ドレアム戦記

第一編 玄白胎動編 第10話

 大陸の西側、白虎地方を治めているウエストゴールド家。ここは代々女系相続の王家である。始祖はレオナという女王に始まるが、その良人が誰なのかは記録に残っていない。
 レオナには3人の娘があったが、残念ながら男子には恵まれなかった。長女レミアは若くして夭折し、次女のレイアが次の女王になった。ところが、レイアにも娘しか生まれず、レイアの妹のレジュアにも男子は授からなかった。
 その後についても代々の王家はなぜか娘しか生まれず、いつしかウエストゴールド家は女系相続の女王国になった。そうなると皮肉なもので、その後男子が生まれることもあったが、既に定着した女系相続の伝統が男子王の誕生を阻み、仮に男子が生まれても王位継承権は授与されないということがウエストゴールド王家のしきたりとなっていた。
 ウエストゴールド王家で王位継承権を持つ者は、名前にレの冠詞を持っている。現在は、女王レシュカとその娘長女レナリア王女、次女レイリア王女の3人が該当していた。また、王族には王家に近い順からラ、リ、ル、ロの冠詞が付く。これらは女王レシュカの息子、ラバルム王子や王宮である金星宮奥の院、別名銀糸殿の宮中大夫ルクレイン公爵や近衛将軍ロスタン侯爵などに代表される。
 女王の子供の中でラバルム王子は、王位継承権こそ持っていなかったが、決して愚昧な人物ではなく、むしろ3人の中で一番の英邁と言えた。このためか、密かに彼に王位継承権を持たせたいと考える、女王家としては不貞の輩も少なからず存在していた。
 というのも、王位継承権第1位のレナリア王女のご乱行が目に余るからである。生まれたときから人並み以上の美貌を持ち、次の女王になるための教育を受け、彼女に勝る者は誰もいないという環境で育てられた彼女は、元々持っていた我侭な性格と相まって、全てが自分の思い通りに行かないと気がすまないばかりか、自分に従うものは味方、逆らうものは自分の地位を狙う敵、という極端な思想を持つに至った。
そのレナリアにとって唯一怖いのは、母であり最大権力者である女王レシュカのみ。故に、女王の前では淑女を演じているが、ひとたび視界からいなくなれば暴君と化す。更に、レシュカに対しては、それを悟られない巧妙な知恵もあった。その結果、レナリアを煽て奉って擦り寄ってくる、ろくでもない連中には限りなく甘く、苦言を呈するような全うな人物には、王女に逆らう者は王家に逆らうものと決め付け、鬼と化してとことん容赦なく痛めつける、という人格が形成されたのだった。
レナリアはまた、気分屋の一面を持っていた。自分の権力をかさに来て、常に取り巻きを引き連れて豪遊していたが、その取り巻き連中でさえ、少しでもレナリアの機嫌を損ねると、命じられた他の取り巻き達から容赦なく、ぼろぼろになるまで痛めつけられることなどが日常茶飯事であった。
そして、そのレナリアに最も酷い仕打ちを受けたのは、さもありなん、妹であり、王位継承権第2位を持つレイリア王女であった。レナリアにとって、レイリアは自分の地位を脅かす厄介者としか映っていなかったのだ。従って、小さいうちから自分に逆らえないような人格に洗脳していった。
レイリアは、健気に姉の意に従っていたが、成長と共にレナリアに勝るものを持ってしまった。そう、可憐な美しさである。そして、金星宮の中で密やかに噂されていた、美貌についてはレイリアの方が勝るという話がレナリアの耳に届いたとき、レナリアの怒りは天に駆け登った。
どうにかしてレイリアを貶めたい。しかし、レイリアの容姿に傷を付けたりすれば、女王レシュカに気づかれてしまう。さすがにそんなことをすれば、自分の王位継承者としての地位が危ういだろうということは理解できたので、別の方法を考えた。もっと陰湿で、レナリアが満足する方法を。丁度その時に自分の取り巻きにいた、娼館ナンバーワンの調教師に命じたのだ。そう、レイリアを性奴隷として調教しろと。
哀れレイリアは姉の思惑通りに調教され、表の世界では可憐な王女の仮面を被り続け、裏の世界では身分を隠すために仮面を被り、上流社会専用の性奴隷として男に身体を捧げるという日々を過ごすこととなった。だが、レナリアはそれだけでは満足せず、取り巻き達が役割を忠実に果たしたときの褒美として、仮面を外したレイリアを肉奴隷として与え、奉仕をさせて愉悦に浸っていたのである。
 しかし、レイリアが妊娠したため、事が発覚した。レシュカは怒ったが、レナリアが泣いて謝り、レイリアに二度と手を出さないと誓ったため、謹慎処分で済んだ。その後、レイリアは子供を堕したが、心の傷が重く、レシュカの配慮でレナリアの手の届かないところに送られた。
 レナリアは謹慎を解かれるまで、非常に模範的に振舞った。まるで心が入れ替わったかの様に。結果的にはレナリアの思うとおりになって、レイリアがいなくなったことが影響していたのである。レシュカもこれならと、予定よりも早く謹慎を解いた。
それ以来、レナリアの行動は更に慎重になっていった。しかし、実情は変わらなかった。最初に、レイリアの妊娠をレシュカに告げた医師の家族が何者かに襲われた。妻と娘が犯され、街にいられなくなった医師は、家族と共に逃げるように去っていった。結局、誰がやったのか犯人はわからず仕舞いだったが、レナリアが糸を引いているのでは、という噂と憶測が闇社会では当然のように流れていた。そしてそれは、その後もレナリアのことを女王に注進した者たちが、次々と不幸な事件や事故に見舞われたという事実と重なって、確固たる話として裏社会に浸透していった。いつしか、レナリアに目をつけられることを恐れて、誰も彼女のことを女王に伝えるものがいなくなっていった。
