「イタリア映画祭2005」寸評

L'amore ritrovato

愛はふたたび

2004年
監督 ・脚本 : カルロ・マッツァクラーティ
原    作 : カルロ・カッソーラ
撮    影 : ルカ・ビガッツィ
美    術 : ジャンカルロ・バシリ
衣    装 : ジャンナ・ジッシ
音    楽 : フランコ・ピエルサンティ

『ブーベの恋人』の原作者カルロ・カッソーラの小説"Una relazione" 『ある関係』を近年活躍が目覚しいというカルロ・マッツァクラーティが脚本家・監督した作品。今までのイタリア映画祭で上映された『聖アントニオと盗人達』『虎をめぐる冒険』が評判高かったマッツァクラーティだが、私は日本とも見逃していたので、最新作『愛はふたたび』には大変期待して臨んだ。しかし、古めかしいくらいの、情感たっぷりのメロドラマで、この監督をどう評価してよいかは、この一本のみでは判断つきかねている。
メロドラマというからには、主役の男女の関係が中心となるのだが、確かにこの作品は、ステファノ・アッコルシ、マヤ・サンサという今をときめくイタリア映画界の若手スターを見るための作品と言えるかもしれない。

時は1936年。トスカーナ地方の鄙びた駅で、銀行員ジョヴァンニ(アッコルシ)が、偶然見かけたマリア(サンサ)を呼び止める。ふたりはかつて関係を持ったことがあり、ジョヴァンニは今でも大いに下心ある様子。ジョヴァンニには既に妻子がいるのだが、マリアは、あっさりと逢引の申し出を受け入れる。こうして、ふたりの人目を忍ぶ関係が再開し、それはどう見ても手軽な「遊び」にしか見えない。少なくとも男の側からは。そのうえ、貧しいマリアの家族も障害になり、再び関係は破綻。
題名どおりのL'amore ritorovato−ふたりの関係が深まり「愛はふたたび」となるのは、港町リヴォルノに将校として赴任したジョヴァンニがまたもや偶然にマニキュア師として働くマリアと再会してから。
この間、不思議な印象を与えるのは、運命に流されるままに見えるマリアの存在感である。マヤ・サンサのあの太陽のような笑顔は、この映画では不思議な曖昧さを漂わせ、それに引き込まれるようにジョヴァンニは、次第に本気になっていく。そして、いつしか−或いは、最初は笑顔の陰に隠れて見えなかったのかもしれないが−マリアは自らの意思で行動する女へと成長していた。
アパートの一室を借りての逢引や諍いが、ロマンチシズムを適度にまぶしたリアリズムで描かれ、確かにこれだけで観客を引っ張る演出力と、アッコルシ、サンサの実力は確かなものだと思った。
ただ、「メロドラマの優等生」とでも呼びたくなるような感が終始拭えず、私には物足りない一本だった。
貧しい娘にしては、マリアの衣装がファッショナブルなことに象徴されているように、演技も含めてスター俳優の鑑賞に徹底するのが、この作品の正しい鑑賞法かもしれない。

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2005年8月4日

「イタリア映画祭2005」公式サイト

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