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『東京名工鑑』は東京府勧業課(現在の東京都庁)の調査及び編集により、明治12年(1879年)12月に東京南伝馬町の有隣堂から出版された資料で、明治初期に東京に在住していた各分野の名工が477ページの大部にわたって記録されています。
根付師については、主に"牙角彫工"として約50名が記載されています。上田令吉著『根付の研究』の参考文献に本資料のことが記載されていないことや、その人名録に記載されていない事実が『東京名工鑑』に多く載っていることから、上田氏は本資料の存在を知らなかったと思われます。
この『東京名工鑑』は、その約50名の根付師のリストを原典から再現し、さらに外国の根付コレクター向けに英訳を併記して編集した資料です。
資料中の過去の経歴等については名工本人に直接的に確認しなければ知り得ない事項であるので、政府の役人が直接本人の所に出向いて聞き取り方式で調査したものと思われます。
名工達の当時の住所や作品の種類、明治維新前後の経営の状況変化、注文主の氏名について事実だけを客観的に記録していて、第一級の根付師人名録として今後の根付研究の基礎資料となることが望まれます。
出版以来、海外の美術館・博物館の学芸員、国内外のコレクター等から高評を得ています。国際根付ソサエティのジャーナルにおいて、”『装劍奇賞』と『東京名工鑑』の二つの書籍は、根付師に関する情報を含んだ、計り知れない価値の参考書(invaluable
reference)である。”(INSJ Vol.25 No.4, Winter 2005) と賞賛されています。
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