 そして、それこそがレナリアの望むことであり、元の生活に戻ったレナリアは、ウエストゴールドの首都ジンの市街の人々の噂の中で恐怖の存在となっていた。
 そんな中、ラバルム王子に縁談が舞い込んだ。相手はセントアース皇帝家の四女、マーサ姫である。申し分のない相手と、レシュカは快諾、ただ相手が14才ということもあって、とりあえず婚約だけしておき、マーサが16才になるまで待つことにした。
 ただ、婚約中といっても、事実上結婚したのと変わらなかった。というのも、マーサは婚約後すぐ、行儀見習いとして金星宮に来ることになったのである。
そして、マーサが初めてその姿を金星宮に現したとき、人々はその美しさに目を奪われた。金色の髪と灰色の瞳を持つ美少女。体型は発育途中と見えて少々か細く映るが、将来の麗人が約束されているかのよう。そして、ただ美しいだけではなく、皇帝家の娘としての気概と気品を持ち合わせ、物怖じしない心の強さもしっかりと持っていた。
 そんなマーサを迎えて、レシュカとラバルムは心から喜んだ。だが、もう一人。違う意味で喜んでいる人物がいた。レナリアである。彼女は、マーサを見た途端に心の中で舌なめずりをしていた。レイリアや自分と同じ金色の髪、一瞬昔のレイリアが目の前に現れたと思ったほど。レナリアの心に性奴隷として支配したレイリアの姿が浮かび、服従と支配を握ったあの快感が、身体の奥底からふつふつと湧いてくる。もう一度あの快感を味わいたい。あの幼い未発達の身体に性の欲情を植え付け、肉奴隷として支配したい。そんな思いが、めらめらとレナリアの中で燃え上がっていた。
<私はウエストゴールドの王位継承者。お母様以外の誰も私に逆らえないということを教えてさしあげますわ・・・>

「はわぁぁぁぁぁ・・・ん」
 嬌声と共に身体がびくりと跳ね上がった。
「まあ、いい声。もっと鳴かせてあ、げ、る」
 ミスズが乳首を甘噛みする。同時に右手でクリトリスと膣口を同時に攻めた。
「あぁ・・・ん、う、あ、あっ、あっ、あっ、あぁん、あぁぁぁ・・・」
 ミスズの相手をしているミアという娼婦が次の絶頂に向けて駆け上っていくのがわかった。ミスズの右手はミアの愛液と、先程ジローが出した精液でべとべとになっていた。
 ジローは2人の姿を眺めながらお茶を啜っていた。今いる場所はイオで一番と言われている娼館である。ジローは、2日連続でこの娼館に顔を出していた。相手の娼婦は昨日とは違っていたが、共に貴族や商人という上流階級の連中から人気がある娼婦を選んでいた。
 娼婦は、そういった上流階級の連中の自慢話や愚痴というものを、寝床の中で聞かされていることが多い。もちろん、自慢話にはオーバーな話やガセネタもあるが、意外と真実も含まれているものなのだ。
 ジローは、そういった娼婦から情報を得ようとしていた。ただ、簡単に情報をくれるとは思えないので、ユキナを一人補助として連れてきて、最初はユキナに女を覚えさせたいと言うことでその店の看板娘ジェシカを選んだ。
初日に連れてきたユキナは、ジェシカに手ほどきを受けて最初は対抗できていたが、次第にめろめろになった。ユキナを征服したことで気分を良くしたジェシカだったが、お礼と称して今度はジローとユキナが奉仕する形でめろめろにし、ガードが緩くなったところでジローの『淫惑』が効力を発揮し、ジェシカを落とした。『淫惑』は、相手が好意を持たないとその効力が薄いため、ジェシカのような娼婦相手では最初は思うように掛からないのだ。
そのジュリアから上流階級の連中のお気に入りだと聞きだしたのが、ミアだったのである。
翌日、今度はミスズを連れて同じ娼館を訪ねたジローに対して、主は多少怪訝な顔をしたものの喜んで客を迎え入れた。そして、ミアを指名したのである。
前日と違うのは、一緒に来たのがアイラの手ほどきを受けて、最近攻め側の味を覚えてきているミスズということである。案の定、自分が手ほどきするものだと思っていたミアは最初からミスズにペースを奪われ、ジローが挿入した時にはめろめろになっていた。
「ねえ。ミア。もっと気持ちよくしてあげるから、何か面白い話をしてくれない?」
 ミスズが後ろから、ミアの乳房を揉みしだきながら尋ねる。
「へ?ぬぁにうぉ、ですかぁ・・・」
 ジローが挿入したまま動きを止めた。
「あっ、ねっ、もっと、や、ゃだぁ・・・、とまっちゃ・・・」
「ミア、だめよ。ジロー様も貴女のお話が聞きたいんだって」
「ああ、何でもいいよ。お客の戯言でも構わない」
 そう言ってジローはミアの眼を見つめる。ジローの瞳を見つめたミアは体中が熱く疼く様な感覚を覚えた。既にジローの『淫惑』の術中に嵌っている。
「なん、でも・・・?」
「そう。何でもいいのよ・・・」
 そう言ってミスズはミアの乳首を捻る。ミアは喘ぎ声を漏らした後で、ぽつりぽつりと話を始めたのだった。
 一通りの情報を得た後、ジローとミスズはミアを思い切り弄った。ミアの膣内でお預けを食っていた肉棒から、爆ぜるように放出された精液がミアの膣壁を打った時、ミアが一瞬白目を向いたほどだった。
 そしてジローは休憩中。だが、ミスズはミアを攻めるのが楽しいと見えて執拗にレズプレイを繰り返していた。
 ミアをもう今日はお客を取れない状態になるまで快楽地獄に落とし、ジローとミスズが娼館を出た時は、もう夕暮れとなっていた。昼過ぎに入っていたから、かなりの時間が過ぎている。
「すみません。遅くなってしまいました」
