ドレアム戦記

第一編 玄白胎動編 第12話

 闇。
 その空間を表現するのに一番相応しい言葉であった。ただ何も視覚することが出来ない漆黒の空間の中、気配のみがあった。
「漆黒の炎、黒炎よ、来たれ」
 しわがれた静かな声が響き渡った直後、闇の中に幾つもの炎が灯った。だが、その炎は地上の燃えるような赤でも澄んだ輝きを持つ青白色でもなく、禍々しい『気』を放つ黒い炎だった。
 そんな黒い炎でも、闇よりは明るいらしい。空間全体が視認出来る程度に照らし出された。そこは、古びた石造りの壁と天井がごつごつとしていた。壁のあちこちには何かの偶像を模った石像や彫刻が施され、異教の神殿のような妖しげな雰囲気が全体を包んでいた。
 床面は魔法が施されているのか綺麗な磨かれた平面であり、その中央には5芒星を形どった魔方陣が描かれていた。そして、それぞれの頂点には、黒いフードを纏った人の姿が2人ずつ存在していた。
 5芒星の頂点、神殿の奥の位置にいる人物がしわがれた声で呪文を唱え始め、フードを脱ぐ。そこには病的に痩せこけた裸の老人の姿があった。ただ、老人には似遣わさない、股間の一物だけが青年の屹立を保っている。老人の後を追うように、残りの9人もフードを脱ぐ。4人の男、5人の女、全員が裸だった。それぞれの頂点に男女一人ずつ。男達は老人、中年、壮年、青年、少年とそれぞれだが、一つだけ共通点、滾って屹立した肉棒が異様に映っていた。
 その肉棒を愛おしむように愛撫する女たち。老人の呪文が進められる中、老人以外の男と、老人とペアになっている美女が魔方陣の中央に頭を向けるように横たわった。そして、その上から残りのもの達が腰を落とす。5組の膣と肉棒が一体となった。
 呪文はますます進み、老人の声はいまや神殿の中に反響し、その響きだけが当りを埋め尽くしていた。その中で、上に乗っていた女性と老人が、相方の胸、丁度心臓の真上に手を置いた。その手が暗く輝き、その光が腕を昇っていく。そして、それぞれの身体に描かれている黒炎のタトゥに達すると、そのタトゥが本当の炎のように蠢いた。老人は喉、女性達は胸、額、背中、下腹部、それぞれの場所で黒い炎が燃える。
 老人の呪文は続いていた。
 5人の身体に灯された黒炎は、さらに勢いを増す。同時に5人の相方の男女にも全く同じ場所に黒炎が灯される。今や10個の黒炎が響き渡る呪文に呼応するかのように燃え盛っていく。
ブゥウォォォォォォン・・・。
 神殿内に呪文以外の音が響き渡った。その音は呪文の声を掻き消し、音圧が振動と共に身体を突き抜けた。
 神殿の床が中央から闇に喰われていく。それは半球状に広がり、魔方陣を食い尽くして行く。そして、10人の男女もその中に飲まれていった。

 朱雀地方の首都、サラマンダー。
 元々サウスヒート王家が治めていたこの地は、王家の没落により群雄割拠の乱世となった。しかし、それを武力で治めたのは群雄の誰かではなく、中原の若き英雄、セントアース皇太子ハデスであった。
 ハデスによる統治から三年、朱雀地方では平穏な日々が戻ってきていた。最初は抵抗していた諸侯も、ハデスの方針である、抵抗するものは一族皆殺し、降伏するものは実力主義で適材適所にという一貫とした姿勢に恐怖と畏敬の念を抱き、ついには折れて、下った。
その過程で、サウスヒート最大の領地を持ったアラミス公、最初はハデスに協力したが、やがてハデスを傀儡にして統治者の地位を狙ったブルア侯、サウスヒート最大の軍備を持って武力で対抗しようとしたナイジェル男爵という、今後の統治の支えになるだろう有力な3家を滅ぼさなければならなかった。が、ハデスとしては冷静に受け止め、忠誠を誓った残りの諸侯を使って統治の質を上げていった。
 サラマンダー郊外には、小さな教会がある。
 森の奥で、既に主は戦乱のために逃げ去り、人気のない建物であったが、手入れがよかったのか、内装は直ぐにでも教会として使えそうなくらいの状態であった。
 ハデスは、一人で教会の中で待っていた。
 暫くすると、奥で扉の開いた音が聞こえ、こちらに歩む足音が響いてきた。そして、ハデスのいる部屋の扉が開く。
「兄上。お久しぶりです」
 目の前には、ハデスの容姿とそっくりな女性の姿があった。ハデスの双子の妹、ヘラである。
「よくきたな。父上は健在か」
 ヘラは、嬉しそうにハデスの元に歩み寄ると、抱きついてディープキスを交わした。ハデスがサウスヒートに出征して以来、会っていない日々を埋めるように。ハデスも同様に愛する妹の唇を心いくまで堪能した。
 そして、互いの欲望の赴くまま、二人は結ばれ、愛欲を貪りあった。
「兄上・・・。ありがとうございました」
 ハデスとヘラは裸で抱き合いながら会話を交わした。互いの性器は結合したままで、2回爆ぜた精液が隙間なく塞がれた膣口から漏れることなく膣内と子宮をぱんぱんに満たしていた。
