岩泉線と言って駅マニアの人々が真っ先に思いつく駅と言ったら間違いなく押角であろう。北上高地の中で30パーミルの勾配の途中にある駅で元々はスイッチバック駅だった。板張りのホームには待合室はおろかベンチもなく、短いホームになぜか駅名標が2つあるのも大きな特徴といえる。

 岩泉寄りにある引込線にはレールが残っているが奥へ行くとレールの間にすっかり根を張った木がドーンと突っ立っており、スイッチバックが廃止されてかなりの年月が経っているのがうかがえる。スイッチバック時代のホームの残ってはいるが草むらに覆われていて歩きづらい。それだけでなく旧駅構内は閉伊(へい)川の漁協の敷地内になっていて近づくと番犬に吠えられてしまうので旧ホームに関しては車窓だけに留めておいた方が無難である。

 峠の手前の深い山の中で民家が見当たらない所が押角の「秘境駅」となったゆえんである。閉伊川の支流である刈屋川の対岸に林道のような狭い道があるが実はこの道は国道340号線であり、国道側にも駅の場所を示す道路標識が設置されている。

 私はこの押角には約5年半前、「秘境駅」という言葉が一般化されていない時に訪問をしており、駅に降りた時の列車とその後乗った列車の車掌さんが同一人物で私の押角下車に疑問を抱き、声をかけてきて最後に「熊には出合わなかった?」と言われ少し驚いた過去がある。

 私が以前訪問した時は橋は上の画像の物よりもオンボロだったし、駅の場所を示す道路標識も今も白いものではなく、青の細長い白抜き文字のものだった。今ではホームの板や駅名標も新しくなっており、岩泉線内を走る臨時列車は押角だけ特別に停車するようになった。これだけ押角が注目されるようになったのは、やはり「秘境駅」が市民権を得たおかげなのかも知れない。

                                                                (2005.5.7)
 
押角の駅名標と駅出口
押角のホーム
Oshikado
押角の駅へ行く橋
押角の駅の案内標識
押角


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