 ミスズが申し訳なさそうに言った。あれからミスズの責めで2桁はイカされたミアを、最後に止めとばかりにジローが貫いて終わったのだが、ミスズとしては自分が責めている時間が長すぎたと反省している様子。
「いいさ。どうせ情報収集の費用もカメオ持ちだしな」
 そういって、ミスズの黒髪を撫でると、ミスズは自分の腕をジローの腕に絡ませて、体を預けながら歩く。まるで甘い恋人達の光景がそこにあった。
「ん、なんだ?」
「あれは、様子がおかしいですね・・・」
 ミスズとジローは互いに頷くと、路地裏に入って近寄って行った。そこには、10人程の若い男が、1人の中年の男を囲んでいるところだった。若い男達は、それぞれに棒やナイフなどの獲物を持っている。
「・・・だせ、さもないと・・・」
 近寄って行くジローの耳に脅迫とも聞こえる言葉が飛び込んできた。どうやら、中年の男が寄って集って脅されているらしい。
「ジロー様、あれはカメオでは?」
 ミスズがそう言ったとおり、囲まれている中年というのがカメオだった。どうやら襲われているらしい。
「あいつは、あれで商売敵が多いみたいだからな。仕方ない、助けるか」
「はい」
 そう言ってジローとミスズは再び腕を組んだ。そのまま、恋人達が路地裏に迷い込んだ風をして近づいて行く。
「おい、ここは通行止めだ。怪我したくなかったら戻りな」
 取り巻きの1人がジロー達に気付いて凄みながら言った。しかし、ジロー達は知らん顔で近づいてくる。
「てめえ、耳が聞こえねえのか!」
 もう1人が怒鳴る。しかし、ジローもミスズも涼しい顔で無視を続けて歩き、あと数歩で手が届く範囲までくる。
「おい、邪魔だ。畳んじまえ。男は半殺しにしろ、女は好きにしていいぞ」
「へい!」
 カメオを見張る3人を除いた7、8人がジローとミスズに向かっていった。ジローに対しては獲物、ミスズに対しては素手で襲い掛かる。
 路地は、4人が横に並ぶのが精一杯な広さだった。その中でミスズが一歩前に出て捕まえようと腕を伸ばしてくる男の懐に素早く潜り込み、鳩尾に肘打ちを叩き込む。反転して反対側の肘を別の男の下顎に。
 2人の男があっけなく沈んだのを見て、後方の連中の目の色が変わった。と、その時路地の壁に棒が当たって、乾いた音を響かせた。白目を向いて倒れている2人の男を踏み越えて、ジローも前に進む。
「野郎!」
 咄嗟に状況が判断できない悲しさか、気合を入れて突撃した残りの男達。だが、ジローとミスズは『時流』の力を使うことなく一撃で叩きのめしてしまった。
「な、おめえら・・・何もんだ!」
 残った3人の内、一番兄貴格の男が呻いた。
「その男の知り合いだ」
 ジローのその一言で、頭を抱えていたカメオが初めて気付いたようだった。
「だ、旦那ぁ、た、助けてくださいましぃ・・・」
 ジローは頷くと男たちに対峙する。
「どうする。力の差は歴然だと思うが」
 男たちの顔に怯みの色が見えた。だが、兄貴格が何とか踏みとどまったのか、ナイフを構えてミスズに襲い掛かった。ジローよりはミスズの方が組し易いと判断したようだ。
 ミスズはしかし、ナイフで襲い掛かる相手を待つなどという悠長なことはしなかった。自分から前に出て、兄貴格の男のナイフを避けながら、その手首を手刀で打つ。兄貴格の男はその力の差に愕然とした表情のまま、ミスズの拳を受けて崩れて行った。そして、残りの2人もジローによって叩き伏せられていたのである。
 
 こんな日々を過ごしながら、イオでの情報収集は順調に行われた。ところで、ジローとミスズに助けられてから、カメオはますますジロー達に傾倒したらしく、情報収集についても自ら申し出てジロー達を援助した。その後もジロー達にあれこれ世話を焼くうち、すっかりジローを気に入ってしまった。心酔したと言ってもいいだろう。
 しかし、今回イオの商品を持って帰れば大儲けは間違いなく、カメオはイオに残りたいという気持ちと、商売人としての矜持が葛藤した。最後は商売人としての欲が勝ったと見えて、結局はテルパに戻ることにした。
 そして、カメオは、ジロー達への置き土産として大量の資金を渡し、テルパに泣く泣く戻って行き、ジロー達もイオから次の町へと移って行った。エルメス鉱山のベースであるルメス、首都ジンの衛星都市インカルと拠点を移し、調査を進めていく。
 しかし、インカルに入って直ぐに難題に直面した。ウエストゴールドの首都ジンにおいて、選民が行われていたため、ジロー達のような旅人では入ることが出来ないのだ。
「ジンには余所者は入れないということ?」
「はい。インカルまでは問題ないのですが、首都ジンについては、ウエストゴールドの国民でも選ばれた人だけしか入れないようです。入れるのは、ジンで審査を受けて発行された、許可証を持った者だけです」
 ミスズの報告に一同は耳を傾けていた。今回の一連の調査の中で、情報の分析についてはミスズが一番向いているということがわかってきた。
「出入りのときの持ち物検査も、相当厳しくチェックされているみたいだよ」
 アイラが続ける。元猟師だったせいか、市井の雑踏に紛れても違和感がないという利点を最大限に利用して、情報収集の要として働いている。
「社交界でも、ジンに入れる資格を持っているかどうかで格の違いがあるようです。でも、不思議なのですが、その資格はその人の人格に釣り合っていないように感じます」
 ルナは、ノースフロウ王女、それも世間では死んだものとされている、という正体を連想されることがないように振舞っていた。その仕草も相当板に付いてきたのか、ノースフロウの商人であるカメオと同道している最中でも、一切疑われることはなかった。
