五月の街

 

遙かな夢だけを 追いかけてきたんじゃない

穏やかな幸せだけを 僕は願っていた

いつの日か秘めた哀しみを 乗り越えようとして

孤独な自由らしきものに きっと憧れていたんだろう

 

 解かれる日々を 望んできた

 置き去りにした歌も 葬ろうとした

 許されない時代を 風のように生きてきた

 

時代に流されて たどりついた街の路上

こみ上げる怒りやるせない 見上げた薫風の空

空の果てまでとどろいてゆく 怒号とシュプレヒコール 

立ちはだかる扉の前 僕は座りこんでいた 

 

 何かが変わる 閉ざした心に

 うつむいたままでは いられない

 遅すぎた陽の光が 少しずつ射してくる

 

 夜のとばりに 煌めいた雫

 飛びこんだニュースに どよめいた部屋

 ガラス窓の外は雨 五月雨の街 東京

  

待ちわびた朝焼けの空に 溶けてゆく心の鎖たち

今扉は 開かれてゆくのだろう

失った家族の絆と 忘れかけた故郷の空

取り返せる人生なら もう一度生き直したい


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