表 紙 |
文献名(書籍名) |
著 者
出版社(発行年)
ページ数(図版数) |
推薦理由 |
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根附の研究 |
上田令吉
金尾文淵堂
(昭和18年)
255頁
(図版108点、銘集13頁) |
世界の根付コレクターの間では最も有名な本。大阪市の電気局及び大阪市立美術館の嘱託として働いた上田令吉氏の労作である。
日本人による本格的な根付研究書としては、昭和10年に佐々木忠次郎の「日本の根付」があるが、「根附の研究」は昭和9年に出版された「趣味乃根付」が基になっているので、本書が日本初といえる。また、英語版がレイモンド・ブッシェルによって出版されており、これまでに世界の根付愛好家に最も多く読まれた本であろう。
根付の起源、材料、根付師、根付の鑑賞法などについて書かれていて、内容は信頼できる。また、根付師人名録が付録として掲載されており、内容の一部に誤りがあるものの、他の人名録と比較しても最も充実している。
表現が古い文章であるが、ゆっくりと読んでいけば初心者でも理解できるレベルであり、根付愛好家の必携書である。
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根付小事典 根付の題材 |
カール.シュヴァルツ
(翻訳 柴田香葉美他)
里文出版
(平成9年2月)
158頁
(図版404点) |
根付の面白さのひとつとして、意匠の多様性がある。これを見事にビジュアル化して示してくれたのが本書。元々は1986年にカール・シュヴァルツというオーストリア人が書いた洋書が原書で、これを平成9年に里文出版が翻訳して出版したもの。
題材は、神々、聖人、架空の生き物、伝説、日々の生活、動物、植物といったテーマ毎に分かれている。規格化されたモダンな社会で生活していると、昔の人たちはこんなにも多種多様な意匠を楽しんでいたのかと感心する。
題材の簡単な解説とともに根付写真(著者の個人的都合により全て象牙根付)が掲載されていて、コレクターのバイブルとしてロングセラーを続けている本である。 |
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根付 郷コレクション
東京国立博物館蔵 |
東京国立博物館編
講談社インターナショナル
日本象牙彫刻会
(昭和58年7月)
249頁
(361点以上) |
東京国立博物館が所蔵する郷男爵の約300点のコレクションの全てを紹介した図録。郷コレクションは世界の中でも有数の質の高いコレクションであり、日本人が収集した質の高い根付のコレクションとして興味深い。
海外の大英博物館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、エルミタージュ美術館、ビクトリア・アルバート美術館といった有名美術館には、それぞれに大規模な根付コレクションが所蔵されているが、日本の東京国立博物館にも大きなコレクションがある。
また、他の美術館にも根付コレクションはあることにはある。例えば、印籠美術館、大阪市立美術館(カザールコレクション)、静嘉堂文庫美術館、東京藝術大学資料館であるが、コレクションの質・量の点から言えば、東京国立博物館の郷コレクションが一番。
確固たる完成されたひとつのコレクションを勉強するには、この図録が一番だと思う。図録の最後には銘の拡大写真と簡単な解説がある。なお、郷男爵がコレクションを開始したきっかけは、実はボストン美術館であったことが「根付
たくみとしゃれ」で紹介されている。
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The Baur Collection |
Coulley, Marie-Therese
and Martin S. Newstead
Collections Baur- Geneve(1977)
428頁
(根付1200点) |
根付コレクションの日本代表選手としては郷コレクションを推薦することができるが、海外の個人コレクションを1点だけ挙げるとなると非常に難しい。図録になっているのは、ブロックハウス、ハインドソン、ハル・グランディ、Joseph
and Edie Kurstin、GARRET、GOULD、ベーレンスらのコレクションがあるが、もし一人だけをチョイスするとすれば、スイスの大富豪のアルフレッド・バウアー(1865-1951)となる。
バウアーのコレクションは、1924年頃から美術商・富田熊作の目筋により作り上げられたもの。富田は、戦前の有名な美術商・山中商会のロンドン支店長だった人物で、大正11年に山中商会を退社後、京都に住み美術商を開いた。この頃から本格的にバウアーのコレクション作りに協力した。
バウアーは、”大量の二流の根付コレクションよりも、少数ながらも一流のコレクション”を蒐集のポリシーとしており、その様子は本書からもうかがい知ることができる。なお、写真が小さく白黒であること、一部に怪しげな根付が掲載されていることに不満はあるものの、装丁は派手でなく落ち着いたトーンであり、好感が持てる。根付は題材ごとに整理されていて、全ての銘を写した写真も掲載されている。カラー版の出版が望まれる。
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Volume 1
Volume 2 |
Netsuke & Inro Artists and How to Read Their Signatures
(2 Volumes) |
George Lazarnick
Reed Publishers (1982)
2巻組
計1,376頁
(図版約10,000点) |
根付師と印籠師に関する辞典としては世界最大のもので、”根付百科事典”と評されている。2冊組の本にはアルファベット順に根付師に関する情報と、1万枚におよぶ作品・銘の写真(白黒)が掲載されている。
根付師の情報としては、上田令吉『根付の研究』やNeil Daveyの著書などからの抜粋(英語)が掲載されており、それぞれの本をいちいち開かずとも情報が一目でわかる。また、外国人にとって難解な銘の漢字に対しては、実際の根付で写真を撮った銘について、160ページに渡って画数順に読み方を整理しているのが圧巻で日本人でも使いやすい。