正体がばれないことに自信をつけたルナは、インカル市街の高級商店に出入りしていた。元々一国の王女であるルナの気品は、成り上がり貴族では太刀打ちできないオーラをまとっているので、その系から情報収集には適任であった。
ユキナは、高級店に来る様な婦人は従者を連れているのが一般的だということもあり、ルナの護衛として一緒に行動していた。巷では、銀色の髪の従者を連れたブロンドの淑女がインカルに来ている、彼女は地方の伯爵の娘で社交界の勉強をしに来たらしいという噂が出始めていた。
最後に、ジローはイオと同様に娼館通い。但し、ここでは女性を同道できる店は無いようで、ジローが1人で探りを入れていた。但し、1人の娼婦から情報を引き出すのに早くて2日、遅いと4日程通い詰める必要があり、なかなか必要な情報が得られていないという現状があった。
「わかった。じゃあ、もう一度整理しよう。ミスズ、ジンがこうなったのはいつ頃からだ?」
「はい。一年ほど前からと聞いています」
「そうか。それまでは普段どおりだったが、突然選民を始めたということか」
「金星宮からお触れが出て、今後商業や貿易などの市井のものは、全てインカルで執り行う様にと」
「で、ジンでは何をしているんだ」
「政務に専念するとしか。とりあえず混乱は起きていないようですが、様子がわかりません」
「うん・・・、ちょっと異常だな・・・。外交使節は来ているのか?」
「いいえ。マーサ姫が来て以来、誰も来ていません」
「帝国からもか?婚約中の娘を預けて、その後何も連絡なしか?確かマーサ姫が16才になったら結婚式を挙げるんだよな。その調整やら何やらやることはたくさんあるんじゃないか?」
 ジローはルナを見た。
「ルナ。テセウスがナージャ妃をもらったときはどうだった?」
「・・・3年前ですが、あの時は、兄と義姉の結婚式の準備のために、帝国から頻繁に使者がやってきて、賑やかだったのを覚えています」
「となると、数ヵ月後に結婚を控えて、この状況は異常だな」
「ええ、そう思います」
 ジローは腕組みして思案を巡らせた。
「1年間外交行事を一切断って、内に閉じこもって何をしている。金星宮にいる人々全てが、内政に励む理由があるとでもいうのか・・・。ん?まてよ・・・。金星宮に王城に軍隊、それだけ多くの人数がいるとなると・・・。アイラ、城の人達は頻繁に出入りしているのか?全員がという意味で」
「そうね・・・、市街の人達は出入りしているみたいよ。でも、全員となると・・・。王宮の関係者や、兵士達がインカルに来ているという話は聞かなかったわ」
「じゃあ、城内の人達の生活物資はどうしているんだ?」
「市街に住んでいる人達は、インカルにも買出しに来ているみたい。でも、他の人達は、どうだろう・・・、わからないわ。酒場のマスターの話じゃ、ジンの中に大きな市場があるから、そこで調達しているんじゃないかって」
「市場があっても、そこに物資が供給されないといけないんじゃ・・・」
「ユキナの言うとおりだ。そのルートについて調べてくれないか」
「うん。わかった。任せてといて」
 アイラはウインクした。
「ルナ。社交界で選民された中で、不釣合いな人もいると言っていたな・・・」
「はい。選民の基準がどういうものかはわからないのですが、選民されている人達の中には、明らかに社交界からつま弾きされていて、裏の噂が聞こえてくるような方がいるそうです。その反面、選ばれて当然の方々が、未だにジンに足を踏み入れられないということもあるそうです」
「その不釣合いな連中は、誰だかわかっているか?」
 ミスズがすかさず答えた。
「はい。以前から金星宮の御用商人の座を狙っていたオルトロス。商人というのは名前だけで、実際は金貸しだそうです」
「それも悪徳ね。噂はあちこちで聞いたわ」
 アイラが付け加えた。
「それとは逆に、人品つつがなく、大商人と言っても過言がないマイアーには、ジンに入る許可を与えられていません」
「きれいな商売をするって、凄く評判がいいのにね」
「武器商人のヤザンもかなり悪辣なことをやっているみたいです。でも、選民されています。そのことを鼻にかけて、のさばっているそうです」
 ユキナも続けた。
「社交界ではないですが、モスローズという占い師も選民されています」
「噂じゃ、魔女だって」
 ミスズに続いてアイラが発言した。
「うん・・・。こうやって名前を挙げていくと、胡散臭い奴らが結構選ばれているみたいだな。ルナの言うとおり、選民の基準がおかしい」
「まるで、逆よね」
「ああ・・・。いや、待てよ。アイラの言ったことが真実だとすれば・・・」
「私もそう思っていました。ウエストゴールドの首都ジンは、悪意を持った人達のみに開放されている可能性があります。しかし、何故か、誰がやっているのかは分かりません」
 ミスズが淡々と告げた。が、ジローには何故か、心に引っかかるものを感じていた。
「一年前、一年前か・・・。それまで何もなかったのに起きた急激な変化。なにかのきっかけが・・・。ミスズ、ラバルム王子とマーサ姫が婚約したのは、その半年前だったな」
「はい。マーサ姫が行儀見習いとしてジンに来たのは、婚約から2月後です」
「その後外交使節は訪れず、新しく採用された大臣や側近なんて話もない」
 アイラが頷いた。
「となると、マーサ姫の一行に何かの原因があるのか?・・・う〜む」
 しかし、確証があるわけではなく、ジロー達の議論もここまでであった。

 王宮金星宮奥の院、銀糸殿。
 王族が生活するその一郭は、王族に連なる者のみが出入りを許される場所でもある。警護の兵士にしても然りで、全てが王族の関係者で占められていた。その銀糸殿の一番奥、女王レシュカの寝室がある奥部屋に淫声がこだましていた。
