2021年のダイヤ改正において宗谷本線内の廃止の対象にされている駅の中で、秘境度が低く、存在も地味目な駅といったら、この下士別ではないだろうか。コンクリ敷きのホームからは農地が広がるが、駅の近くには民家もそれなりにある。

 駅のすぐ近くに国道40号線が並走し、そこにはきちんとバスも走っており、牛のデザインをあしらった待合室があるバス停も設置されている。だがその国道を走るバスの存在こそ、下士別の廃止を容認する決め手になってしまった。

 ホームの離れにはトタン張りの待合室があり、入り口の引き戸はまるで民家の玄関のような雰囲気となっている。室内はコの字型に配置されたベンチに何枚か座布団が敷かれている。中の電気は紐で引っ張る、昔懐かしいタイプの方式となっている。

 宗谷本線の廃止の対象にされたのは13駅もあったが、私はそのうち9駅も未訪問だったため、本数があまりにも少ないダイヤに頭を悩ませながら、なんとかその9駅の乗下車を達成させるプランを完成させ、最後に降りたのがこの下士別だった。朝9時14分に下士別に下車して、2時間ほどの待ち時間の間に瑞穂からバスに乗ってやって来たという駅巡りをしている旅行者の方が声を掛けてきてくれたので、今回の旅行で下車した駅の情報を提供をしたら、今度はレールバイクに乗った作業員が踏切の点検をしに来て、そこで色々な話を聞けた。

 あれこれ話をしていたら、あっという間に時間は過ぎていき、午前11時24分発の旭川行きの列車がやって来た。他の駅に比べて秘境度が低くて面白味がなさそうと思っていたのだが、思わぬ来訪者が現れて、宗谷本線の廃止予定駅訪問のいい締めをくくることが出来た。

                                                        (2020.9.3)

下士別のホーム。周囲に民家が何軒かあるが、国道にも近い駅である。
下士別の駅全景。待合室の横にはトイレと屋根付きの駐輪場がある。
Shimo-Shibetsu


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下士別に到着した普通列車。廃止を受け入れたため、この光景も限りあるものとなった。
下士別の待合室の中。電気は紐で引っ張ってつける昔ながらのやり方だ。
下士別