まるで、生まれた時から一つであったものが二つに切り裂かれており、それが再び一つに融合したような感覚に包まれ、幸福感が全身を満たしている。
「それで、父上は復活したのか?」
「はい。転生の儀式は成功しました。お父様の身体と魔人が融合し、互いの身体と精神を共有する魔人皇帝として復活なさいました」
「そうか、では、いよいよこの世界を統一するのだな」
「はい。魔界の力を使って、全世界を治めるとおっしゃいました」
「うむ。人間の父上では、セントアースで充分と勝手に限界を決められていたからな。しかし、老いに対する恐怖が思わぬ結果を生んだものだ」
「兄上。お父様はそんな兄上のお力を高く買っておいでです。仮に、お父様に何かがあっても、兄上がその偉業を継いでくれることをお望みです・・・」
「是非もない。この地上の支配こそ、我が望み。父上の偉業に全力を尽くそう」
 瞬間、ヘラの内部の肉棒が今まで以上に滾った。ヘラから思わず快感の嗚咽がもれる。
「あ、あぁん。あ、兄上様・・・、素敵、です。あ・・・、はぁ、お、お父様か、ら、兄上に、あ、会わせたいと・・・」
 ヘラは息も絶え絶えにそう云うと、いきなり来た絶頂に声を荒げて失神した。

 短い逢瀬を終え、ヘラとハデスは再会を約して別れた。互いの役割を果たすために。別れる前に、ヘラは自分の守護をしている魔人をハデスに紹介した。リッチと名乗った魔人は、ハデスに敬意を表し、ヘラと共に結界の中に消えていった。
 ハデスは帰路に着き、森の中を悠然と進んでいた。
 と、前方に1頭の馬がいた。ハデスの乗馬よりも2廻りほど大きな体躯と、生気に満ちた瞳、艶のある黒い毛並みの一本一本が輝くようだった。
<なんて素晴らしい・・・>
 次の瞬間、ハデスはこの馬を欲した。この馬が得られれば城の一つぐらいやってもいいと思うくらいに、熱烈な欲望が身体を駆け巡った。
 驚かせないように、ゆっくり近づくよう、自分の馬に命じた。馬は命に従い、ゆっくりと黒馬に近寄っていく。が、ある程度のところで黒馬がこちらを見た瞬間、びくっとして馬は前に進めなくなった。ハデスがどうしようと、硬直したようにピクリとも動かない。
 仕方なく、ハデスは馬から降り、黒馬まで20歩程の距離を歩むことにした。
ドサッ。
 物音に振り向くと、彼が乗っていた馬が倒れていた。口から泡を吹き、瀕死の状態で震えている。だが、ハデスはそれを一瞥するだけで、黒馬の方に一歩を踏みしていた。心が吸い寄せられるように黒馬に魅了されている。
 一歩、また一歩・・・。
 ハデスは黒馬に近づいていった。黒馬はというと、じいっとハデスを見つめてはいたが、逃げる様子もなくたたずんでいる。そうして、ハデスがたどり着いて、その手を身体に触れたとき、ハデスの廻りの景色が一変した。今までいたはずの森の中ではなく、赤と黒の入り混じった、空間の中に。
<ここは・・・>
 こんな状況でも殆ど動揺しないというのが、ハデスの胆気を物語っている。彼は、冷静に自分たち(ハデスと黒馬)が置かれた状況を観察した。そして、妖気は溢れているが、殺気はないことがわかると、空間から黒馬に意識を転じた。
「ふむ。合格だな・・・」
 突然、声がした。いや、声を出したものは黒馬だった。だが、ハデスは落ち着いていた。
「やはり、この空間を作ったのはお主か・・・」
 ハデスは黒馬を真直ぐ見据えた。と、黒馬の表情が嗤ったように見えた。
「さすがに魔人皇帝の皇太子と言ったところか。俺のパートナーに相応しい」
「ヘラが言っていた会わせたい者というのは、お主のことだな。お主、魔人か?」
「そうだ。俺の名は、ナイトメア。氷炎と悪夢を司る魔人。皇太子、俺と契約を交わすか否か」
「ふっ。是非もない・・・」
 ハデスは、ナイトメアを見つめた。そして、互いに頷く。それで充分だった。

 ドレアムの大地に闇の勢力が確実に根付き、その触手を大陸全体に広げようとしていた頃、まだ人々は何も知らずに日々の暮らしを過ごしていた。
 それは、大地の神殿にいるジロー達も一緒だった。まあ、彼と愛嬢達の場合は平凡という言葉は当てはまらなかったが。
 そして、大地の神殿で新たな花嫁、レイリアを得た。まあ、簡単ではなかったが。
悲嘆に暮れた一生をこのまま送ることが贖罪だと決め付けていたレイリアは、頑なに自分だけが人並みの幸福を得ることを拒んだ。神官達の恐れと蔑みの視線をこの先ずっと受け続けていくと知っていても、神殿の外に出ることはせず、自分の犯した罪に対してただ祈りを捧げる事のみで償おうとしていた。これに対し、ジロー達は神殿の外に連れ出すのが一番と考え、いろいろな手段で説得したが、総じて良い結果は得られなかった。故に、その日は最後の手段を使うと心に決めて、レイリアの部屋を訪れていた。
