上有住を過ぎた後、釜石行きの列車の進行方向右側の車窓を眺めてみると、一段低い位置に釜石線の線路が敷かれ、その前方に微かながらも駅が見えてくる。通称Ωカーブと呼ばれるセミループの第2大橋トンネルを抜けて到着するのが陸中大橋である。これは隣の上有住との高低差が150メートルほどあって、それを克服するために採用された措置である。

 かつては釜石鉱山から採取される鉄の積出駅として栄えた所で、駅構内にはホッパーの遺構が残っている。有人駅時代は大きな駅舎があったが、無人化後に駅舎は取り壊されて駅入口にはアーチ状の建造物があるのみだ。

 釜石線の前身である岩手軽便鉄道が宮沢賢治の小説『銀河鉄道の夜』のモデルとされ、賢治の作品の中にエスペラント語が出てくるという理由で、釜石線に「銀河ドリームライン釜石線」という愛称をつけ、その各駅にエスペラント語の別称がある。陸中大橋は「ミナージョ」で、鉱石という意味を持ち釜石鉱山の鉄鉱石から用いられたのが想像できる。

 明治時代に開坑された釜石鉱山によって釜石の町に製鉄所が造られ、その製鉄所が新日鉄釜石時代にラグビーの全国社会人大会と日本選手権7連覇という前人未到の記録を打ち立てた。陸中大橋は鉄とラグビーの町、釜石の礎の場所といっても過言ではない。

                                                      (2019.8.27)

Ωループの麓に位置する陸中大橋。元々は鉱山を控えていただけに構内は広い。
陸中大橋を発車する釜石線のディーゼルカー。
Rikuchu-Ohashi


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終点の釜石までは、ここからさらに下っていく。
陸中大橋のエスペラント語の愛称は「ミナージョ」で鉱石という意味である。
陸中大橋