「うっ、うっ、うぅぅ、あっ、あっ、あっ、あぁぁぁぁぁ、い、い、いくぅぅぅぅ・・・」
 豪華な絨毯の上で、絶頂に駆け上ったのは王女レナリアであった。もう、何度も高みに登り詰めた挙句、目は視点が定まらずに虚ろに彷徨って、口元は緩んで涎を垂らしていた。快楽にどっぷりと嵌まり込んだ姿態は、朱に染り、両の乳首に填められた金色のピアスにつけられた宝石が、時折光を反射しては輝いていた。
 乳首のピアスには、両方の乳首を渡すように金の鎖が繋がれ、その中央から臍のピアスを通して、真下にもう一本の鎖が渡されていた。そしてその先は、レナリアの一番敏感な花芯の膨らみを貫いているピアスに繋がっていた。
 クリトリスの下にある膣口は、朝からずっと肉棒を飲み込んでいたせいで、おしっこを漏らしたようにずぶ濡れになっていた。既に夕闇が迫る時刻になっていたが、膣内に何も入っていない時間は、相手を変更する僅かな間のみ。今、レナリアに入っている肉棒が、いったい何本目なのかわからなくなっていた。だが、そんなことはどうでもよかった。ただひたすら、レナリアは自らを侵している快楽の虜となって、腰を振り続けるのみ。
 今、レナリアを犯しているのは、宮中大夫のルクレイン公爵であった。女王レシュカの父の弟、即ち叔父にあたり齢60は超えている。しかし、ルクレインの肉棒は、20代の若者のように屹立し、レナリアを貪っていた。ルクレインは白髪に珠の汗を浮かべ、何十年か振りの快楽に酔っている。その顔は、恍惚にも似て、いつもの知的な紳士の表情とはかけ離れたものであった。
「はぁ、うっ、うぅぅぅ・・・」
 レナリアがまた達した。同時にルクレインも3回目の射精を迎えた。そして、そのまま土気色の顔をしたまま動かなくなった。心臓発作だった。宮中の大物が帰らぬ人となったのである。
「さあ、お義姉様。次はあの方ですよ」
 金色の髪と灰色の瞳の少女が促すと、レナリアはのろのろとルクレインから降りて、少女が促した先にいる近衛兵士に近寄った。そして、兵士のズボンを外して、股間にむしゃぶりつく。乳首とクリトリスに繋がれた鎖がじゃらじゃら音をたて、欲望に火がついた兵士の肉棒が天を向いて屹立する。レナリアは、物欲しげに舌なめずりをすると、兵士の身体を這い上がり、自分の体内に飲み込む。
「ふふふ。レナリアがやっといい子になりました。よかったわ」
 ベッドの上から裸の女性がそう言った。彼女の乳首にもレナリアと同様にピアスと鎖がつけられていた。その大振りな乳房を男の手が乱暴に揉みしだく。女性は優しい目をしてその手を見つめた。
「もう。ラバルムったら、いつまでも甘えん坊さんなんだから・・・。貴方は立派な婚約者がいるのよ。それなのに母のおっぱいが恋しいなんて・・・。あ、あん・・・」
 後ろから抱きしめるように、ラバルム王子の肉棒が女王レシュカを貫いていた。二人とも禁断の快楽に酔いしれ、互いの性器から流れ込んでくる感覚の虜になっていた。ラバルムはもう既に、何回レシュカの中に発射したのか覚えていなかった。
「お義母様。いかがですか、私の良人の味は」
 少女の問いに、レシュカはすぐに答えた。
「ああ、マーサ。貴方の良人は最高よ・・・」
「そうですか。では、たっぷりと堪能してくださいませ」
 マーサはレシュカににっこりと微笑むと、再びレナリアの方を向いた。マーサもまた身に一糸纏わない姿である。あと半年で16才の誕生日を迎える筈だが、発育は10代前半程度で、乳は僅かに膨らみを主張し、尻も発育途上。いや、もしかしたらもう成長は止まってしまったのかもしれない。しかし、その美しい肌にはひとつだけ少女には似つかないものがあった。陰毛も生えていない少女の下腹部から上にタトゥーが刻まれていたのである。それは丁度子宮の真上当りに広がる黒い模様で、全体像は炎の形をしていた。
 だが、室内には誰もマーサのタトゥーを変に思うものはいなかった。むしろ、初めからそこにあるのが当然とばかりに、全てを受け入れていた。
 マーサは、レナリアが降りたばかりのルクレインの死体に近寄った。射精の最中に心臓が止まったため、その屹立は剛直したままであった。
「うふふ・・・。ルクレイン。貴方にもう一度使命を上げますわ」
 マーサはそうつぶやき、自分の髪を2本抜き、手に持ったまま軽く息を吹きかけた。すると、柔らかかった髪が2本の針のように硬直した。それをマーサはためらいなくルクレインの額の中央と心臓の真上に刺した。針となった金色の髪は、さして力も入れていない筈だか、見る見る間にルクレインの体内に飲み込まれて、消えた。
「さあ、目を覚ましなさい」
 マーサの呼びかけに、ルクレインは目を開いた。眼の光が一瞬赤い輝きを発し、元に戻る。ルクレインは立ち上がって無言でマーサを見つめた。その額には先ほどまではなかった菱形の宝石が埋め込まれていた。無色透明で、レナリアとレシュカの乳首を飾っているピアスと同じものであった。
「ルクレイン。貴方は元の仕事に戻ってください。但し、銀糸殿に入る人は私が選びます。禁を破るものがいれば殺しなさい」
「はい。仰せのままに」
 ルクレインは短く言うと、一礼して部屋を出て行った。マーサは満足そうに振りかえると、もう直ぐ正式な良人となるラバルムを見た。
「ラバルム様。そろそろ私を抱いてくださいませ」
 ラバルムは頷くとレシュカとの結合を解き、マーサの元に歩む。ラバルムの肉棒は天を衝くように剛直していた。
「ああ、ラバルム様・・・」
 ラバルムの肉棒をその身体に難なく受入れ、駅弁スタイルで抱かれながら、マーサは一時の快楽に身を投じた。