ジローは、いつもどおりに挨拶をすると、いつもとは違ってレイリアの正面に廻り込み、伏せ目がちなレイリアの顔を覗き込むように視線を合わせた。
ジロー達5人が何を言っても、感謝の言葉は出ても柔らかな拒絶の姿勢は崩れることがなかったレイリアだが、ジローに見つめられて、一瞬ぽうっとなった。ジローの特殊能力、『淫惑』の視線が発動したのである。
「レイリア、君を助けたい。どうすればいい」
 ジローの言葉がレイリアの心に沁みる。しかし、レイリアは首を横に振った。その瞳に涙を湛えながら。溢れた涙が一条、零れて頬をつたう。
レイリアの心に触れて、ルナももらい泣きする。ジローも切ない感情が溢れてくる。
「なぜだ」
 レイリアの肩を押さえていた両手を離した。そのままでは力が入り過ぎそうだったから。そして、膝の上で堅く握られたレイリアの両手を暖かく包むように握りなおす。
 レイリアは閉じていた目を開いた。悲しそうな、しかしその奥で欲情の炎を秘めた瞳がジローを見つめる。ジローの瞳の『淫惑』の力は相手が望んだときに発揮するもの、相手が好意を持っていなかったり、徹底的な拒絶を示した場合は効果が薄れてしまう。レイリアは、身体は欲情しても、心が贖罪を誓って頑なにジローを拒んでいるのだ。
「教えてくれ。なぜ、だめなんだ」
 ジローはもう一度問う。レイリアの口が微かに動く。
「・・・ているから」
「もう一度」
「け、穢れているから・・・。わ、私は罪を償わなければなりません」
 搾り出すように、微かな声でそれだけ言うと、ジローの手に包まれていた両手が更に堅く握られていた。
「わかった、それ以上言わなくていい」
 レイリアのこぶしの力が抜けた。その瞬間、ジローは彼女の両手をこじ開け、握られていた指を開いて自分の指をその間に絡ませた。
「えっ・・・」
 レイリアが驚きの声を上げて、ジローを見た。ジローは視線をそらし、アイラを見つめた。
「うん」
 アイラが力強く頷く。次にルナと視線を合わせる。
「お願いします」
 ルナは軽く会釈した。次はミスズ。
「はい」
 ミスズはにっこりと微笑む。最後にユキナ。
「あ、はい」
 と、少々顔を朱くしながら。
 ジローは愛嬢達の同意とその意思を確かめ、再びレイリアを見つめた。レイリアは、空気の流れを読めずに戸惑いの視線を泳がせていた。
「レイリア」
「はい・・・」
「お前は、俺の妻になるんだ。お前が罪を背負っているのだったらそれを俺と、俺の妻たちが一緒に背負おう」
 そう云うなりジローはレイリアの唇を奪う。レイリアは突然の事態に固まっていたが、長年の調教が染み付いた身体がジローの舌に反応し、ディープキスを難なく受け入れた。淫欲の火がレイリアに灯る。
 ジローは唇を離す。レイリアとの間に唾が糸をひく。と、そこにアイラが顔を割り込ませた。
「レイリア。アイラよ、これからはお姉さまと呼んでね」
 そして、ディープキス。
「ルナです。あらためてよろしくお願いしますわ。レイリア様」
「ミスズです。これからずっと、一緒に楽しみましょう」
「ユキナです。よろしくお願いします」
 それぞれが挨拶代わりのディープキスを終える頃には、レイリアのスイッチは完全に入っていた。
 ジローはレイリアの服を全て脱がせ、ベッドに運んだ。なすがままのレイリアはそのままジローと4人の愛嬢からの愛撫攻撃を受けることになる。
 そして半刻・・・。立場は逆転していた。
 レイリアの左側にはミスズが左手を抱くように位置し、左の乳房と乳首を攻めていた。右側はルナが担当している。だが、2人共攻めばかりに集中できていないようだった。というのもレイリアの指が、2人の膣内に侵入し、絶妙の刺激を与え続けていたからである。性奴隷として調教されたレイリアのテクニックは指一本から超絶であった。
「あっ、あっ、いいっ」
 レイリアの顔に自分の下腹部を乗せているのはアイラ。レイリアの舌技に翻弄されている。そして、ジローはレイリアの膣内に肉棒を深々と刺し、その結合部とクリトリスをユキナが舌で舐めていた。
 レイリアの膣は、それ自体が生き物のように蠢き、ジローの肉棒を包み込みながら、的確な刺激を与えてくる。レイリアとするのは初めてだったが、この刺激に虜になりそうになる。
<ぐっ、ま、まずい・・・、このままじゃ・・・>
 5対1なのだが、敗勢なのはジロー達。しかし、ここでジローは奥の手を使った。ウンディーネの召喚である。そして、ウンディーネに、レイリアを薄く包みながら、彼女の全ての性感帯を刺激することを命じた。
「はい、ご主人様」
 ウンディーネは薄い膜となってレイリアを包み込む。身体全体、口の中、肉棒の隙間を縫うように膣の中、アナルの中、尿道の中までも。そして、一斉刺激が始まった。レイリアの身体がびくんっと反応した。
「あっ、あ、ああぁぁぁぁぁぁ・・・ん、い、いぃぃぃぃぃぃ・・・、い、いくぅぅぅぅぅ・・・」
