最初に戻る


第46回 根付推薦図書 〜入門編〜
平成20年1月2日



 根付を初めて知った方々向けに入門となる書籍をピックアップしてみました。

 根付に関して国内外で様々な素晴らしい本が出版されていますが、その中から、

  1. 初心者向けとして容易に理解できる日本語版であること
  2. 現在でもその本が入手可能であること(または古書店を探せばなんとか入手できること)
  3. 写真が多数掲載され、大きく、綺麗であること
  4. 内容や解説、作品のクオリティにおいて信頼が置けること

を念頭に6点を選んでみました。

どれも執筆者の根付に対する思いが伝わってくる本ばかりです。お薦めです。


表 紙 書籍名 著 者
出版社(発行年)
ページ数(図版数)
推薦理由

根付小事典 
 根付の題材
カール.シュヴァルツ
(翻訳 柴田香葉美他)

里文出版

(平成9年2月)

158頁
(図版404点)

根付の面白さのひとつとして、意匠の多様性がある。これを見事にビジュアル化して示してくれたのが本書。元々は1986年にカール・シュヴァルツ(Dr. Karl Schwarz 1926-2007)というオーストリア人が書いた洋書が原書で、これを平成9年に里文出版が翻訳して出版したもの。

題材は、神々、聖人、架空の生き物、伝説、日々の生活、動物、植物といったテーマ毎に分かれている。規格化されたモダンな社会で生活していると、昔の人たちはこんなにも多種多様な意匠を楽しんでいたのかと感心する。

題材の簡単な解説とともに根付写真(著者の個人的都合により全て象牙根付)が掲載されていて、コレクターのバイブルとしてロングセラーを続けている本である。


【以上 根付推薦図書10選 の再掲

現在でも出版販売されている。

提物屋(東京・四谷)でも取り扱っている。




別冊太陽 
 印籠と根付
監修:関戸健吾
写真:宮地 工

平凡社
(1995年1月)

184頁
(図版 多数)

印籠と根付に関して様々なトピックを織り交ぜながら名品を紹介した本。

国内外の蒐集家や有名美術館が所蔵する名品を大きな写真で紹介している。写真の点数が多く、初心者が根付に関して概括的な全体像を知ろうとするならば、良書といえる。海外の有名なコレクター達の評伝を解説したコラムはとても面白く、必読。

既に絶版となっているが、今でも根強い人気がある。掲載作品のクオリティがしっかりしているので、同じ監修者のもとで更に作品・内容を充実した上で改訂版が出版されることが強く望まれる。

古書店等で根気よく探せば入手は可能のようである。

提物屋(東京・四谷)でも取り扱っている。




The Raymond and Frances 
Bushell Collecction of 

Netsuke
A Legacy at the LACMA

Hollis Goodall

Art Media Resources
(2003)

552頁
(カラー図版847点)

米国人の著名な根付蒐集家であった故レイモンド・ブッシェル氏がロサンゼルスの美術館 (Los Angeles County Museum of Art) に寄託して展示されているコレクションの820点の根付を紹介した図録。

非常に厚みのある図録で内容充実。写真の点数が多く、様々な名品を眺めて楽しむならば格好の本といえる。数ある根付の図録のなかでも写真の質はトップクラスのクオリティといえる。また、滅多に見ることができない根付の裏側を撮影した写真が多く、勉強になる。

最近出版された本であり、入手は容易。


提物屋(東京・四谷)でも取り扱っている。



(日本語版)


(英語版)

根付の世界
 作品と彫師たち


Collectors' Netsuke 
レイモンド・ブッシェル
(殿村晋一訳)

グラフィック社
(昭和52年2月)

204頁
(図版354点)


*********

Raymond Bushell

New York: Weatherhill
(1971, 1977)

199頁
(カラー図版354点)

レイモンド・ブッシェル氏による根付の図録集。江戸時代の初期から現代までに渡る有名な根付師をピックアップして、その作品や銘の写真及び解説が書かれている。

掲載されている根付は、(一部を除いて)名品ばかりであり、時代や地域、根付師が異なれば、こんなにも作品表現の幅が広いものなのかと教えてくれる良書。

日本語版は絶版となっており入手が困難であるが、英語版は海外の古書店などで数千円〜1万円程度で容易に入手できる。英語が苦手な人であっても写真だけで十分に楽しめる。

提物屋(東京・四谷)でも取り扱っている。





根付 たくみとしゃれ 荒川浩和 編

淡交社
(1995年3月)

127頁
(図版多数)

根付についてさらりと知りたいならば、この本がお勧め。比較的薄い本であるが、構成がしっかりしており、初心者向け。

根付に関する概観、海外のコレクター、現代根付に関することなどが書かれている。また、平成14年11月21日、御年47歳をもって薨去された高円宮殿下が「『現代根付』を語る」と題して、16ページに渡って根付について語っておられ、必読である。

古書店等で探せば入手は可能のようである。


根附の研究 上田令吉

金尾文淵堂
(昭和18年)

255頁
(図版108点、銘集13頁)

世界の根付コレクターの間では最も有名な本。大阪市の電気局及び大阪市立美術館の嘱託として働いた上田令吉氏の労作である。

日本人による本格的な根付研究書としては、昭和10年に佐々木忠次郎の「日本の根付」があるが、「根附の研究」は昭和9年に出版された「趣味乃根付」が基になっているので、本書が日本初といえる。また、英語版がレイモンド・ブッシェルによって出版されており、これまでに世界の根付愛好家に最も多く読まれた本であろう。

根付の起源、材料、根付師、根付の鑑賞法などについて書かれていて、内容は信頼できる。また、根付師人名録が付録として掲載されており、内容の一部に誤りがあるものの、他の人名録と比較しても最も充実している。

表現が古い文章であるが、ゆっくりと読んでいけば初心者でも理解できるレベルであり、根付愛好家の必携書である。

【以上 根付推薦図書10選 の再掲

初版本は入手が困難であるが、戦後、再版が数回行われているので、古書店などで探せば入手することができる。

提物屋(東京・四谷)でも取り扱っている。


最初に戻る