何もない糸魚沢の駅前広場。まるで廃止に向けて準備をしていたように思える。


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ログハウス風の小さな駅舎となった糸魚沢。某アニメのEDに登場しているかのような佇まいだ。
Itoizawa
 カキが名産の厚岸を出発すると厚岸湖のほとりを走り、湿原地帯を延々と走り抜ける。新雪に覆われた湿原地帯を走るキハ54の姿が2012年冬の青春18きっぷのポスターに使われるなど、花咲線内では最も魅力のある風景だ。

 そんな絶景を10キロ強も走って到着する駅が糸魚沢である。アイヌ語の「チライ・カリッ・ペッ」を和訳するとイトウの通る川から付けられた糸魚沢の周辺は根室寄りに集落がちょっとあるだけで、裏手は手つかずの湿原となっている。

 2段式の屋根がついた木造平屋の駅舎から、ステップがあったら某国民的アニメのエンディングに出てきそうな五角形のログハウス風の小さな待合室に建て替えられている。近年1日の平均利用者が2人を割り込んだ実情から、糸魚沢の利用状況を調査していたようで、2022年春のダイヤ改正で駅の廃止に踏み切った。

 隣の茶内で列車の行き違いが行われるため、日中に花咲線の下り列車で糸魚沢に降りれば20分ほどで反対側から列車がやって来るため、アクセスが非常に容易な駅である。

 駅前は未舗装ながらも大型車でも転回ができる広場があるが、人工物が何一つも置かれていない空っぽの空間と化している。それは前々から廃止に向けて着々と準備を進めて来た、いわば生前整理を済ませた晩年の老人のようだった

                                                        (2021.12.15)

糸魚沢に到着する花咲線の列車。この光景が撮れるのもあとわずかである。
糸魚沢のホーム。側線の跡が残されているが、駅裏は湿原が広がる。
糸魚沢