 レイリアが絶頂に達する。しかし、ウンディーネの責めは終わらない。
「あ、何、この感覚・・・し、知らない・・・怖い・・・あ、で、でも・・・い、い、いくぅぅぅぅ・・・」
 アイラがウンディーネを纏ったレイリアの舌から来る刺激で絶頂し、潮を吹く。同じくルナとミスズも指の刺激を受けて潮を吹いていた。そして、ジローもまたレイリアとウンディーネの混じった膣内の刺激が脳天を突き抜けた瞬間、大量の精を放っていた。
 しかし、ジローは本来の目的を忘れてはいなかった。レイリアに性奴調教を超える快楽を与え、新しい暗示を植えつけて今までの忌まわしい過去を本当に過去のものとする。そのことによって新たな人生に踏み出せるはず。
 レイリアは、もう絶頂に絶頂を重ね、どれだけ昇ったのかわからない状態であった。いまこそ『心響』の力を使って暗示を与える機会である。『心響』は、相手のガードを下げることで、より大きな力を発揮する。相手が女性ならば、セックスして絶頂を迎えた時が当にそれに当るのだ。ジローは、結合したまま、レイリアの精神世界に飛び込んだ。
<ああぁぁぁ、いいぃぃぃ・・・>
 レイリアはすぐに見つかった。そして、ジローは暗示をかけていく。
<レイリア、君はこれから俺の妻になり、一緒に新しい人生を歩むんだ。そのために、新たな制約を課す>
<ああ、は、はいぃぃぃ・・・>
<一つ、レイリアは性奴隷から人間に格上げする>
<わ、私は・・・、せ、性奴から・・・、に、人間に・・・、なり、・・・ます>
<一つ、レイリアが好きな人以外には、欲情しない>
<は、はい。す、好きな人、い、以外には・・・、欲情、し、ません・・・>
<一つ、俺と、俺の愛嬢達はレイリアを好き以上の感情、愛情をもって接する。レイリアも同じようにして欲しい>
<はい・・・。ご、主人様・・・、と、愛嬢の皆様を、あ、愛します・・・>
<一つ、レイリアのことを性奴隷として見る奴らの言葉は、レイリアの心には絶対に届かない>
 同時にジローはレイリアの心の中にプロテクトのシールドを張った。
<はい、決して、負け、ません・・・>
<一つ、愛する者たちのために生きること>
<はい・・・。わ、私はご主人様を・・・、愛し、ご主人様のために、生きます・・・>
 ちょっと意味が違うかなとも思ったが、ジローは先に進んだ。後に、この判断ミスを思い知らされることとなるのだが。
<一つ、今までの人生を否定しないこと。かといって引きずられないこと。新しい人生を楽しむこと>
<はい、過去を・・・、乗り、越えて・・・、前に進み、ます>
<一つ、どんなときも勝手に死を選ばないこと>
<はい・・・、死、という選択肢を、放棄します>
<そして、最後に一つ、この制約に違えた場合は、自らの罪を明らかにし、俺たちの責めを受けること>
<はい・・・、誓います>
 ジローは満足してレイリアの精神世界から抜け出た。瞬間、今まで以上の射精感が身体全体を包み、爆ぜて大量の精を放った記憶を残して、失神した。その廻りには、同じく失神している新たに増えたレイリアを加えた5人の愛嬢達。
 レイリアの顔には今までなかった幸せそうな笑みが浮かんでいた。

 洞窟の中に風の音が反響していた。
 ジローと5人の愛嬢達は、その中を探索するように進んでいく。ここは、大地の神殿の奥、封印の間の隠し扉から続いている洞窟であった。
 神殿には、次の神殿に行くための道標が必ずある筈だったが、大地の神殿にはそれらしきものが見当たらなかった。故に、ジロー達の神殿への滞在が長引いていたのだが、それを打開したのはアイラだった。
 日本語に興味を持ったアイラは、封印の間にある壁等に刻まれた文字を片っ端から読んでみたのだ。わからない意味はジローに聞きながら。そうこうしているうちに、壁の一部、凹んだ部分に一見わからないように文字が刻まれていることを発見した。そこには、こう書かれていた。
『風の道を進めば、風の祝福を得られん』
 ようやく、次の神殿への道標が発見された。文字の内容からすると、風の神殿らしい。実は、大地の神殿から北のトラスト山脈を見上げたときに、天気のいい日ならば人造物らしき建物の姿が見えるのだ。その建物は、垂直に切り立った山肌に刻まれるように存在していたが、どうやって造られたのか、どうやって行くことが出来るのかは謎であった。それこそ、空を飛べれば可能かもしれないと、ジローはこの世界に空を飛べるものがあるのか尋ねたが、アイラは嗤って、鳥に乗れるなら、と答えていた。
 ジローはその建物が、次の神殿と考えていた。とすれば、行かなければならない場所である。その方法について模索している中で、アイラの発見は賞賛に値した。アイラはそのご褒美としてジローに腰が砕けるまで抱いてもらったのは云うまでもない。
 そして、一行は隠し扉を開けて、風の道と称する洞窟を進んでいたのである。