 インカルに滞在して半月が経っていた。相変わらずジンに入ることは叶わず、情報収集もジリ貧化してはいたが、若干の変化はあった。
 ひとつは、リガネスのマクウェルから連絡があり、久々に玄武地方の様子がわかったこと。もうひとつは、大地の神殿に王族の誰かがいるらしいという情報を掴んだことである。
 マクウェルは、テルパとイオの間の山道が通れるようになったということで直ぐに行動を起こしたらしく、既にイオとルメスに諜報員を送り込み、インカルにも拠点を作ったらしい。先ほどまでインカルに送り込まれた諜報員がそう言っていた。
 情報では、玄武地方は驚くほど静かだということが伝えられた。というのも、ノースフロウの新王テセウスは、王妃ナージャを伴って帝都ノームに出かけているらしく、残された王子アポロンを支えながら、バスク公ボルトン公爵が代理で政務を行っている。そのボルトンの得意分野は内政であり、外務に関しては守りに入っているようなのだ。
 マクウェルから追加の情報として、帝都ノームにゼノン皇帝の娘達が集結しているというものもあった。かくいうウエストゴールドからも、ラバルム王子とマーサ姫が、10日程前に出立していた。
 そして、もう一つの情報は、アイラが偶然掴んできたものだった。それは、いつものとおり情報収集を兼ねて裏通りをぶらついているときに、ふと耳に止まった会話から始まった。会話をしていたのは、レナリアの取り巻きの一人だったが、レイリアの妊娠事件に連座して罰を受け、しばらく町を離れていた男だった。最近のジンの様子を聞いて、好奇心から舞い戻ったらしい。どうやら相手のひげ男に、仕事か何かをもらおうとしていたようだった。ひげ男は娼館の関係者らしく、男は有名なお姫様の調教師の助手をしていたことをアピールして仕事にありつこうとしているようだったが、その途中で『レイリア姫』という言葉がぽろっと出たのをアイラは聞き逃さなかったというのだ。
「裏家業の間じゃ、さる高貴な姫様が性奴の調教を受けて、レナリア姫の信任を得て仕事を成し遂げた者に、一晩の褒美として与えられるという噂が流れていたそうよ」
「ああ、その話なら俺も聞いたことがある」
 ジローが相づちをうった。
「でね、その高貴な姫様というのが、レイリア姫だなんていう尾ひれもついていたりしたのよ。まあ、それも1年以上前の話なので単なる作り話とでも思っていたんだけど、ちょっと気になったから後をつけて見たの・・・」
 アイラはそう言って、ひげ男と別れた後に男を何気なく尾行し、偶然を装って男と接触したこと告げた。
「男を酒場に連れて行って、しこたま飲ませたのよ。どうやら貧乏だったらしくて、酒にありついたのは久しぶりだと言っていたわ。べろべろに酔わせて、そいつが何をしてきたのか話させたら・・・」
 アイラの話によると、男は久々に心行くまで酒を飲み、酔った勢いで何でも話したらしい。そして、ガセネタだと思っていたレイリア姫の調教が本当にあり、それを命じたのは姉のレナリアだったこと、レイリアが妊娠したため事がばれてレナリアは謹慎、調教師は去勢されて投獄され、男は危険を察して逃げ出したが、ほとぼりが冷めて舞い戻ってきたことなどが、男から聞いた話であった。
「インカルから逃げ出したそいつは、名前を変えて大地の神殿にもぐりこんでいたそうよ。そこで雑務員として息を潜めて過ごしていたみたい。でも・・・」
 男はある日、神殿に来訪者、それも相当高貴な人らしい、が来たのを見た。どうやらそのまま神殿に逗留することになったらしい。ちらりと見た後ろ姿と肩先まで伸ばした鮮やかな金色の髪が忘れられず、どうしても顔を見たくなってその機会をうかがっていたが、半年ほどたってようやくそのチャンスが訪れたという。
「で、その高貴な人というのが、レイリア姫というわけか」
 アイラが軽く頷くのを見ると、ジローは少し考え込んだ。そして、おもむろに言った。
「なあ、みんな。大地の神殿に行ってみないか」

 大地の神殿は、白虎地方の北東、巨大なトラスト山脈の麓に鎮座している。トラスト山脈は鉱物資源が豊富なことで知られており、ここで取れる鉱物がウエストゴールド王家の経済基盤を安定させてきた。山裾には幾つもの坑道が掘られ、未だに底が見えない鉱物資源の算出が行なわれている。
 また、山脈の岩盤は固く、険しいことでも有名であり、麓とはいえ神殿のある場所に行くのは相当の労力を必要とした。麓から神殿への道は1本しかなく、一応整地されているものの、行き交う人はまばら。時折神殿への食料品や雑貨を運ぶ商人の荷馬車が通り過ぎるくらいであった。
 その一本道の終点に石造りの神殿があった。長い月日を経ている筈だが、石壁は作られたばかりのように黒曜石の光沢を持ち、風化の影響は探すだけ無駄と言えた。
「水の神殿と同じで、魔法の力が使われているのですね」
 ルナが感心するように言った。ジロー自身も同感で、あらためて魔法という力の偉大さに敬服していた。
「大地の神殿は、ウエストゴールド家の聖地となっています。一般の巡礼者には、神殿の門の前から祈りを捧げることは許されていますが、中には入れません。聖職者が、使用人として奉職したいということなら入れるそうですけど・・・」
 情報通となったミスズの説明に感心しながら、ジロー達一行は神殿の門前町に宿を取った。まずは、巡礼に来たなりをして、情報を集めることにする。
 町はそれほど大きくはなく、情報が集まるまでにそれほどはかからなかった。そして、以外にもその中には、入れない筈の神殿に入る方法が含まれていた。
