北海道の駅名といえば主としてアイヌ語由来によるものが多く実に個性的ではあるが、留萌本線の藤山に関しては小樽の廻船問屋の藤山要吉が線路敷設の際に農場として所有していた土地を無償で提供したことに由来するれっきとした人名由来の駅である。駅前に「藤山開拓之碑」が建立され、その功績が称えられている。

 小ぢんまりながらも中途半端な感じの駅舎は、1984年の無人化後に向かって左側にあった駅事務室を解体したのが原因であり、現在も土台でその痕跡を確認することができる。待合室のみとなった駅舎だが、無人化後に貨車駅になった駅のことを考えると、開業時の建物としての存在価値は高いものといえる。

 駅前には国道が通り、そこにはバス停もある。周囲に民家がそこそこ存在するものの、生活の足が車になっているせいか、年間の利用者が1人を切っていて駅としての存在意義は大きく低下してしまった。

 鉄道路線の廃止が表明されると、最近では乗りに来るファンだけではなく駅に降りるファン、いわゆる「降り鉄」も数人程度見受けられるようになった。それでも特に大きないがみ合いはなく、お互いに動向を読みながら黙々と撮影に勤しむ。藤山で降りて、次の列車が来るまでの30数分間は、他の訪問者にも気を配らなければいけなかったせいか、いろいろと慌ただしい時間を過ごしたということが、いちばんの思い出になってしまった。

                                                          (2022.10.10)

藤山のホーム。かつては対抗式ホームだったが今は棒線駅である。


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藤山の駅舎。建物は待合室部分のみとなったが開業時のものである
Fujiyama
藤山に到着した留萌本線のディーゼルカー。この光景が見られるのもあとわずかだ。
藤山の駅前にある「藤山開拓の碑」駅名の由来は土地を無償提供した藤山要吉からつけられている。
藤山