兵庫県内にある山陰本線の駅には、数は少ないながらも秘境駅が密集しているポイントが存在する。その中で注目度があまり高くなく、ひっそりと佇む駅がこの久谷である。

 駅名が示すとおり谷間の集落の高台にホームがある。実際に駅から多くの民家が立ち並ぶのは確認できるものの、内陸部に位置しているせいか、山陰本線の景色の代名詞ともいえる日本海を見ることはできない。さらに広い構内を有しながらも線路はことごとく剥がされて棒線駅となり、駅舎はなく小さな待合所がポツンと一つあるだけだ。

 かつては駅舎があったのだが、その場所は現役のホーム上ではなく、反対側の使われなくなった方にあって、むしろそちらがメインであり、現在のホームは一時期閉鎖されていた。しかし久谷の本格的な棒線駅化の際に駅舎側から車で集落に行くには遠回りしなければならず、最短で集落に行く細道を通るために構内踏切を渡るといった煩わしさがあったため、結果的に現在の形に落ち着いた。それでも使用されなくなったホームと駅舎はしばらく残してはいたのだが、今となってはさすがに駅舎は取り壊されてしまい、かつての駅舎前のスペースも私有地となっていて厳密に言えば無断で立ち入りは禁止されている状態である。

 一時期、一部の普通列車も通過されるという冷遇された措置を味わったが、現在は青春18きっぷで乗れるような定期列車はすべて停車し、他の駅と対等に扱われている。

 鳥取から豊岡までは山陰本線に乗るルートを設定していたので、兵庫県内にある山陰本線の秘境駅の現状をチェックしてみた。その中でも一番の人気は案の定、鉄橋が鉄道遺産となっている餘部だった。

                                                         (2021.7.26)
                                                
海が見えず駅舎もないため、兵庫県内にある山陰本線では最もマイナーな秘境駅と言える。
久谷のホーム。ホームからは谷間に造られた集落が一望できる


ホームに戻る
隣の餘部に戻る 路線別リストに戻る 都道府県別リストに戻る
Kutani
久谷の駅全景。広かった駅構内も今では棒線駅となってしまった。
久谷の駅名標。お隣は鉄橋で名高い餘部だ。
久谷