「だんだん風の音が強くなって来ましたね」
 ユキナが云った。洞窟の中にも若干の風が漏れて来ているのか、肩のところで切りそろえた銀色の髪が微かに揺れている。
「少しですが、光を感じます。出口が近いのではないでしょうか」
 ミスズが続けた。こちらは艶のある黒髪。ユキナと同じく、肩の上で綺麗に揃えてカットされている。
 ジローは二人に軽く同意の合図を送ると、更に歩を進めた。そして、ついに彼らは洞窟の出口にたどり着く。
 出口は、少し広めのホール位の大きさがあった。そして、出口の外は・・・。
「吊り橋?」
 ジローは思わずうなった。洞窟の外には一本の吊り橋が伸びている。その先は、雲霞に遮られて見えなかったが、橋が吊られていることから、反対側でも吊られているのは間違いない。
「ジロー」
 アイラの呼びかけにジローは振り向いた。アイラはもう、習慣になっている日本語を見ると読みたくなるという行為をここでも行っていたのだ。
「ねえ、この言葉どう思う?『この先、試練への承諾を得られなければ、風の精霊の洗礼を受けるであろう。無視して進むことなかれ。祝福を得たければ、胎内より出でし姿で進むべし』とあるけど」
 ジローは腕を組んで考え込んだ。と、その時、急に風の音が強くなり、出口の当りで悲鳴があがった。
「きゃあ!」
 咄嗟に向くと、レイリアがびっくりしたように座り込んでいた。
「どうした!」
 ジローが声を掛けて近寄る。他の愛嬢達も。
「ご主人様。ごめんなさぁい。ちょっと景色がみたくなって覗いたら、ごおぉぉってなってびっくりしちゃったの」
 レイリアは屈託のない笑顔でジロー達に答えた。悪戯をして舌をペロッと出した子供のように。
 レイリアに対してジローが施した制約のおかげで彼女は生来の自分を取り戻していたが、若干の弊害があった。それは、レイリアの感情表現が性奴調教を受ける前の十代前半に戻ってしまったことと、ジローという『ご主人様』の愛奴として生涯生きていくことが絶対不変の誓いとして刻まれてしまったことである。故に、レイリアはジローをご主人様と呼び、アイラ達を自分より一段上の愛嬢、『お姉さま』と表現した。今の彼女にとってジロー達に仕えることは空気が存在する如く当たり前の話であり、その姿勢が普通の行動に現れていた。
「お姉さま達も、心配してくれてありがとう」
 そう云われて、いちばんくすぐったいのはユキナであった。実際、ユキナの方が年下なのだが、精神年齢が下であるレイリアから見れば、年上のお姉さまなのである。
 ジローはレイリアが無事であることを確認すると、自ら吊り橋の袂に近づいた。そして、吊り橋の柱を掴むと、一歩を踏み出した。
ゴオォォォ・・・。
 風の勢いが急に増し、下から上に突き上げるような強い風が吹いてくる。このまま進めないこともないが、かなり難儀な事態にはなるだろうと想像できた。
 ジローが吊り橋から離れると、風は止み、水墨画のような景色に戻った。
「むぅ。風の精霊の洗礼か・・・」
 つぶやきながら思案気に辺りを調べるジロー。暫くして、浅い窪みを見つけた。
「うん、ここだな」
 愛嬢達は黙ってジローの行動を見、彼が言葉を発するのを待った。ジローは納得したのか、愛嬢達に向き直る。
「アイラが見つけた文について考えていた。無事に神殿までたどり着く方法が有る筈だと。どうやらその方法が見つかったみたいだ」
 興味深深でジローを見るアイラ達。
「その、・・・方法だが、文にあった『胎内より出でし姿で進め』、即ち、全員身につけている全てのもの、装飾品、髪留めも含めて、全て外して、生まれた時の姿で吊り橋を渡ることのようだ」
 一瞬の沈黙。しかし、直ぐに彼女達は行動を起こした。ジローに対する絶対的な信頼。伊達や酔狂でそんなことは云わないと知っているのだ。
「ジロー様。脱いだものはどちらにおけばよろしいのですか?」
 ルナが尋ねた。既にローブを脱いで下着をはずそうとしている。
「この窪みにおいてくれ」
 先ほどジローが見つけた窪みを示すと、愛嬢達は、身体から外した、衣服、武器、装飾品、靴などを置いていく。
 全員がその作業を終えると、ジローは互いに外し忘れたものがないかチェックさせ、完全に生まれたままの姿になったことを確認した。
「アイラお姉さま、手のひらに2つも星がついていますぅ・・・。とっても綺麗ですぅ」
 レイリアがアイラの左手を見つめて嬉しそうにそう言った。ジローや他の愛嬢もどれどれと近寄ってきた。
 アイラの左手の平には小指の先ほどの大きさの星型の痣がついていた。普段、アイラは指なしの手袋をしていることが多く、あまりまじまじと見たことがなかったジローが改めて覗くと、アイラの顔が赤く染まる。
「じっくりと見たことはなかったけど、レイリアの言うとおり、綺麗な5角星だな・・・」
