水戸から水郡線に乗り福島県に入って最初に到着する駅、矢祭山は東北最南端の駅である。自然の中に映える朱色に塗られた木造の駅舎は奥久慈県立自然公園の矢祭山の玄関口として列車で来た観光客を迎えてくれる。無人駅ではあるが、きっぷ売り場の窓口がベニヤ板で塞がれていない状態で残されているのは長年数々の無人駅を見てきた身にとってはホッとする光景である。

 駅名にもなっている矢祭山は駅から国道を挟んですぐのところにある。とりわけ矢祭山はツツジの名所として知られ、ホームに植えられているツツジの花がきれいに咲いていた。しかしながらこの日に訪問した時は、冬の寒さがとりわけ厳しい上に春先もあまり気温が上がらなかった影響で満開という状態ではなかった。

 ツツジが有名な矢祭山ではあるが、春は桜、夏は新緑、秋には紅葉、そして冬は雪景色とどの季節に訪れても素晴らしい景観を見せてくれるのがここの特長である。

 私がここ矢祭山を訪問したのが2011年5月8日、東日本大震災や福島第一原発事故後のことである。水郡線も震災の影響で水戸〜常陸青柳間の線路を改良する事態になり、沿線は瓦が落ちて青いシートで雨漏りを防ぐ民家を見た。

 このサイトを始めてから長年行けずにいた矢祭山ではあったが震災、原発事故で地元の観光産業が困っていると思ったためにようやく訪問することができた。

 福島県にあるために矢祭山はツツジのシーズンながらも観光客がいるかどうかという不安はあったが、決して大勢とは言えないが列車だけでなく車やバイクで足を運んできてくれる人がおり、お店も通常通り元気に営業していて、私も店で団子や福島県内で製造されているゆべしを買って、ほんのわずかながら矢祭山の観光に貢献しておいた。

 話を聞いてみたら当然のことではあるが、ここ矢祭山でも相当大きな地震が起きており、建物の瓦が落ちるという被害も
った。しかし頑張って元気で店を営業している姿を見て、東北は負けない。北関東も負けない。そして日本は負けないという想いが垣間見えた気がする。矢祭山はいつでもみんなが来てくれるのを待っている。

                                                           (2011.5.8)
Yamatsuriyama
矢祭山


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