山際の斜面に半ば強引に片面ホームを造った感がある杉河内は大分県にある。しかしながら県都のある大分までの所要時間は鈍行で約2時間。久大本線の起点駅である福岡県の久留米よりも遠いと言う立地である。

 かねてから秘境駅という噂で降りてみたのだが、駅のすぐ近くに国道210号線が通っていて、交通量が多い。また駅からみえる建物は温泉宿のみだが、その宿が近代的な鉄筋コンクリートの建造物であるため、残念ながら秘境と言うムードには程遠い。

 駅から歩いて2〜3分くらいの所に慈音の滝という観光名所がある。2段に分けて豪快に水が落ちていく様は、とりわけ暑い夏の時期に訪れると何気ない爽快感と清涼感が溢れてくる。だが滝を見に来ている人を何人か見かけはしたが、彼らが使っている足は車というのが今の交通事情における現状という感じがした。

 滝を見た後に再び駅に戻って、盛り土の上に造られた駅舎の待合室で次の列車を待つ。待合室内には駅ノートが設置してあり、それぞれの旅の想いを書き綴っている。またノートだけではなく、この中では杉河内小学校美術館という地元の小学生が描いた絵などを展示しているようだ。現在は休止中ということであるが、その代わりに学級だよりなどが掲示されていて、地元の子供たちがこの土地でたくましく育っているという様子を垣間見ることができる。利用者はそれほど見かけなかった杉河内の駅ではあるが、この駅を最も愛して止まないのは、この土地に住んでいる人たちだと言うことを改めて感じた。

                                                             (2007.9.3)
杉河内のホーム
国道から撮った杉河内の風景


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杉河内
Sugikawachi
杉河内の駅出口
杉河内の待合室の中