「う、うん・・・。そっかな・・・。って、恥ずかしいからじろじろ見るな!」
 アイラは照れてそういうと左手を握ってしまう。褐色の肌が全身赤く染まっていた。
「わかった、わかった。もう言わないよ、アイラ」
 そう言ってアイラの頭を撫でるとようやく落ち着いたようだった。
 ジローは改めて皆を見た。ジローの前に美しい裸体の美女が5人並ぶ姿は神話に出てくる絵のようである。大小10個の乳房が揺れる様に、ジローの肉棒が勃起してしまうのは無理もないことだった。それを見ている愛嬢達の股間も同様に湿っており、ミスズとユキナは溢れた汁が太腿の内側を伝っていた。
「今は、我慢しような・・・」
 ジローがそう云うと、ルナなどは少々残念そうな顔をしていたが、皆頷いた。内心、一番残念だったのはジローだった。
「では、行こう」

 生まれたままの姿の6人の男女が吊り橋を渡っていた。吊り橋が揺れるため、両手はロープを握ってなければならず、恥ずかしくても隠すことができない愛嬢達は皆、朱い顔をしながら黙々とジローの後をついて来る。だが、それも最初の内で、暫くすると互いの特殊な状況に身体の火照りを覚え始めているようだった。
ジローの予想通り、進路を妨害するかのような突風はなりを潜め、ベールのような靄が辺りを覆って、一切身につけていない彼らは寒さを感じずにいることができた。
 後ろを振り返ると、出発点である洞窟の出口は靄のため既に見えなくなっていた。結構歩いたはずだか、吊り橋は別段揺れもせずに先へ先へと続いている。
 ふと、ジローは、自分の身体を包む靄から意思のようなものを感じた。纏わりつく靄がだんだんと厚みを増し、柔らかく身体を覆う。そして、特に重点的に肉棒に纏わりついていた。しかも、それはやんわりと刺激を送り込む。最初は、口唇で奉仕されているようで、ジローの肉棒はすぐに勃起した。すると、今度は膣内のような感じで全体をぐねぐねと包み込み、甘美な刺激を与えてくる。だが、射精の一歩手前までいくと、刺激が遠のき、暫くするとまた始まるという、生殺しの状態が続く。
<だ、だめですぅ・・・>
 一行の最後尾を進んでいたユキナもまた、纏わりつく靄からの刺激にさっきからへろへろにされていた。ユキナのクリトリスは包皮からぷっくりと顔を出し、乳首も固く突き出している。しかし、両手はロープから離すことはできず、ただ靄に弄ばれるように刺激を受け続けていた。ユキナの内腿は、愛液が足首まで伝って流れていた。
 ふと前を見ると、ミスズの愛らしいお尻が飛び込んできた。小ぶりだが弾力と張りを充分に持ったそれは、男を誘うように左右に振られていた。よく見ると、ユキナと同じく足首までぐっしょりと濡れている。
<ミスズ姉さまも、私と同じ、だぁ・・・>
 なぜかほっとするのもつかの間、再び甘美な刺激がユキナの体内を走った。しかし、絶頂の寸前で、潮が引くように戻されていく。
こうして全員が無言で先頭を進んでいた。いや、声を出せば喘ぎ声にしかならないのだ。
 白い靄がどんどん深くなり、おあずけをくらい続けた彼らの身体が、いい加減限界に近づいた頃、ようやく吊り橋の終点が現れた。反対側の杭が。
 ジローは突然現れた杭に、何も考えずに触れた。勃起した肉棒からはとめどなく先走り汁が流れて、痛いほどに張り詰めている。しかし、一度も射精が出来ないこの状態から抜けられるなら、との意識がいつもの冷静さを押しのけ、ただ本能的に触れてしまったのだった。
 瞬間、ジローの意識が混濁した。景色が回転するような感覚と眩暈が彼を襲い、そのままブラックアウト。

「・・・んさま、・・・じんさまぁ、・・・ご主人様ぁ・・・」
 呼びかける声に引き寄せられるように、ジローの意識が戻ってきた。薄目を開けると眩しい光が飛び込んできた。その光の中で薄ぼんやりとした輪郭がだんだんとはっきりしてくる。金色の髪と金色の瞳の女性が何かを語りかけている。
「レ、イリア・・・?」
 ジローの口から無意識に言葉が発せられると、女性は金色の瞳に涙を浮かべて、安心したような表情になった。その頃になって、やってジローの意識がしゃんとしてくる。
「レイリア、よかった・・・」
 ジローはそう云うと、身体を起こそうとする。レイリアがそれを助けた。
「ご主人様、よかったぁ・・・。いくら起こしても起きてこないから、レイリア、とっても心配だったの」
 と言って身体をジローにぴたっと寄せた。右腕に柔らかい感触が当たった。
「レイリア、どこも痛くないか」
 レイリアが頷くのを見ると、その頭を軽く撫で、それから辺り見廻す。他の4人の愛嬢達の姿を探すために。
 心配は杞憂に終わった。アイラ、ルナ、ミスズ、ユキナの姿も、直ぐ近くに捉えることができ、ジローはほっと胸を撫でおろした。まだ彼女たちは気を失っているようだが、見たところ外傷もないようだ。ジローと一緒で直ぐに目覚めるだろう。