 大地の神殿に入る方法は、案外簡単だった。月に一度、新月の夜に巡礼者の中で選ばれたものが神殿内に入れるというのだ。選ばれる基準は若いこと。男女は問わないということなので、5人全員共資格がある。
 新月の日は明日。神殿に入ることに躊躇はなかった。
 ジロー達は他の巡礼者と共に、神殿の正門の前で待っていた。黒曜石を組み合わせて作られた大地の神殿の門もまた、巨大な一枚岩でてきていた。岩の両側に鎖が付いていて、その鎖は大きな滑車に巻き付き、滑車を回す歯車を廻すと、鎖がゆっくりと緩んで巨石の門扉が下に倒れる仕組みである。
 今、門はゆっくりと開きつつあった。その光景を20人程の巡礼者達が、固唾を飲んで見つめている。巡礼者達にとっては、初めて神殿の中に入れるという期待が心中を支配しているのか、誰も無駄口を叩かず、ただ扉が開く姿を見つめていた。
 扉が開くと、神殿の中から司祭が出てきた。そして、歓迎するというような言葉を巡礼者達にかけると、自分たちの後に付いて来るようにと招き入れた。
 神殿の中は、外見の黒曜石とは正反対の磨かれた石英の白壁を基調とし、乳白色の大理石の床が荘厳な雰囲気を醸し出していた。新月の夜で外からの明かりは期待できないが、壁自体が薄黄色く輝いていて、十分な明かりが確保されていた。
 ジローは、他の巡礼者と共に神殿に入り、司祭の後に付いて行った。が、途中で違和感を感じて歩みを止めた。つられて愛嬢達も立ち止まる。ジローはすぐに、ルナに向かって言った。
「ルナ。神殿の司祭というのは、心を読めなくする特別な訓練を積んでいるのか?」
「いいえ。そんなことは・・・。聖職者の中には神聖魔法を使う方もいらっしゃるとは聞いたことがありますが・・・」
「そうか。前に歩いているあの司祭、『気』が感じられないのだが、ルナはどうだ」
「感じることは出来ますが、いつもより弱いというか・・・、この神殿に入ってから靄がかかったような感じがします」
「で、あの司祭の『気』はどんな感じだ?」
「ええ・・・。精気がないというか、生きているような感じがしないのですが、ただ・・・、性欲だけが感じられます」
 ルナはそういいながら顔を赤らめた。そういえば何だか、身体がむずむずするような感覚が目覚めつつある。
「ジロー。私、濡れてきちゃった・・・」
 アイラがボソッと言った。ジローが見ると、ミスズとユキナも股を閉じてもじもじしている。そしてジロー自身も勃起していた。
 神殿の中はいつのまにか白い靄のようなものに覆われていた。と、立ち止まっていたジロー達の耳に神殿の奥の方から声が響いてくる。その声は嬌声にも似た、人と人が交わるときの喘ぎ声のようだった。
 ルナとアイラがジローにもたれかかる。ジローもまた石の壁に身体を預け、自分の頭の中を支配しつつある呪縛と闘っていた。
<犯セ・・・、犯セ・・・、犯セ・・・>
 アイラが身体を横からジローの腰に密着させ、自分の性器をこすり始める。ルナも同様に反対側から・・・。その間にジローの頭の響きは大きくなってくる。
<犯セ、犯シテスベテヲ忘レテシマエ・・・、快楽ニ身ヲマカセルノダ・・・>
「くっ、ま、まともじゃない・・・。ミ、ミスズ」
 ジローはミスズを呼んだ。ミスズはユキナに纏わりつかれていた。両の乳房をユキナの手が揉みしだいている。感じているのか赤い顔をしていた。だが、ジローに呼ばれているのに気付くと、よろよろとジローの元に近寄って来た。ジローはミスズを抱き寄せて、背中に手を廻す。その手が玄武坤に触れた途端、頭に響いていた声が薄れていくのがわかった。少なくとも耐えられるレベルまで軽減された感じがする。
「ミスズ。玄武坤を構えるんだ」
 ジローの言葉に、しかし一足遅く、ミスズは上気した顔で虚ろな目でジローを見つめることしか出来なかった。
<ああ、き、気持ちいぃぃぃぃ・・・>
 ジローに抱きしめられた瞬間、ミスズはいってしまったのである。股の付け根は洪水のようになり、下着を染み出した汁が太腿を伝って流れていくのがわかるほどだった。ジローが見回すと、ルナ、アイラ、ユキナも足首まで愛液を垂らしていた。
<こうなったら・・・>
 ジローはミスズの背中の玄武坤を持ったまま、片手でズボンと下着を脱いだ。はち切れんばかりに膨らんだ怒張が天を衝いて存在感を主張した。
「さあ、ミスズ。乗るんだ」
 ミスズは焦点の定まらない目をしていたが、ジローの怒張だけはわかるらしく、ぐちょぐちょに濡れて役に立たない下着を脱ぎ捨て、ジロー身体を這い上がった。そして、ジローの肉棒を自分の性器にあてると、一気に腰を落として飲み込んでいった。
「あ、あぁぁぁぁぁぁ・・・」
 今まで感じたことのない快感がミスズの中を駆け巡った。ジローの肉棒が膣口に触れた瞬間、最初の絶頂が駆け抜け、肉棒がずぶずぶと膣の中に進んでいる間、ずっといきっぱなしだった。自分が自分でないような、快楽の嵐が身も心も溶かしつくして、全てを捨てて浸っていたい欲望がふつふつと湧いてきた。
 声にならない喘ぎ声は、ルナ、アイラ、ユキナの心にも快楽に浸りたい気持ちを拡大して行った。3人共淫欲に囚われた目をしてジローとミスズを見つめている。
 ジローもまた、ミスズの膣から快感を得ていた。膣内の肉壁という肉壁がぬめぬめと独立した生き物のように動き、絡みつき、締め付け、これでもかというくらいに肉棒を刺激した。さすがのジローも我慢できずに、射精まであと僅か。
<な、何て気持ちいいんだ・・・。もう、いきそう、・・・だがその前に>
 ジローは最大限の意思をふりしぼって、ミスズの玄武坤を背中から外すと両手に握り締め、ミスズの両手がジローの首に回っていて落ちないことを確かめた上で、両手を大の字に開いた。
「よし、ミスズ。いくぞ!」
