三江線の広島県内の中間駅においては唯一交換設備を持つ駅、式敷。開業時は三江南線の終着駅だったという歴史を持ち、貨物用のホームと側線も残されている。しかしながら、線内で貨物列車を運行したという記録はなく、構内踏切の手前に車止めがポツンと残されているのは、いささか寂しい感がある。
傾斜が急な三角屋根のログハウス風の駅舎は式敷の周辺は雪が降る地域であることが想像できる。だが駅舎の入口に駅名を表示するものがなく、夜になった時はホーム側の出入口はセンサーで明かりがつくが、駅舎内は電気がつくことはなく、暗くなったらホームに出た方が得策である。
駅前は商店やガソリンスタンドがあったようだが、全て閉店。終着駅で貨物の取り扱いも想定していたために駅前広場も設けられているが、車は1台もなく、貨物ホームと同じく、無用のものと化している。式敷の駅とは対照的に遠方に見える江の川に架けられた式敷大橋には何台もの車が通り過ぎていく姿が確認でき、車中心の生活の地域ということがうかがえる。かつての商店だった民家に自動販売機があって飲み物が買えるということが三江線内の駅においては貴重な存在である。
1日5往復しか列車が来ない旧三江南線区間だが、上下線の最終列車のみ、ここで列車の交換が行われる。式敷の交換可能駅としての面目が保たれている唯一の瞬間である。
(2017.8.20)