくるのです。包んである油紙をはがしています。エイズ患者が多いフィリピンならではことなのです。そうこうしていると女性が美容院で使うようなものを頭からかぶせられました。こんなものをかぶったのは生まれて初めてです。(熱い、熱いやめてくれー。)しかし、ものは試しだと思いがまんしました。次には頭に変な臭いがするものをつけられてマッサージされます。次にリクライニングのいすが倒されると全身のマッサージがはじまりました。カットする人は女性ですが、アシスタントは筋肉もりもりの屈強な男たちです。なんだなんだこれではマッサージ屋さんと変わらない。首をバキッと音がするぐらい曲げられるのにはまいりました。足の感覚があるので下半身不随にはなってないようです。そして、顔にねばねばしたものをぬられました。何かあめのような臭いがします。顔の皮がはがれるのではないかと思えるぐらい引っ張られます。次に生まれて初めて顔に白いパックをされました。鏡を見るとパンダのようです。笑いをこらえるのに必死です。次はつめ切りです。靴下を脱がされて足のつめも切られます。そういえばマニラにはつめ切り専門の店があるということを聞いたことがあります。その店はバクラと呼ばれるゲイが経営しているそうです。勘定を払う段になりました。「マッカーノ?」(いくらですか)と聞くと、500ペソといいます。えー、先輩の先生から聞いた話によると100ペソということだったのですが、その5倍です。まっ、しょうがない全部と言ったのがまずかったんだ。500ペソ払ったのですがまだ不服そうな顔をしています。あっチップをはらわなくてはないことを思いだし、10%だから50ペソを払い、またギラギラした光の中にもどりました。



















結婚式が行われているマニラ大聖堂
次へバタンガスへの旅パート1
バタフライナイフ発祥の地
フィリピン○×クイズ
前回の答× 
解説、梅雨というよりも夕立に近く、物凄い雷と雨のあと、からっと晴れます。雨季には風向きが変わり、マニラの右の山にぶつかり、地形による上昇気流が起こるため雷雨になります。詳しくは 想像を絶するフィリピンの雨