仕事が終わり、いつものようにドライバーさんたちが玄関のピロティから先生方をピックアップしています。遠くの方では1万メートル近くの高さの積乱雲がみるみる大きくなっており、日本の雲を撮ったビデオを早送りしたみたいなので、見ていて飽きません。
 私のドライバーさんが来たので、自分の車の後部座席に乗り込みました。帰り道の景色は日本の昔の田舎のような風景に似ています。露店でで物が売られており、その脇で一戸建ての家が建設中のところがありました。ただブロックを積み上げただけの、粗末なものです。宮城沖地震のときブロック塀の下敷きになり、登下校中の何人もの小学生が亡くなりましたが、あんな家で大丈夫なのかなと思いながらながめていました。すると突然、日本の10倍ほどの大音響の雷が鳴り、バケツをひっくりかえしたような雨が降ってきました。雨というよりも滝の中に入った感じです。たった今まで乾いていた道路が、川のようになってきて、みるみる車に浸水してきます。くるぶしの上まで水がきました。排気管のところまで水がきたせいか、ブルブル・・・・プツンとエンジンが音を出し、突然止まりました。私はのんきにいつも持っている一眼レフカメラで、生まれて初めて見る、熱帯の豪雨の様子を写していました。ドライバーさんは、わたしがのんきにしていることに、憮然としながらエンジンルームを見に行きます。まわりのタクシーを見てみるとまだエンジンは止まっていないもようです。ドライバーさんに、「どうしてなのか。」と尋ねると、「タクシーはキャブレターや排気管を改造し、水が入りにくくしているからだ。」と答えが返ってきました。そのうちに私の車の周りにどういう訳か人が集まってきました。後で分かったのですが、何と彼らは「押し屋」さんだったのです。私の車を押してくれるということで、私は安堵感からニコニコして頼みました。雨はもう晴れています。エンジンは押しがけで、何とかかかりました。ドライバーさんはお金を渡すようにと言っています。私は感激して、ポケットにあった2百ペソ(8百円)を渡しました。後で聞くと50ペソぐらいが相場だそうです。靴とくつしたはずぶぬれになりましたが貴重な体験ができました。








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想像を絶するフィリピンの雨