 そこまで確認すると、ジローはレイリアに4人を起こすように頼んだ。レイリアが快諾してジローから離れるとジローは立ち上がり、もう一度辺りを見廻した。今度は自分のいる場所が何処なのか、という疑問を晴らすために。
 ジロー達が目覚めたのは、どうやらどこかの部屋らしかった。但し、床は草を編んだような柔らかな素材の絨毯で、部屋の風通しが心地よいくらいにいいため、涼しい草叢にいるような爽やかな感じがする。天井は薄青くて明るく、見上げると青空を見ているような錯覚を起こし、壁もまた白を基調とした明るい造りをしていた。
「でも、窓がないのに何処から風が来るのだろう・・・」
 一人呟きながら、風の通り道を探す。この部屋には、出入口がないのだ。少なくとも見る限りでは。
「ジロー様・・・」
 振り向くと、呼んだのはルナだった。どうやら他の3人も目覚めたらしい。
「みんな、大丈夫か」
 全員が軽く頷く。ジローの顔に自然と笑みが浮かぶ。が、その眼がある一点のものを捉えて険しくなると、全員がその方向を向いた。
「これって、ディルドゥ?」
 アイラが問いかけた。
「試練の間にあった魔方陣と似ています」
 ミスズがもっと全体を見て云った。ミスズの言うとおり、壁に魔方陣が描かれており、その魔方陣の上下左右と中央に棒状のものが突き出していた。
「ジロー様。ここはもしかしたら風の神殿の中なのではないでしょうか・・・」
 ルナの意見に対して、ジローは軽く頷いた。
「俺も、そう思っていた。辺りを見廻す限り、ここには出入口がないが、風がどこからか通っている。きっと、風だけが通れる魔法の壁に囲まれているんだと思う。そして、ミスズが云うとおり、あれは魔方陣でここは試練の間に違いない。となると、次の行動は・・・」
「セックスね!」
 アイラが明るく断言した。
「ここに来るまで散々おあずけをくらって、いい加減限界だったのよ・・・。もう、どうにかなっちゃうくらいにぐしょぐしょになっているわ。ジロー、早くその逞しいおちんちんを私のおまんこに入れて」
 アイラは真っ先に魔方陣からディルドゥを抜く。そのままジローに近寄り、片足を上げてジローにしがみつき、立ったままの体勢で天を衝いている肉棒に自分の性器に導いた。既に欲情の雫をたっぷりと潤滑した膣口はぱっくりと開き、ジローの侵入を待ち望んでいた。ジローの肉棒の先端を捉えると、まるで意思があるかのように包み込みながら迎え入れる。くちゅりと音がして肉棒はアイラの膣内に飲み込まれていく。
「あ、あぁぁ・・・、い、いくぅぅぅ・・・」
 入れただけでアイラは絶頂に駆け上がった。アイラの両手はジローの首に掛かり、張りのある乳房が逞しい胸に押し付けられる。床とかろうじて接点のある片足は爪先立ちで、反対の足はジローの腰に巻きついていた。その後は本格的に攻め始めたジローによって何度も何度もいきまくった。だが、おあずけをくらっていたのはジローも同様である。いつもより我慢できずにアイラの中に存分に精子を解き放った。
「あ、あぁぁ、・・・あ、い、いいぃぃぃ・・・」
 声にならない嬌声を上げでアイラはジローの射精を受け止めた。ジローはアイラの手に握られていたディルドウを受け取ると、自分の肉棒を抜いて、すかさずアイラにディルドゥを突き入れた。
「あ、ん・・・、嬉しい・・・」
 そう言ってアイラは床に沈みこんだ。すると、他の4人も既にそれぞれにディルドゥを持ってジローを見つめていた。その股間は愛液を溢れさせ、いつでも受け入れる体制が整っている。瞳は欲情していた。
「さあ、おいで・・・」

 試練を潜り抜けた彼らが次に見た景色は、一面の草原だった。白壁の部屋から瞬時にこの場所に移されたかのように。
「ねえ、これって転送の部屋?」
「いや、むしろ部屋自体が魔法の目眩ましだったようだ」
「え、じゃあ、私達外でしてしまったんですか・・・」
 と言って赤くなるユキナ。
「ちょっと待ってください。ここは風の神殿なのでは」
 ミスズが辺りを見廻す。と、先ほどまでそよ風だった空気の流れが、急に強くなりだす。
「皆さま、動いてはいけません」
 ルナの言葉に、全員の動きが止まった。見ると、ルナは目を瞑って何かを感じ取っている様子。
 風は更に強く吹いてきた。だが、ジロー達はその場で動かずにじっとしている。すると、草叢が分かれて道が出来上がった。同時に風が元のそよ風におさまる。ジロー達は直に道を歩んだ。最初の分かれ道を左に曲がる。別に右でも良かったのだか、誰かに呼ばれた気がして左を選んだのだ。そして、左手の道の先には、彼らが外した服飾、装具、武器などが、洞窟で置いたそのままに置かれていた。
 ジロー達は、自分たちが裸であったことを忘れていたが、目の前に現れたものを見て、それぞれ赤い顔を隠しながら身に付けていった。
