見習い魔女の作者

Ms.Koryu

ミズ・コリュ

それから15(02/09/05)

採れたての真っ赤なイタリアントマトを煮込んで、
トマトソース作りを始めておりました。
ふっと窓から森の向こうに目をやったとき、
何かが一瞬ですが、輝いたのでございます。
まさか、こんなに遠くては、
何が光っても届くはずがございません。。

トマトを煮込みながら時々そちらに目をやりましたが、
もう何も起こりませんでしたから、
「やっぱり、気のせいだったんだわ。」と思いながらも
心が落ち着かなかったのでございます。

トマトソースがトロトロに煮えてきて、美味しい香りを放ち始めました。
ちょうどいい感じでお腹も空いてきたところでございました。
Ruveiは昼食は美味しいトマトソースのパスタだと予感したのでしょうか、
テーブルのいつもの椅子の上で待っておりましたわ。

そう、いつもならパスタを茹で始めるところでございますが、
あの光が気になって、食事どころではなくなってきたのでございます。
「Ruvei、ごめんなさい、バジルを収穫するのを忘れたわ。
一緒に行ってくれる?」
Ruveiは期待がはずれて、ちょっとポカンとした顔をしましたが、
気のいいRuveiは「ニャン!」と鳴いて、前を歩いていきました。
私もかごを持ってすぐに後を追いました。

いつものように、桧の森を抜けて、坂道にさしかかったところでございます。
森のざわめきが気になるのでしょうか、
Ruveiはキョロキョロ辺りを窺っています。
「Ruvei、どうかしたの?」
長い尻尾をピンと立てて、やはり、わたくしの前を歩いて行きました。

すると、一羽の鳥が飛んでくるのが見えました。
見慣れない鳥ですが、わたくしの方に近づいてくるような気配でございました。

「カモメ?」

海が近いといってもこんな山の中に、風で飛ばされてきたのでしょうか。
何かをくわえているようでございます。
Ruveiは私の横にちょこんと座って、そのカモメが気になる素振りでしたが、
私の顔を見て「ニャン!」と鳴いただけでございました。

もうそこまで飛んできていたカモメにそっと手を伸ばすと、
キラッと光る羽根を手の中に落としていったのでございます。

「まあ、綺麗!」
青くて銀色に輝く、見たこともない羽根でございました。
それはもう軽く、風船のようにフワフワとして、
手を放すと空に舞ってしまいそうでございました。
しっかりと握りしめ、もう一度カモメを見ると、
カモメの首に"Mirai"と刻んだ銀の首輪が光ったのでございます。

「あなたはMiraiね。あなたのご主人様はどなたなの?」
するとカモメはパチパチっと瞬きをして「ピィー」と鳴くと、
南の空へ飛んでいってしまったのでございます。

「ねえ、Ruvei、どうしましょう、この綺麗な羽根」

Ruveiは「ニャン!」と鳴いて、バジル畑の方に走っていき、
いつものようにバッタと戯れて遊び始めたのでございます。
私も、バジルを採りに来たことを思い出し、
しっかりと羽根を握りしめて、
バジルを収穫して帰ることに致しました。

窓から見た光は、この羽根だったのでしょうか?
でも、どのような方が贈ってくださったのでございましょう?
こんなに綺麗な羽根を持つ鳥が、この世にいるのでございましょうか。
想像も付かなかったのでございます。

手を放すと飛んでいってしまいそう
リボンを結んでRuveiの首輪に付けてあげましたが、
Ruveiの首には少し大きいようでございました。
それで、Ruveiの3倍くらい大きなクジラの人形に結びつけて、
やっと昼食のパスタを戴くことになったのでございます。

Ruveiは満足そうに、一気に平らげてしまいましたわ。

わたくしはこの羽根のことを考えているうちに、
いつの間にか眠ってしまったのでございます。

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