 ジローが射精した瞬間、きーんという音が玄武坤から発せられ、ミスズの全身を光が包みこむ。ミスズは絶頂を極めて顔をジローの胸にうずめていたが、光に包まれたときに、快感以外の暖かいものが流れ込んできた。
<え、あ、あたし・・・>
 ミスズは顔を起こす。そこには優しい目をしたジローの顔があった。
「おかえり・・・」
「あ・・・、た、ただいま」

 正気に戻ったミスズがジローから降り、ルナ、アイラ、ユキナの順で次々同様にジローと交わっては自分を取り戻したとき、辺りは静まり返っていた。先ほどまで聞こえていた嬌声はいつの間にか聞こえなくなり、気がつけば神殿のなかに漂っていた白い靄も晴れ、代わりに薄明るい光が室内を満たしていた。
「ねえ。朝日が昇っているみたいよ」
 アイラが部屋の窓から外を眺めながら言った。
 ジロー達は、あらためて自分達が今いる神殿の中を見回した。彼らがいる室内は、磨かれた白色石英の石壁が光っており、調度品も適度なものが揃っていた。どうやら神殿の司祭たちの休憩室らしい。しかし、どうしたことか、使われている形跡が皆無だった。いくら魔法で綺麗に保たれているといっても、人が使っていれば本棚の本や戸棚のカップの並び方が雑然としていてもおかしくない。なのに、整然と並べられていることに違和感を覚えた。
 部屋から出て廊下に来たが、門扉から一本道の廊下には誰もいない。塵一つない大理石の廊下が冷たく奥への道を形成しているだけである。
「誰もいないですね・・・」
 ユキナがつぶやいた。
「ルナちゃん。何か感じる?」
「いいえ・・・」
 アイラの問いかけに、ルナはかぶりを振った。
「奥にいってみましょうか」
 ジローはミスズの意見に頷き、廊下を奥に進んだ。人気のない廊下を奥へ奥へと進む。途中、部屋を見つけては中を確認するが、やはり誰もいないし、いた痕跡もない。
 廊下は突き当たりで止まっていた。扉があるが、封印の扉らしく通常の手段では開かない。
「ジロー。やっぱりここに書いてあるよ」
 ジロー以外で唯一日本語が読めるアイラが字を読む。予想通り封印の扉の開け方を書いてあり、その方法は水の神殿のときと同じだった。ただ一つだけ、ディルドウの数が1本増えて4本になっている。そして、愛嬢達の数も4人。運命を感じざるをえない一行だった。
 ジロー達はディルドウがある部屋に入り、さっそくセックスを始めた。とはいっても毎日やっていることの延長線なので、彼らにとっては楽しみ以外の何ものでもなかったが。ディルドウについても、ユキナ以外の3人は経験済みであり、先輩としてアイラから先に始めることで、ユキナもすんなり受け入れることが出来た。
 そして、4本目のディルドウがルナの膣に刺さった時、部屋の中が一瞬光に満たされディルドウは愛嬢達の中に消えた。
 既に陽は傾きかけていた。
 ジロー達は廊下の奥に立っていた。元々あった封印の扉は目の前になく、代わりに右手に上に昇る階段が出現していた。躊躇なく階段を登る。以外に長かったが、どうやら塔のてっぺんに進んでいるらしく、途中から螺旋階段となった末に扉が見えた。
「よし、行こう」
 ジローは扉を開けた。窓のない暗い小部屋の中央に黄色い光を発するものが置かれている。近寄ってみると、5つの宝石が埋め込まれた腕輪だった。宝石からは暖かい黄色い光が漏れている。
 ジローは手を伸ばして、腕輪を取った。途端、辺りを白と黄色の混じった靄が覆う。
<水の神殿の時と同じだ・・・>
 あの時はウンディーネが出てきた。今回もかと期待が膨らむジローだった。そして、予想通り、腕輪の光の中から何かが飛び出し、それが人の形を成していった。
「きゃは。あたしは、大地の精霊ノームで〜す。え〜っと、私がここにいるってことは・・・あは。呼び出してくれたんですね。それじゃ、これからご主人様に契約の儀式を始めたいと思いま〜す。よろしいですかぁ?」
 ジローはノームの態度に若干調子が狂いながらも、ノームを抱き寄せ、いやノーム自らが飛び込んで、腰を抱き、口付けを交わした。精霊にもいろいろいるんだなあと、内心思いながら。しかし、精霊との交わりという行為自体がジローを興奮させていたのか、精霊自体の力なのかはわからないが、ジローは下半身にどんどん血が流れて、肉棒が滾って行く感じがありありとしていた。
「あぁん、とっても立派ですぅ。それじゃ、ご主人様のおちんちん、いただきま〜す」
 と言ってジローに跨り、結合する。ジローの記憶では立っていた筈だか、ノームは全く気にせずに騎乗位の体制で腰をふる。ウンディーネと比べるとひとまわり小柄だが、その分胸とお尻の膨らみは十分に主張していた。その乳がノームの動きに合わせて跳ね回っている。ジローは、その様相を見ながら、まるで無重力のような感覚で、ただ股間に溢れる快楽に身を任せるしかなかった。
「あぁ、い、いぃですぅ・・・。何て、凄いいぃ・・・、ご、ご主人様のおちんちんが奥まで当たってますぅ・・・。あ、あぁん、あ、あ、あぁん・・・」
 ノームの腰の動きが早くなる。
「あ、はぁ、あは・・・、い、いぃぃですぅぅぅぅぅ・・・、ご主人様ぁ、も、もぅ、い、いきそうですうぅぅぅ・・・。は、早く、あたしに、け、契約の証を・・・、く、くぅださぁぁいぃぃ・・・」
「い、いくぞぅぅ・・・」
「は、はぃぃぃぃぃ・・・」
 ジローは射精した。同時に当りが黄色く染まり、ノームが人型を解放してジローの肌から吸い込まれるように消えた。
<とっても良かったですぅ・・・。ご主人様>


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