貴樹と明里がストーブに温まりながら弁当を食べた場所もベンチだけになっている。
岩舟の改札口。「秒速5センチメートル」内では駅員の存在も演出の一つだったが今はその駅員はいない。
Iwafune
岩舟のホームの先端。大雪が止んだ翌朝に明里が見送る姿は「秒速5センチメートル」では象徴的なシーンだ。
岩舟のホーム。「秒速5センチメートル」では貴樹が大雪の中やっとの思いでたどり着いたのが印象的だった。
岩舟の駅舎。「秒速5センチメートル」の舞台となった駅だが、駅は無人化され、建物の一部が切り取られてしまっている。
 2016年に劇場公開されると、空前の大ヒットとなったアニメ映画「君の名は。」で監督を務めた新海誠氏が2007年に発表したアニメ映画「秒速5センチメートル」の作中で大雪の中でようやくたどり着いた駅、それが岩舟である。

 岩舟の駅が映画の中で最も目立ったのは「秒速5センチメートル」の中の第一話「桜花抄」で主人公の遠野貴樹が小学校の時に仲良くなりながらも卒業と同時に栃木に転校してしまったヒロイン、篠原明里に会いに行くシーンがとても印象深い。

 大雪という予報が出ながらも、予定を強行して豪徳寺から岩舟に向かう貴樹だが、道中では雪のために度々電車が止まって遅くなるにつれて、明里に会えなくなるんじゃないかと不安になる時間、大幅に時間が遅れながらも岩舟に到着して駅員にきっぷを渡した後、待ってくれていた明里に会えた瞬間、ストーブに温まりながら駅の待合室で二人で弁当を食べる時間、鉄道および有人駅だった岩舟を利用することによって、貴樹の心境をうまく映し出していた。

 映画の公開当時の岩舟はすでに無人化されていたが、作中で中学生だった二人が再開した時代背景は1990年台の前半、その当時は駅員が存在していた。無人駅だったら再開した時の安心感という演出はできなかったかも知れない。

 「秒速5センチメートル」の公開から9年の月日が経った今、無人駅のため当然待合室にストーブはなく、駅舎は一部が切り取られた感じの建物に変貌。当時は岩舟町だった地も2014年には栃木市に編入された。

 「秒速5センチメートル」公開後、岩舟の環境は大きく変わってしまった。ただ「桜花抄」のラストで明里が貴樹と別れた後にホームの端で立ち尽くすシーンの風景はほとんど変わっていなかった。

                                                      (2016.11.2)



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岩舟