列車が去って静寂という、ここにとっては日常的な出来事が訪れると、夏井川のせせらぎが聞こえてくる。かつては日本一広い市として知られていた、いわき市内にある江田は、自然に囲まれていて、磐越東線内では最も趣のある駅だ。

 構内の線路をよく見てみると、微妙だが枕木がホームの反対方向に分岐していく跡がある。両隣にある小川郷と川前の駅間距離は16キロもある上に、長い勾配が続いていたという背景からスイッチバック式の信号場として開設されたのがここの始まりである。しかし線内最大のハイライトである夏井川渓谷に立地しているということで、臨時駅として客扱いを行うようになり、国鉄の分割・民営化直前の1987(昭和62)年3月31日に正式な駅として承認された。

 他の磐越東線の駅に比べて民家の数は少ないものの、観光の役割を担っているせいなのか、駅前には今のご時勢ではめっきり減った個人商店がある。お菓子などの品揃えは何気にあるので小腹が空いた時には助かるかもしれない。

 駅には夏井川渓谷の案内の看板板がでかでかと置かれている。案内板には所々のポイントの所要時間が表示されているのでおおよその目安にはなる。ただし季節ごとの入山時間などと言った注意書きなども書かれている。夏井川渓谷にほんのちょっとだけ足を踏み入れてみたことがあるが、緑が生い茂っているため日中でも薄暗い印象をうけた。みんなの迷惑にならないためにも注意事項は必ず守って入山するのが得策である。

 9年前に江田に来た時にドコモのケータイが圏外だった印象が残っていたので、ふとケータイをのぞいてみたら、昔と変わらず圏外のままだった。ほんのちょっとだけ便利すぎる日常から離れてみるのもいいのでは?

                                                                (2008.8.21)
江田の駅入口
江田のホーム


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スイッチバックを物語るポイントの跡
江田のホームにある夏井川渓谷の案内板
江田
Eda