パルマ

Parma

パルマといえば、生ハムやパルミジャーノ・レッジャーノで名高い食の町。イタリアの中でも、もっともオペラ通の多いと言われている町。あるいは中田選手の所属するサッカー・クラブを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。(後注:2001年時点)
私の訪れた2001年は、パルマ近郊のブッセート出身の偉大なる作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの没後100年にあたり、町はヴェルディ一色といってもよい活気に満ちていました。


美術館・博物館はすべて予約不要。
Battistero 洗礼堂

大聖堂 Duomo
パルマは「コレッジョの都市」と呼ばれるほどコレッジョの作品が多く残されています。私にとっては今まであまり好きな画家ではなかったのですが、この大聖堂のクーポラに描かれた
「聖母被昇天」
には圧倒されました。見上げていると、こちらまで「被昇天」に巻き込まれていくような錯覚にとらわれるほどのエネルギーが渦巻いている大作。ヴェネツィアのフラーリ聖堂のティツィアーノの作品と並んで、私の好きな「聖母被昇天」になりました。

洗礼堂 Battistero
ヴェローナ産の大理石を用いた八角形・六層の洗礼堂。設計と内部の浮き彫り彫刻は、アンテラーミの手によるもの。

サン・ジュヴァンニ・エヴァンジェリスタ教会 San Giovanni Evangelistaには大聖堂と同じくコレッジョ(「聖ヨハネの幻視」)サンタ・マリア・ステッカータ教会 Santa Maria Steccataにはパルミジャニーノのフレスコの大作があり、巨匠の筆で飾られた聖堂が町の中心部centroにひしめいています

さて、緑の芝生に市民が憩っているピロッタ宮殿Palazzo della Pilotta内には、いくつかの美術館・博物館がありますが、今回私が見学したのは

国立美術館 Galleria Nazionale
主な印象に残った作品
パルミジャニーノのコケティッシュな『トルコの女奴隷』

コレッジョの『スコデッラの聖母』

またレオナルド・ダ・ヴィンチの素描『若い女性の頭部』と、この美術館には謎の微笑を浮かべた女性像がそろっています。

美術館のチケットで、宮殿内のファルネーゼ劇場の内部も見学できます。
2001年6月ピロッティ宮殿内にて、”La tempesta del mio cor”という企画展を鑑賞することができ、大変感銘を受けました。
この展示は、ジュゼッペ・ヴェルディ没後100年を記念したもので、美術・映画・オペラをリンクさせるという、ヴェルディ・イヤーにふさわしい画期的な企画だったと思います。
”La tempesta del mio cor”「わが心の嵐」とはオペラ・ファンならご存知、ヴェルディの代表作『イル・トロヴァトーレ』”Il Trovatore”で、ルーナ伯爵が歌う名アリア。これこそ、ヴェルディのオペラの世界を端的に表している言葉なので、この企画展のタイトルに選ばれたのでしょう。
伝説的なスカラ座の『椿姫』上演の際のヴィスコンティとマリア・カラスのパネル写真、19世紀末〜20世紀初頭のオペラのポスター、歌手の写真などが展示され、ヴェルディのメロディをバックにヴェルディ、パルマに関連したイタリア映画の名場面を集めたビデオも上映されていました。(ラファエロ・マタラッツォ『ジュゼッペ・ヴェルディ』、ヴィスコンティ『夏の嵐』、ベルトルッチ『1900年』など)

絵画の展示は、「パオロとフランチェスカ」「パリジーナ・デステ」「二人のフォスカリ」などオペラの題材にもなっているロマン派の作品がそろえられていました。
この企画展のサイトはまだ生きていて、大変美しい画像が提供されています。

http://www.comune.parma.it/pigorini/verdi/index.htm

このサイトの表紙にも使われているのが、フランチェスコ・アイエツの『秘密の告発』”Accusa segreta”。ヴェネツィアを背景として「心の嵐」に翻弄されている様子の黒髪・黒衣の女性は、ミラノのブレラ絵画館で見たアイエツの『メランコリー』”Malinconia”と同じモデルでしょう。今回の旅は、どうもアイエツと出会う旅だったようです。

また、美術館ではありませんが、クラシック音楽ファン、オペラ・ファンには、
トスカニーニの家
生前のヴェルディに薫陶を受けた20世紀最大の指揮者の生家が保存され、博物館となっています。トスカニーニとそのゆかりの人々の遺品、写真、肖像画・彫像、またオペラ上演のポスターが展示されています。ガイドの老婦人がつきっきりで説明してくれ、よくも悪くもいたれりつくせりです。私にはイタリア語でしたが、たぶん英語のガイドもしてくれるのだと思います。


<番外編> パルマ郊外の小さな町 

ロッカ・フォンテネッラートLa Rocca Fontenellato


にパルミジャニーノの素晴らしいフレスコ画が残されていると聞き、駅前広場からのバスに乗って出かけてみました。ピロッタ広場近くのインフォメーションでバスの番線、時刻表など情報をもらえます。ました。

エミリア・ロマ−ニャ地方の田園風景を眺めながら、バスに揺られること30分ほどでフォンテネッラートに到着(行き・帰りともバスの本数が少ないので、要注意)。小さな町の内部は、昔のたたずまいを残した小宇宙のようです。町の中心にある堀に囲まれた城は、1948年までサンヴィターレ伯爵家が居住していたもので、保存状態は極めて良好。城内とパルミジャニーノのフレスコ画は別々に切符を買うものになっていて、見学者が何人か集まるとガイドが案内するという形が取られていました。
私が失敗したのは、他の見学者がパルミジャニーノの部屋(天井の低い小部屋)を一瞥しただけで通り過ぎたのについつられて部屋を出てしまい、ガイドにさっさと灯りを消されてしまったことです。遠慮せずに、もう一度点けてもらえるように頼めばよかった。ゆっくりと鑑賞したい場合は、他の見学者の動きは無視して粘りましょう。
近年、修復がなされたというパルミジャニーノのフレスコ画『ディアーナとアクタイオン』は、目を奪うあざやかな水色をベースとして、異教的なモチーフが散りばめれています。女神ディアーナの怒りを買い、鹿に姿を変えられてしまうアクタイオンや、様々な姿態のアモールや動物たち。装飾的でありながら、いきいきとした動きのある愛らしいフレスコ画でした。


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