 道を元に戻って、反対側の道に進む。暫く進むと、祭壇があった。石で作られたもののようで、周囲の風に浸食されてでこぼこな表面が神秘的な雰囲気を醸し出している。
「ご主人様ぁ・・・。ほら、ここに風の祭壇って、書いてありますよぅ・・・」
 レイリアが石に刻まれた文字を読んだ。
「へぇ〜、レイリア、あなたもこれが読めるんだ」
 アイラが興味深げにレイリアに尋ねる。レイリアはちょっと首を捻りながら、
「ん〜・・・。よくわからないけど、読めるようになっちゃいましたぁ。お姉さま」
 と、天真爛漫な笑顔をアイラに向けた。その可愛らしさに、思わず頭をなでなでするアイラ。レイリアも気持ちよさそうである。
「ねえ、これってディルドウが原因?だよね・・・」
「ああ、多分・・・」
 ジロー達は、神殿での試練の度に、ジローの持つ何らかの力が愛嬢達に伝播することを経験上知っていた。そして、その媒体がディルドウであるらしいことも薄々気付いていた。不思議な力ではあったが、今のジロー達にはそれが助けになっているのも間違いなく、有難く受け入れることにしていた。
 ジローは、アイラに答えたあと祭壇に登った。祭壇の上から見ると、今までいた草原が見渡せる。草原は広く緩やかに下っているようで、その先に大地の神殿と門前町が小さく見えた。
「これは、・・・この景色が本当の姿なら、大地の神殿から見えた断崖絶壁は、魔法の目眩ましということですね」
 ミスズが思わず呟いた。今更ながら、神殿を守っている魔法の偉大さに驚嘆せずにはいられないジロー達であった。
「ジロー様。封印の装具が見つかりました」
 ルナの言葉に振り返ると、ルナは祭壇の奥にある像に導いた。像は女性の上半身を模ったもので、石製ではあったが全く風化の影響は受けておらず、まるで生きている女性がそのまま石になったように精巧に造られていた。
<あれ、どこかで見たような・・・>
 ジローはその像の女性に既視感を覚えた。髪を後ろに束ねたその姿に。
「あの・・・。この女性は、レイリア様にとてもよく似ていると思います・・・」
 ユキナがぼそりと言った。そう、確かに似ている。石の像だけに色がついていないのでわかりにくいが、髪が金色だったらきっと生き写し・・・。
「ジロー様。もしかしたらシズカ様のようにこの方も実在の人ではないでしょうか」
 ルナの意見をジローも肯定した。玄武の神殿で出会ったシズカ姫の霊体は、ミスズとうりふたつで、ミスズはシズカの子孫である。となると、同じくこの像の女性はレイリアの先祖の誰かと考えるのが普通である。
「ここに文字が書いてあったみたいだけど、削れちゃって読めないかな・・・。えっと、始祖・・・う〜ん。やっぱりだめね・・・」
 アイラが像の台座の文字を探ったが肝心の名前はわからなかった。
「始祖?一族の系譜の始まりの人という意味だよな・・・。で、レイリアの関係者ということは・・・、レイリア、ウエストゴールド王家の始まりは誰だい?」
「はい。レオナ様です。ご主人様」
「どうやら、この像はレオナ姫の像と考えるのが妥当だな・・・」
 ジローの意見に愛嬢達も頷いた。ジローは納得すると像を再び見つめ、頭に嵌め込まれている髪飾りに手を伸ばした。
 そして、髪飾りに触れた瞬間、ジローは白い結界の中に放り込まれた。
「ほう、私を呼び出すとは、主は相当の術者であるな」
 ジローの目の前に和服の女性が立っていた。和服というよりは、巫女服に近い。
「私はシルフィード。こうして呼び出されたからには主の力になろう。さあ、け、契約の儀式を・・・」
 ジローはシルフィードが恥じらいの表情を浮かべたのを見逃さなかった。
「シルフィード。どうせやるなら気持ちよくやろう・・・」
 そう言って近づく。
「ば、ばか、は、恥ずかしいことを云うな。さっさと済ませろ・・・、う、なに、あぅ・・・んぐ、うぐぅうんうん・・・」
 ジローはシルフィードの唇を強引に奪うと、口の中に舌を割り込んで吸った。同時にシルフィードの力が抜けて、されるがままになる。それを確認すると、巫女服の中に手を滑り込ませ、乳房全体を揉む。吸い付くような感触で手の中にすっぽりと納まる美乳。
「う、うぅん、うぅん、もがもが・・・」
 口を塞がれたシルフィードが眼を潤ませてジローを見た。ジローは空いているほうの手を後ろから廻して裾をまくり、直接尻に触る。その感触を暫く堪能した後、股間の秘所へと。もう、そこは潤沢な愛液でぬるぬるになっていた。
「あっ、はぁあん・・・」
「シルフィード。もうこんなになってるよ」
「ば、ばかぁ。い、云うな・・・と、云っているではないか・・・あ、あん」
 涙目のシルフィード。だが、ジローが秘所を指で擦ると、途端に喘ぎ声が高まる。
「あ、あ、あ、あぁ・・・。た、頼む・・・。早く、ぎ、儀式を・・・」
 ジローは頷き、滾った肉棒をシルフィードの中に突き入れた。


第13話へ

投稿小説の目次へ