謎のイタリアンシェフ

Azuki  Rossi  chef
アズーキ ロッシ シェフ

それから13(02/09/03)

世界の料理を創作し、
世界の料理を堪能しているアズーキ ロッシ シェフは、
大の日本びいきでございました。
秋のさんまの塩焼きに、すだちを絞りかけて戴くのを、
ことのほか喜ばれるのでございます。

やはりこの季節が近づくと、わたくしも待ちかねておりますわ。
そろそろ、シェフのふくろうのGaviがやってくるに違いありません。

やはり、噂をすれば・・・で、ございます。
わたくしの予感もまんざらではございませんわね。

紺碧の空に真っ白なGaviが、
こちらに向かってまっしぐらに飛んで参ります。
大きく大きく羽を広げて、だんだんと近づいてくると、
首に大きな荷物を提げているのが分かりました。

「Gavi、随分重そうな荷物ですこと。」
足で大切に抱えた箱を受け取り、
門柱の上に留まった私の体の半分もありそうなGaviを、
背伸びをして抱きかかえて下ろしました。
いつものようにフワフワの毛並みでございました。

ミラノのレストランで撮したシェフの写真と、
高級なオリーブオイルのビンが入っておりました。
「まあ、Gavi!ミラノからご苦労様ね。」
「さあ、水をいっぱいお飲みなさい。
シェフの好物のすだちはちゃんと用意してありますよ。」

Gaviが立つのは暗くなってからでございます。
いつものことですが桧の森で、羽根を休めておりました。

シェフが送ってくださったオリーブオイルは、
ずっと私の憧れのエキストラバージンオリーブオイルでございました。
魔法をかけるように美味しいカルパッチョが出来るという噂でございますから、
早くお味見をしてみたいと、もう有頂天でございましたわ。

オリーブオイルのビンには、
新しい料理のメモ書きが貼り付けてありました。
魔法界の手書きの文字は、ニョロニョロと動きますのよ。
わたくしは、まだこの文字を読むのが苦手でございました。
まだ読み終わらないうちに、次のページが開いてしまうのでございます。
また最初から読まなくてはいけませんでした。
そうやって、ニョロニョロ文字と格闘していると、
Gaviがもう時間だと私の肩に舞い降りてきたのでございます。

すだちをGaviの首に掛けながら小声で言ったのでございます。
「Gavi、ご主人様にお伝えして頂戴ね。」
「koryuはニョロニョロ文字がまだ苦手ですから、
ワープロで打ってくださいまし。」
「それに、美味しいお料理を作りますわ。とね」
そしてGaviの好物のブラックオリーブの実を手のひらに載せて差し出すと、
パクッとくちばしの中に納めました。

Gaviは「ホッホ〜!」と鳴いて、
大きく羽を広げて飛び立ったのでございます。
その時、Tunaby嬢のヒーコンがヒラリとGaviに近づいて、
しばらく仲良く並んで飛んでおりましたが、
そのうちGaviの方だけが小さく小さくなり、行ってしまいました。
裏山に太陽が沈みかけておりました。

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Ms.Koryu
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