【 出会い 】−(前編)

春麗らかな4月、一応高校の1年10組の教室ではクラス分けされた新入生が、
新しい教室の中で入学式が始めるまでのわずかな時間の間、待機していた。
当然、先生がいないのをいい事に、ほぼクラスの全員がいくつかの小グループに別れて、
話をしていたので、教室は騒然としていた。
そんな中、窓側で5〜6人程集まっている女生徒のグループがあった。

「で、どう?誰か先輩とかで良さそうなのいた?」
「どうかなぁ〜、色男組の翔センパイなんか格好良いと思うけど」
ショートカットの女の子がそう言うと
「あたしは鳥雄センパイなんか良いなぁ、センパイとは思えないくらい可愛いしね。
でも噂に違わずいつも女の子と一緒なんだよね、センパイ達」
それに対して、茶色がかったポニーテールの女の子が反論するようにいった。
そんな会話を唯一人、興味なさそうに聞いている他の女子より幾分、背の高い女生徒がいた。
彼女達の話の内応が何時の間にか男子生徒の話になり、それからというもの話の中心になっている
2人を見つめながら、いつ終わるのかと考えながら、軽く息をはく。
「ねぇ、気奈子は誰か良さそうな人いた?」
1人でつまらなそうにしているのを感じとったのか、ポニーテールの子が急に彼女に話をふった。
「え、えっ・・・?べ、別にあたしは特にこれといっていないけど・・・」
彼女−生井気奈子は慌ててその場を取り繕うように答えた。
「まぁ、気奈子はちょっと変わってるから、好きなタイプもあたし達と違うんだよ、きっと。」
グループ内の別の女子が笑いながら、気奈子をからかい半分に言った。
彼女は、気奈子とは中学校こそ違うが、近所に住んでいる幼な友達だったので、
気奈子の事をよく知っていた。
「う、うるさいわね!そんな事、あなたに関係ないじゃない。」
気奈子が軽く睨んで怒鳴ると、気奈子の迫力に気圧されたのか、彼女は別の女子の後ろに
さっと隠れてしまった。
それを見て、気奈子はフンと鼻を鳴らして廊下に向かって歩き始めた。
「ちょ、ちょっと気奈子。何所にいくのよ?」
「ちょっと、トイレに行ってくるだけよ。」
「トイレって、もうすぐ式始まるよ。」
「いいよ、別にちょっと位遅れても。式に出た所でかったるいだけだし。」
気奈子は彼女達の方を振り向いて興味なさそうに淡々と言うと、再び彼女達を背にして
そのまま廊下に出ていった。

(そりゃ、あたしだって・・・どんな事でもいいから、何か夢中になれる事があれば
良いけど今までそんな物無かったし・・・ましてや男子なんかこれといって・・・)
気奈子は俯き加減に廊下を歩きながら、さっき言われた事や中学校での出来事を頭の中で
反芻していた。
一応高校を選んだのも特にこれといった理由もなく、単に家から近かったという理由だけ。
何一つ熱中する事を見つけられず、ただ周りに合わせて無難に過ごしたような中学時代を
思い浮かべるだけで歯痒い気持ちで一杯だった。そしてこの状態がずっと続く事に対して
不安な気持ちになっていった。

【中編】 へ続く

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