この本をまとめるには非常な労力を要したと思うが、外国人同士の様々なネットワークを活用できたからこそ、完成することが可能だったのだろう。私は、未知の根付師が出てきた場合は、この本とMCIがあれば、たいていは解決できている。常に手元に置いておきたい辞典である。 |
Part A
Part B |
MCI
The Meinertzhagen Card Index on Netsuke in the Archives of the British
Museum
Part A A-M
Part B N-Z
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Frederick Meinertzhagen
(Edited by George Lazarnick)
Alan R. Liss, Inc.,
New York
(1986)
2巻組
計1,059頁
(約5,000カード) |
フレデリック・マイナーツハーゲンというイギリス人が手書きで記録した根付カード。カード自体は大英博物館が所蔵しているが、米国の出版社からこのように編集されて出版されている。1ページに数枚ずつカードが複写されて並べられている。20年前に出版されて以後、絶版状態となっている。
根付作品と銘の忠実な模写と解説、根付師の特徴、売買記録などのデータが作品毎に丁寧に書かれている。根付取引の中心地だったロンドンで1920年代頃からディーラーとして取り扱った根付の記録であり、質の良い作品ばかりが丁寧に記録されている。
2冊組の本には5000カードが収録されていて、根付を本格的に知ろうとするならば本書は欠かせない必携の書。 |
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Masterpieces of NETSUKE ART
ONE THOUSAND FAVORITES OF LEADING COLLECTORS
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Bernard Hurtig
New York: Weatherhill
(1973, 1975)
245頁
(カラー図版1,000点) |
ハワイで根付ディーラーをしていたハーティッグの編集により、世界21人のコレクター毎に所蔵コレクションを紹介したもの。全部で1000個の根付の写真が掲載されている。日本からは京都の古美術商・今井賢三氏のコレクションが紹介されている。
根付の質は玉石混交だが、質の高いものが数多く掲載され、またコレクター毎の蒐集傾向が分かり面白い。世界のコレクター達は、根付を漫然と集めるのではなく、自己の好みやポリシーを貫いて根付を蒐集していることが本書から分かる。また、コレクターが根付コレクションを始めたきっかけや根付に対する考え方がそれぞれのページで紹介されている。
根付のコレクターに焦点をあてた本書はユニーク。一度にたくさんの根付を鑑賞したいならば本書がお薦め。
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SHISHI AND OTHER NETSUKE
THE COLLECTION OF HARRIET SZECHENYI |
Rosemary Bandini
Rosemary Bandini London(1999)
174頁
(カラー図版203点) |
動物根付が好き人は絶対に欠かせない図録。
獅子、獏、麒麟、河童、天狗、虎、羊、兎、猿といったように動物の種類毎に第1級の根付ばかりを掲載している。写真もカラーで大きい。本の題名にあるとおり、獅子の根付だけで30個もあり、圧巻。
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Netsuke
Familiar & Unfamiliar : New Principles for Collecting |
Raymond Bushell
New York: Weatherhill(1975)
260頁
(カラー図版790点) |
本書は大きく2部に分かれている。
前半は「収集の基準」と称して、根付の値段に関することや様々な競売、根付の評価といったコレクションのあり方についての蘊蓄が書かれている。
本書を評価したいのは後半の図版の方で、様々な根付が種類毎に解説されている。美術館に所蔵されているような豪華で高価な根付はほとんど出てこないのだが、根付の奥深さが本書で十分に証明されている。例えば、「竹の根付」、「饅頭根付」、「根来塗の根付」、「珍しい主題」、「着色した根付」、「精巧な根付」、「置物型根付」というような分類で、カラー写真と解説が掲載されている。
この解説は、ブッシェルの地道な研究と半端ではない専門的知識を基に書かれている。普段は高価できらびやかな根付に目が向きがちだが、根付の奥の深さを再認識できる本書は、根付蒐集家にとって優れた手引きとして使用できる。邦訳版が淡交社から出版されている。
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The Art of Netsuke Carving. Masatoshi as Told to Raymond Bushell
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Masatoshi, as told to
Raymond Bushell
New York: Weatherhill
(1992, 2002)
236頁
(カラー図版356点) |
最後の根付師と呼ばれた中村雅俊(1915年〜2001年)の全てを紹介した本。
雅俊は戦後はレイモンド・ブッシェルがパトロンとなり、多数の作品を製作した。本書は、ブッシェルと雅俊の聞き語りの形式で、雅俊の生い立ち、製作技法、道具、材料、染色等について詳細に記録している。雅俊氏の356点の作品も綺麗なカラー写真で紹介している。
ひとりの根付師に光をあてて、ここまで詳細に取り扱った書籍は本書が唯一だろう。根付師自身に興味があるならば、是非とも一読しておきたい本である。将来、日本語版が出てほしいと思っている。
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