営業キロが約450キロにも及ぶ道内最長の根室本線が根室市に入って最初に到着する駅が厚床である。ホームから南側の駅裏を眺めると根釧の大地が延々と広がる絶景となっている。

 2000年夏の青春18きっぷのポスターに採用され、ポスターには一人の旅人がベンチに座って列車を待つ姿があるが、交換設備が廃止されて、そのホームへ行く構内踏切を無くした関係上、現在はそこに立ち入ることはできなくなっている。ホームは使われなくなってもベンチは今でも残っており、駅名標も新調しているがその点はかつて隣にあった初田牛は最初から無かったかのような扱いになっている。

 厚床はかつて標津線が分岐しており、1989年に廃止されるまでの晩年時代は1日4往復しか走っていなかったが、日本最東端の鉄道ターミナル駅として君臨していた。厚床から標津線で最初に到着した駅、奥行臼は今でも駅舎とホームが残る人気の鉄道遺産スポットであり、中には厚床からバスに乗り換えて足を運ぶ人もいるようだ。

 現在の駅舎は標津線の廃止後に建て替えられたもので、当初は簡易委託の駅となったが、1995年に委託業務が廃止されて無人駅となった。無人化はされたが駅舎は根室交通の案内所を兼ねており、駅前のロータリーからはバスが発着する。

 そんな駅舎内の狭い一角にギャラリーが併設されており、ピアノやホワイトボードの寄せ書きや駅ノートが設置されている。ギャラリーを開きノートを置いたのが2004年で記念すべき1ページ目には「ちい散歩」でお馴染みだった地井武男さんが直接書き込んだ。地井さんと言えば「北の国から」シリーズでは中畑のおじさんでその名を馳せた方、北海道に対する思い入れは強かったと思う。そんな地井さん直筆のメッセージが書き込まれたノートは今でも残っていて、ほっと安心する。

 厚床には失くしたもの、必要としなくなったものが数多く存在する。だがそれらを後世に残していこうという温かい気持ちがどこよりも伝わってくる駅であった。

                                                        (2021.12.15)

 
厚床のホーム。棒線駅化され構内踏切が廃止されたため、使われなくなったホームへ行くことはできない。
厚床の駅舎。無人化されてもかつてはバスの切符売り場の窓口があったが今はそれもなくなって完全に無人の駅舎となった。
Attoko
厚床の駅舎内にあるミニギャラリー。ピアノや寄せ書き用のホワイトボードがある。駅ノートには地井武男さん直筆の書き込みも残されている。
根室本線の厚床。青春18きっぷのポスターに採用された絶景は今も健在である


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厚床は標津線の乗換駅であった。標津線は1989年に廃止されてしまった。
厚床